英作文をやってみましょう - ラーメン
私はとにかく面白い話が好きです。日本語で面白い話は英語でも面白いはずです。
というか、英語でも面白く表現できるはずです。
話の面白さを、どのように英語で活き活きと表現できるかを考えるのは、結構楽しいですし、いい英作文の訓練になると思います。
ちょっとこの「英作文をやってみましょう」、シリーズ化してみようと思います。もし「私が気に入ってるこんな話あるんですけど、英語にしてみません?」という提案があったら、コメントいただけるとすごく嬉しいです。
お題:車で移動中の会話です。ちょっと今回難易度が高めかもしれません。
<登場人物 (プライバシーのためぼかした説明にしています)>
Gさん:神です。
Hさん:スーパースターです。
Nさん:肉で言うと火を通さないタイプの方です。
たくみ:私です。
今回ちょっと長い記事になってしまいました、いかんですね。
(Gさんの車で移動中、普段使っているバスのバス停付近を通った時の会話)
Gさん:Nさんは普段このバス停で降りるんだっけ?
Nさん:そうですね、ここですね。
Gさん:たくみさんは帰りのバスでこっちの方までは来ないんでしたっけ?
たくみ:そうですね、私はもうひとつ前のバス停で降ります。あれですよ、一回このバス停で降りたのが、帰りにこの近くのラーメン屋に行こうと思ってた時ですよ。その時偶然Nさんも同じバスに乗ってたんですよね。私が普段と違うバス停で降りるから、説明のため「このあたりのラーメン屋さんに行こうと思うんですよ」ってNさんに言ったんですよ。そしたらNさんに「いや、すみません、ちょっと今日は家で食べますので」って言われちゃいましたね。誘ったわけじゃないのに笑
Sさん:Nさんそういうところあるからね。
たくみ:それでもうその日はどうでもよくなって、ラーメン屋には行きませんでした。
Gさん:笑
Sさん:やさぐれちゃうよね。Nさんそういうこと誰にでもするからね。
Nさん:いやいやいや、そんなことないですよ。勘違いしちゃっただけです。
たくみ:そのあとNさんの方がラーメン屋行ったかもしれないですね。「たくみさん、あそこ美味しかったですよ」とか後日言ってきて笑
Gさん:後ろから見て「お、行かないんか、じゃあ俺が行ったろ」ってね。
Nさん:いやいやいや、そんなことしないですよ笑
Sさん:Nさん傷口に塩を塗るのは礼儀だと思ってるからね笑
--- THE END ---
ちなみにどうでもよくなって私がラーメン屋に行かなかったって言うのはうそです、普通に行きました笑
さて、この日本語の会話をどのようにして英語にしようか考えた時に、英語を話した経験がない方、「私は英語話せない人です」と感じている人は、フリーズしてしまうんじゃないかなと思います。
基本的な文法が分かっていて、単語がわかっていても、それを使って「日本語で表現されている気持ちを、英語で表現するにはどうすればいいのか」をつむぎ出すのは、練習が必要です。
なので、私の解答案をお見せする前に、最初の文を例にとって、もうこれ以上詳しく解説することはできないってくらい、「何かを英語で表現するプロセス」を詳しく全部解説してみます。
徹底解説
Gさん:Nさんは普段このバス停で降りるんだっけ?
まず、「~だっけ?」という言い方の気持ちは、「俺はこうだと思ってるんだけど、そうだよね?」という気持ちですよね (若干「そうだよね?」よりも確信度が低いかもしれませんが)。だとしたら、日本語はこんな風に言い換えられますよね。
Gさん:Nさんは普段このバス停で降りる、そうだよね?
さて、これで少しわかりやすくなりました。つまり、「Nさんという主語が、バスを降りるという動作を、普段はこのバス停で行う」ということについて英文で表現する、そしてそれについて「そうだよね?」という確認の質問をする、このような道筋が立ちました。
日本語の文そのままだと、英語で表現するのが易しくない表現があることがあります。なので、日本語をほぐして、どんな形の英文にしようかまず道筋をつけるのが最初のステップです。
さて、
Gさん:Nさんは普段このバス停で降りる、そうだよね?
