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AIエージェントが企業の情報システム部門へもたらすインパクト【Part 1】
こんにちは、DXER代表の向井です。
DXERがBPaaSで実現するIT部門の未来という前回のnoteを出してから早くも1年半経ってしまったので、これまでの振り返りと新しく見えてきた未来を言語化しておこうと考えたのが、本noteを書こうと思ったキッカケです。
当時、私たちはBPaaS(Business Process as Service)という方向性に舵を切り、SaaS(Software as a Service)としての料金は一切いただかない、シスクルという形にフルリニューアルを行いました。
ソフトウェアに対して開発コストを投じているのに、あえてそこで料金をいただかないという意思決定は、当時を振り返ると非常に良かったのではないかと思っております。
今回は情報システム部門の課題を、BPaaSという手法で解決し、現場の第一線で見てきた景色から、どのように情報システム部門はAIエージェント化するのだろうか?という予測と、私たちが考えている山の登り方をお伝えできればと考えています。
2025年は、AIエージェント元年となる
先日のCES 2025 基調講演では、NVIDIA CEOのジェイソン・ファン氏が「これからのIT部門は、AIエージェントのHR部門になる」と断言し、私自身も非常に大きな衝撃を受けました。
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つまり、どのAIエージェントを採用し、どのようにオンボーディングを行い、運用するかが、企業内の情報システム部門の大きな役割になっていくということであり、それこそがAI時代における情報システム部門の存在意義を大きく変革すると言えます。
DXERを創業して約5年間、情報システム領域の課題に向き合い続けてきましたが、まさに今が転換点であると強く感じます。
「AIエージェント」の活用が当たり前になるのか、それとも一部の先進企業だけが取り入れて終わるのか。
その行方次第で、個人や企業間の格差はさらに広がっていくでしょう。
ついに迎えた2025年『DXの崖』元年
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また奇しくも2025年は、経済産業省が以前から警鐘を鳴らしてきた「DXの崖」が顕在化すると言われた年です。
既存のITシステムが老朽化して保守・運用にリソースを費やしてしまい、うまく新システムへの移行ができず、企業がDX推進に失敗すると最大で年12兆円もの損失が生まれるという試算もありました。
官民問わず、デジタル庁の取り組みや、民間企業の数々のデジタル化事例など、DX推進の取り組みは確かに進んでいます。
しかし、まだまだ「日本がDXを実現した」とは言い難いという感覚をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
実態に経済に現れ始めた影響
円安は一向に止まらず、1985年のプラザ合意(ドル高を是正するため、G5「先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議」で発表された為替レートの安定化に関する合意のこと。これにより協調して円高・ドル安に誘導された。)のタイミングの水準となっており、日本国民は海外旅行にも気軽に行けなくなりました。
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※円安の理由に関しては、中田敦彦のYoutube大学の動画がオススメです。経済動向に詳しくなくても分かるように解説してくれています。
私がアメリカへ海外留学していた頃は、85円/ドルだったものが本当に信じられないですし、この日本の状況が悔しくてなりません。
外資系企業で働いた経験もあり、起業を考える前は正直、海外で暮らすことも検討していました。
しかし、今一度自らの生き方を見つめ直した結果、日本が衰退の道を辿るのを食い止め、次代を担う人々の可能性を広げるために尽力したいと、日を増す毎に込み上げる想いが強まっています。
私たち一人ひとりがこの状況から目を背けることなく、ITリテラシーだけでなく金融リテラシーも高めていかなければならないと考えています。
少し話がそれましたが、止まらない円安の進行も相まって、1人あたり名目GDPは2022年には韓国に追い抜かれ、2024年には台湾にも抜かれる見込みだと報じられています。
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そして、1人当たりのGDPは国民の幸福度と相関すると言われており、世界各国が成長を続ける一方で、日本の豊かさは相対的に失われていっているのではないでしょうか。
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さらに、ここから日本の人口減少が一層進んでいくため、1人あたりのGDPを高める以外に、国内総生産を上げる方法はありません。
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この「どうにもならない状況をどう乗り切るか?」を考えたとき、私たちが出した一つの答えは、日本の産業競争力を高めるためのITエコシステムを創り出すことです。
