きっかけとなった派生品開発プロジェクト② コーヒードリッパー開発秘話 #2-2
業務用コーヒーメーカーに求められるもの
前回に引き続き、コーヒードリッパー開発秘話きっかけ編。
前回は、以前行ったストレーナー派生品開発プロジェクトで業務用のコーヒーメーカーにステンレスフィルターを採用するため構造を紙フィルターに近づけた・・・という話でした。
業務用のコーヒーメーカーは、とにかく一日に何度もコーヒーを作ります。
通常は紙フィルターがロールでセットされていて、昔の映画フィルムのように自動で巻き取られます。
定期的なロール交換が発生するので、このフィルターが紙からステンレス製に変われば、半永久的に使えるようになって大きくゴミの削減や手間の削減につながる・・・というのが、ステンレスフィルターに変更するメリットです。
前回は味を紙フィルターに近づけてひとつめの課題をクリアしたわけですが、じつは、次に課題となるのは「スピード」でした。
「とにかくおいしくできればそれでいい」コーヒーメーカーもあると思いますが、このプロジェクトのコーヒーメーカーは、大量のお客様にたくさんのコーヒーを提供するためのもの。
つまり、おいしさだけでなく、一日に大量にコーヒーをつくるためにひとつひとつの工程が短時間であることも重要なポイントだったのです。
超えられない2つの壁
ステンレスフィルターを使うと香りが強くなりますが、さらにもうふたつ、特徴があります。
コーヒーの苦みと甘みも強くなるということです。
これはコーヒー豆そのものの味が楽しめるということなのですが、
これは、コーヒー粒子をつかまえる ろ過のスピードが、紙フィルターにたいして急激に遅くなることから起こっていました。
この「ステンレスフィルターは紙フィルターより ろ過速度が遅い」という点が、スピードという大きな壁にぶつかるわけです。
さらにステンレスフィルターの苦難は続きます。
紙フィルターは一度使った後は巻き取るので軽い清掃で済むのですが、ステンレスフィルターだと、紙フィルター以上に十分な清掃の時間が必要となってしまうのです。
つまり、紙フィルターからステンレスフィルターに変えると、①コーヒーを抽出するスピードが遅くなり、②清掃に時間がかかる・・・ということ。
それからいろいろな構造を試したものの、紙フィルター並みのスピードにできず、清掃の時間も短縮できず、結局このプロジェクトはとん挫したのです。
「飲んでもらいたい」がきっかけ
ここまでの話ではただとん挫しただけの話となってしまうのですが、このプロジェクトが進んでいた間、わたしのなかで印象的なできごとがありました。
それが、社内で行われた紙フィルターとステンレスフィルターのテイスティングテスト。
プロジェクトを進めるなか、「社内でも体験してみよう」と行ったテストで、6人がどちらがどちらのフィルターをつかったかをわからない状態でコーヒーを試飲しました。
結果・・・見事5/6人が「ステンレスフィルターの方がおいしい」と回答。
(のこりの1人は・・・?笑)
コーヒー好きの奥さんをもつわたしは、このとき
と思ったことが、5~6年にわたってずっとわたしのなかに残っていたのです。
これが、クラウドファンディングプロジェクトにつながるきっかけとなったふたつ目のできごとです。
つづきはまた後日。
次回はきっかけとなった3つ目のできごとをお話しします。
▼リンク集▼
▽実際に開発したコーヒードリッパーはこちら▽
▽開発秘話 本編▽
#1 閉塞感から始まったコーヒードリッパー開発
#2 ひとつめの落とし穴
#3 科学的な味の追及方法
#4 クラウドファンディング出品ではどのサービスがいいのか?
#5 プロダクト開発で問われる〇〇力
#6 カンタンにユーザーの声を集計する方法
#7 プロトタイプのチカラ
#8 デザインに"賭ける"のはコストの無駄遣い
#9 素人とプロの違い
#10 食品プロダクトの壁
#11 プロモーションがもっとも効果をあげるタイミング
#12 達成率95%と29%のボーダーライン
#13 設定ミスで失ったメリット
#14 プロダクト販売に使うECサービスはどれがいい?
▽きっかけ編▽
#2 -1 きっかけとなった派生品開発プロジェクト①
#2-2 きっかけとなった派生品開発プロジェクト②(本記事)
#2-3 きっかけとなった音声メディアの言葉
#2-4 体系化されているアイデアのつくりかた