この文を文脈なしで単独で見ると、Gさんは誰に向かって質問しているかがわかりません。
Nさんがそこにいない状態で、他の誰かにNさんについて質問しているのかもしれません。あるいは、Nさんに向かって質問しているのかもしれません。
ここには日本語と英語の言葉の使い方の違いが如実に表れています。英語では話している相手のことをyouという言葉で指しますが、日本語では普通相手の名前を使いますよね。直接話している相手から「あなたは車ほしいですか?」と言われたら相当違和感ありますよね。なので、日本語の文を字面だけでみたら、個人名の部分は話している相手なのか、そこにいない人物が話題にのぼっているのか、わかんないんです。
でも、私たちは話の文脈がわかりますから、これはGさんがNさんに向かって質問しているんだとわかっています。ですから、英語では目の前の相手のことは必ず"youと"いう言葉で指すので、日本語の方も次のようにほぐす必要があります。
Gさん:Nさん、あなたは普段このバス停で降りる、そうだよね?
だいぶいい感じになりましたね。じゃあちょっと一回ここで英語で表現してみましょう。ちなみにですが、英語ではもちろん「さんづけ」というものは存在しません、当たり前ですが笑 でもちょっとしばらくは英語の方でも「-sanづけ」で行こうと思います。私の個人的な理由です。
G-san: N-san, you usually get off at this bus stop, right?
こんな感じになります。「普段このバス停で降りますか?」というバリバリの質問ではありませんから、"Do you ~ ?" という疑問文にはしていません。
「普段」はusually, 「降りる」は get off, 「このバス停で」は "at this bus stop" となります。多分、英会話を始めたばかりの方は、この"you usually get off at this bus stop"を紡ぎ出すことが一つ目のチャレンジかもしれません。いわゆる、日本語と英語とでは語順が違うというやつです。
「あなたは普段このバス停で降りる」を、そのままの語順で一語一語英語にすると、
"You usually this bus stop at get off" となりますよね。英語としては無茶苦茶な順ですね。
まず、日本語は「主語、色んな情報、動作」という順番です。
それに対して、英語の順番はこんな感じです。
主語 + 動作 + 動作と一番関連する情報 + その他の色んな情報
これに当てはめると、
主語は you, 動作は get off, at this bus stopはその他の色んな情報, となりますよね、んで、You get off at this bus stop。しかも「このバス停で」だけ見ても、英語ではat this bus stop ですが、日本語では「このバス停で」になっていて、"at"に相当する単語が物の前に来るのか、後に来るのかも違います。順番に関して言えば英語と日本語はもう泣きたくなるほど違うんです。
「これがスラっとできないんですよねー、英語の語順で言葉を出すこと」という人、その気持ちわかります。私が英会話を始めた頃、イギリス人の先生に「日本語と英語は語順が違うくて、サラっと英語が出てこないんですよー」と相談したことを覚えています。「お前それはしゃーないやろ笑」と流されたことも覚えています笑
でもこれは先生が正しくて、しゃーないんですよ。これこそ少しずつやっていくしかないんです。今でこそ私も頭を使わずにサッと英語の語順で英文が出てくるようになりましたが、最初は一単語一単語考えながら、頑張ってつむぎ出していました。一つ言えるのは、少しずつやっていけば、絶対に誰でもできるようになるということです。なのでここに関しては、今どれだけ英文が出てこなくても心配いりません。大丈夫です、やっていきましょう。少しずつちゃんと英語の順番で言葉が出てくるようになってくる感覚は、ぞわぞわしますよ。
さて、語順ほどわかりやすい違いではないんですが、日本語と英語を比べたときのもう一つの違いとして、英語では「動作と一番関連する情報」を省略することが日本語より少ないと思います。(私個人の見解以上のものではないですが)
例えば「昨日俺はそのバーで飲んでた」という日本語は自然ですが、「飲む」という動作に一番関連する情報「何を飲んでいたか」が省略されています、それでも不自然じゃないですよね。いうなれば、「飲む」という言葉一つで「どこかの場所にいてある程度のまとまった時間そこでお酒を飲む」という意味合いが含まれてしまっているわけです。
では、これを英語にして "I was drinking at the bar yesterday"とすると、私はすこーしだけ不自然だと感じてしまいます。「何を飲んでいたか」という、「飲む」という動作に一番関連する情報情報が省略されているので、何か足りない気がしてしまうのです。じゃあビールを飲んでいたことにして"I was drinking beer at the bar"という英文にしたら、日本語の字面とは違いますが、より自然に感じます。もしくは、「飲む」という言葉の中の「お酒を飲める場所にいる」という「いる」の部分の意味を抽出して
I was at the bar yesterday.