テクノロジーを活用して生産性を底上げし、国内の付加価値を高める取り組みが欠かせないと感じています。
そのためには、企業の「情報システム(情シス)部門」が担う役割が、これまで以上に重要になります。
ITエコシステムを支える基盤として、情シス部門は日々求められる業務領域が増え続けており、今後さらに加速度的に拡大することが予想されるからです。
増え続ける『情報システム』部門への責務
さて、ここからは改めて情シス部門が抱えている課題を整理し、それらの課題がなぜ加速度的に大きくなっているのかを見ていきたいと思います。
1. 増え続ける技術領域と業務量
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クラウドサービスやSaaSの普及、仮想化やコンテナ技術、ゼロトラストネットワーク、そして近年では生成AIなど、新しいテクノロジーが次々と登場します。
そして、それらを使いこなすにはセキュリティリスクの評価や導入検証、運用設計など、情シス部門の責務が増え続ける一方です。
結果として、情シス部門の仕事量や技術領域の幅は増加の一途を辿っています。
さらに複数のツールやシステムを使えば使うほど、運用・保守に割くリソースが膨れ上がっていくという構図です。
矛盾するようですが、企業が積極的にDXを推し進めれば推し進めるほど、情シス部門の負荷が大きくなるというジレンマを抱えています。
2. 人材不足の深刻化
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このように幅広い対応を求められる一方で、情シス人材は圧倒的に不足しています。
「全国情シス実態調査 2024 集計レポート」によると、人材(できる人)が足りないという課題が堂々の1位となりました。
つまり、単に人数が足りないだけではなく、カバーしなくてはいけない技術領域の幅が広がった事で、「リソース」という問題に、「スペック」が更に追加された訳です。
3. 事業部門との乖離
また、情シス部門と現場の事業部門との距離が大きいことも課題です。
本来は、企業価値を高めるためにITがどう使われるべきか、現場課題をどう解決すべきかを、情シス側がリードしていく必要があります。
しかし、現実には「問い合わせ対応」「システム障害対応」「セキュリティパッチ適用」「アカウント管理」など、日常の運用やサポート業務に追われ、戦略的に事業部門と連携する余裕がないというケースがほとんどです。
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背景としては、「社内問い合わせ」や「運用・監視」などの業務は完了するまで、さほど時間がかかる訳ではないですが、発生頻度が高い、かつ事業そのものを止めてしまうから優先度を落とす訳にはいかないからです。
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これでは「DX推進の要」として期待される情シス部門が、本来のポテンシャルを発揮できません。
むしろ「“システムのなんでも屋”として便利に使われるだけで、本質的な課題解決にコミットできない」ということになってしまいがちです。
米国ではエンジニア求人が減少? 〜パワーシフトの兆し
こうした中で興味深いのが、米国でエンジニア求人が減少しているという話題です。
I've replaced 100% of my marketing & sales dept with AI in 2024.
— John Rush (@johnrushx) December 17, 2024
It's literally just me + AI Agents, AI wrappers & AI workflows now.
My goal for 2025 is to replace 90% of support, operations, and the rest.
I'm not alone 🧵 : pic.twitter.com/AvKipnxWBE
これはエンジニアが不要になるという話ではなく、「ソフトウェアを作る側から使う側へのパワーシフト」が進んでいると、私は捉えています。
AIネイティブなコードエディタ(Cursorなど)の登場により開発エンジニアの生産性は爆増し、非エンジニアですら、v0やClineなどを使えばある程度の機能を備えたプロトタイプであれば「自分たちで簡単に作れる」時代になりつつあります。
この変化によって、従来のSaaS(AIとの統合機能を持たないTraditionalなソフトウェア)とは比べものにならない程に、新しいプロダクト・サービスが日々生まれています。
Thrilled to share the new 2025 @EniacVC AI market map! Hope you find it useful! pic.twitter.com/yGD5Obzrx8
— Hadley (@Hadley) January 13, 2025
これこそが情シス部門の在り方にも大きな影響を及ぼします。
今後は、単にシステムを管理・運用することが求められるのではなく、よりビジネス成長にインパクトを与えるようなテクノロジーの導入・浸透が重要なテーマになってくるでしょう。
その先にある、本質的な業務変革やイノベーションをどう実現するか?それをリードするのが情シス部門に求められる新しい役割となっていきます。
今後、情シス部門がより求められる役割とは?