とすると、これは結構いい感じに自然です。でもこれを日本語に訳しなおしたら「私は昨日そのバーにいました」になりますよね、アリバイを聞かれているみたいに。「私は昨日そのバーで飲んでいました」ではなく。
なので、日本語で表現された情報を、自然に、かつもとの言葉の情報を完璧に保持したまま、英語で表現する、っていうことは不可能な場合もあるんだと思います。
さて、前置きが長くなりましたが、今回の文 "N-san, you usually get off at this bus stop, right?" についても、同じことが言えます。それは「降りる」という動作について「何から降りるのか」が示されていないので、「降りるって何から?」という疑問が一瞬頭をかすめます。その後に"at this bus stop"が出てくるので「あー、バスから降りるのね」となるのでまだいいんですが、私はあえて明示的に"get off the bus"と言ってあげた方が、わかりやすいしより自然だと思います。なので、このように英語を修正しましょう。
G-san: N-san, you usually get off the bus at this bus stop, right?
※ちなみに、日本語では「普段このバス停で降りる」というふうに、「降りる」の前に「このバス停で」という情報が来ているために、不自然だとか「何から降りるの?」という感覚はあまりないですよね。
さて、このようなプロセスを経て、「Nさんは普段このバス停で降りるんだっけ?」という日本語を、
"N-san, you usually get off the bus at this bus stop, right?"という形で英語で表現することができました。これが私のこの文の解答案です。
もしかしたら色んな反対意見や質問もあるかもしれません。その中で私が思いつくのが「確認の疑問のときは、"don't you?"とか言うんじゃないの?」というものです。それを検討してみましょう。
まず、この"don't you?"とか"isn't it?" とかいうやつ、付加疑問文と言いますが、個人的にはあんまり会話で使われないと感じています。
特に、"don't you?" というと、「あなたは〇〇だよね、そうじゃないの?」という言い方になりますから、結構相手のふところにばっちり切り込む質問になります。
例えば、「かおりさんっていま彼氏いますよね?」とかおりさんに確認するとします。
A. "Kaori-san, you have a boyfriend now, right?"
B. "Kaori-san, you have a boyfriend now, don't you?"
Aの方は、「私の認識は正しいよね?」と確認しているだけです。
それに対してBは、「私の認識はこうだけど、違うの?」という聞き方になります。つまり、聞く方にはかおりさんに確認しないといけない明確な理由がある感じになるわけです。
例えば、月並みなストーリーで恐縮ですが、かおりさんに質問している人(まいさんとしましょうか)が、以前かおりさんの彼氏ではない男性とかおりさんが二人きりで食事しているところを見てしまったとか。
それで「かおりさんって今彼氏いるよね?彼氏以外の人と二人きりで食事とか、あんまりよくないんじゃない?」という気持ちで聞く時の言い方が"don't you?"で質問するBの言い方になります。
そしたらかおりさんも「いるよ、なんで?」(Yeah, why? とか Yeah, why do you ask?とか)と聞き返しますよね、結構真剣に。
こんな風に、"don't you?"という確認の仕方はそれくらいちゃんとした質問で使う言い方になってしまい、なんとなく聞くだけの質問ではなくなってしまいます。
(ちなみにかおりさんが一緒に食事していたのは従兄だったということにしておきましょう笑)
それに対して"right?"で終わる質問はもっとなんとなく聞ける感じです。
かおりさんが「いるよ、なんで?」と聞き返してきても「いや、いいなーと思って笑」 (Nah just, I'm jealous lol)で終わるくらいの軽い会話です。
お題に戻ると、GさんがNさんに「Nさんは普段このバス停で降りるんだっけ?」と確認してから、先ほどのかおりさんとまいさんのような真剣な話にはなっていません。
実際の声のトーンから考えても、ちょっとした話のきっかけとしてGさんはお聞きになったと思うので、ここは"right?"で聞くのがいいと思います。
いや、実際には声のトーンとかも加味すれば、なんとなく"don't you?"を使うことも、真剣に"right?"を使うこともあるかもしれませんが、一般論として私はこんな風に感じています。
いやー、だいぶ長々と語ってきたので、すみませんが今日はここまでにしましょう :) お題全体の解答案は次回お見せします。ありがとうございました :)
※ちなみに、ここまで書いて「このバス停で降りるんだっけ?」という日本語は、トーンによっては確認ではなくまるっきり質問と考えた方がいいこともあるかと思いました。
でも、Do you get off the bus at this bus stop?「ここで降りるんですか?」だと、あまりに事前情報がない感じがします。
「このバス停で降りるんだっけ?」と聞くってことは、「前にそんなことを聞いたと思うんだけど」という事前情報があるはずですよね。
そうなると、
Was it at this bus stop that you get off the bus?
とかもありかなと思ってしまいます。直訳すると「あなたがバスを降りるのはこのバス停ででしたか?」ですね。これもいいですね。