先述のように、情シス部門はただシステムを管理・運用するだけではなく「事業部門の課題をITの力でどう解決するか?」を主体的に考え、行動することが求められます。
では、どのようなアクションが求められるのか?3つのポイントに分けて考えてみます。
1. 事業部門へ深く入り込む
情シス側が事業部門のオペレーションやKPIを理解し、何がボトルネックなのか、どんなソリューションを導入すれば業務効率や売上が伸びるのか?を思案できなくてはいけないと思います。
そのためには単に技術スキルだけでなく、ビジネス理解力が必須です。
しかし、ここにも大きな壁でもあります。
日常の運用・保守業務に追われながら、事業部門に入り込み、本質的な課題を見つける余裕がなかなかありません。
情シス部門の役割が増え続けるなか、優先順位を整理し、不要な業務を自動化・アウトソースしながら、事業部門との連携に注力することが今後の肝になってくるでしょう。
2. 溢れ続けるソリューションの的確な選定
次々と登場する新しいITソリューション、特に生成AIツールやAIエージェントの波は止まりません。
各社がこぞってAIプラットフォームを発表していますし、LLM(大規模言語モデル)が急激に進化したことで、家庭用ヒューマノイドの社会実装が、もう目の前まで来ています。
数年ほど経てば産業界にもヒューマノイドの実用化も検討され始めるはずです。
こうした無数のソリューションに対し、何が本当に役立つのか?どう活用すれば効果を最大化できるのか?を見極める力こそ、情シス部門に求められる力になります。
安易にトレンドに飛びつくだけではなく、自社の業務やセキュリティポリシー、予算との兼ね合いを踏まえた上で導入判断し、運用設計まで落とし込む必要があります。
3. AIエージェントを管理・運用する “HR部門” 的な役割
先述の「AIエージェントのHR部門」という表現が示すように、企業内には今後、数多くのAIエージェントが“社員”のように配属されることが考えられます。
そこでは、エージェントの権限設計やリソース管理、学習データの提供やパフォーマンス管理が必須になってきます。
まさに、人事部が新入社員を採用し、研修を行い、配置を決め、評価・管理をするのと同じことを、情報システム部門が担う時代になるかもしれません。
AIエージェントをどう使いこなし、組織全体の生産性を底上げするか。
これは今後、情シス部門の最大ミッションになると言っても過言ではありません。
中小企業には情シス担当すらいない現実
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日本企業の約99%、およそ350万社が中小企業であり、日本経済の活力の源は、まさにここにありますが、その中小企業の75%にはなんと情シス担当者がいません。
情シスの専門的な人材がいる企業は全体の10%に過ぎず、情シス担当者がいる企業でも、その多くは総務の延長として業務を行っている程度のため、専門知識がある訳ではありません。
人材やリソースが限られる中小企業では、大企業のようにITコンサルタントやSIerを気軽に活用することができず、この「デジタル革命」に取り残されてしまっている企業も少なくありません。
さらに言うと、中小企業で働く多くの従業員の方は、このテクノロジーの恩恵を受けられる状況ではありません。
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これは日本全体の課題であり、デジタル後進国と言われる根源的な要因の一つでもあるでしょう。
「日本経済の大半を支える中小企業こそDXが必要なのに、情シス担当すらいない」――これは、まさに日本の将来を左右する大きな社会課題です。
一方で、この課題を解決できるサービスやソリューションを生み出すことができるならば、大きなインパクトを与えられる可能性も秘めています。
AIエージェントがもたらすインパクトは凄まじい
その可能性を大きく秘めているのが「AIエージェント」という存在ではないか?と、私はいま非常にワクワクしています。
まずは、「AIエージェント」とは何かを明確にしておきましょう。
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一般的には「人間が設定した目標に対して、自律的にタスクを遂行できる高度な判断力を備えたプログラム」と言われています。
OpenAIのサム・アルトマン氏は、「指示されたタスクを自律的に遂行してくれるAIシステム」だと説明しています。
従来のチャットボットのように、人間が適切な指示「= プロンプト」を与えた上で動くAIではなく、自ら考え、目標を達成するためのタスクをこなしていく従業員のように働いてくれるAIというのが特徴的な点です。
実際にどのようなものがAIエージェント呼ばれているのか?事例を見た方がイメージが湧きやすいと思うので、いくつかご紹介します。
オープンソースのAIエージェント拡張機能「Cline」はVisual Studio Code上で動作し、AIによるコードの自動生成や自動補完のみならず、自動的にターミナルを操作して依存パッケージをインストールしたり、エラーが出ればログを解析して修正案を提案、実行するなど、人間をサポートするcopilotのような存在ではなく、まるで“AIが自律的に開発を進めていく”ようなユーザー体験で話題になりました。
一方、OpenAIが2025年1月に発表した初めてのAIエージェント「Operator」は、ブラウザ上で人間同様にクリックや入力を行うエージェントです。
これまで人間が画面を見ながら行なっていたフォーム入力の作業や画面入力作業などがAIによって自動的に行うことができます。
ID/パスワードを入力するようなログイン時などには人間に操作を戻すといった、まさに人間とAIが協働してタスクをこなすような体験を得られます。
私も実際に利用(*米国にVPN接続して利用する必要があります。)してみましたが、情シス業務あるあるのGoogle WorkSpaceのアカウント作成や削除など、AIに指示するだけで画面の情報を読み取り自動で対応できてしまったのには感動しました。
ただ人間が対応すれば数分で終わる作業が数十分かかったり、途中で間違いを指摘したりする必要はあったので全く実用的ではなかったですが…….
(現在、社内では様々な生成AIツールや新しい技術を日々検証しており、そういうコトが大好きな方には、ピッタリな環境だと思います!)
まだまだ、ずっと側に付きっきりで、教え続けなくてはいけない新入社員のような感じなので、実際にビジネスの現場において価値を生み出していくのは、あと少しだけかかりそうです。
また、情報システム部門という領域において、もし誤動作してインシデントが発生した際は、誰に責任の所在があるのか?などの整理をした上で、運用方法を考える必要が出てきそうです。
AIエージェントはAGIに至るまでの過渡期?
AIエージェントの延長線上にあるのがAGI(Artificial General Intelligence、汎用人工知能)です。
OpenAIは2015年の創業時から、このAGIの実現を目標に掲げており、そのビジョンは年々具体性を増しています。
MicrosoftとOpenAIの契約では「OpenAIが少なくとも1,000億ドル(約15兆円)の利益を生み出すAIを開発できたらAGI達成と見なす」との合意があると報じられています。
天文学的な金額ですが、それだけAGIが経済・社会にもたらす価値が大きいと双方が認識している証と言えるでしょう。
OpenAIが定義するAGIの概念は「経済的に価値のある仕事の大部分において人間の能力を上回る自律性の高いシステム」と表現しています。
既にご覧の方々も沢山いらっしゃると思いますが、SoftBank World 2023で孫さんも、AGIについて既に触れています。
2025年1月、トランプ大統領の就任と同時に米国で発表された「スターゲイトプロジェクト」も、このAGI実現に向けた大規模プロジェクトです。
これはソフトバンク、OpenAI、Oracleなどが共同で新会社を設立し、今後4年間で5,000億ドル規模をAIインフラに投資する計画で、孫さんはStargateの議長に就任し、「人類全体の利益のためにAI、特にAGIを開発していく」と理念を掲げています。
さらに2025年2月には、OpenAIとソフトバンクが共同で「Cristal intelligence(クリスタル・インテリジェンス)」なる新たなAIソリューションを発表しました。
*世界が注目するこのAIの中心に、日本企業の名前があることは本当に誇らしいですし、起業家・経営者として孫さんのスゴさに驚かされてばかりです。
Cristalは企業ごとの機密データや業務システムと安全に統合できる高度なエンタープライズ向けAIと発表されました。
記者会見では、孫さんはまずはAGIは「企業」から普及していくと述べました。
理由は、やはりAIが企業活動の中で価値を発揮するためには、大量のデータ、つまり社内のコンテキストが必要であり、そのデータを大量に持っているのが大企業であるからです。
それらを一挙に引き受けるのが、今回OpenAIと共に設立した合弁会社「SB OpenAI Japan」になっていくと発表されました。
ソフトバンクグループは年間30億ドル(約4,500億円)投じ、日本国内の主要企業にこのCristal intelligenceを独占提供していき、日本の名だたる大企業がAGIを活用していくサポートを始めるとのことです。
もちろん大企業にとっても非常に大きなインパクトがあると思うのですが、やっぱり私たちは中小企業こそにも、このAIをどう利活用していくか?が、日本経済にとっても非常に重要テーマになってくると考えています。
ちなみに、AGIが必ず実現するという事を信じている人たちを、「AGIピルを飲んだ」側と巷では表現するようです。
私自身も、完全に「AGIピルを飲んだ」側の人間です。
AIについて調べれば調べる程、AGIは必ず実現するという前提で、社会やビジネス戦略を考えるようになりました。
この「AIエージェント」は、まさにAGIへと至る過渡的なステージに位置していると信じていますし、人類史を振り返った際には、いつの間にかあの時代がAGIが生まれた期間だったのではないか?そういった変化の仕方をすると考えています。
ガラケーがスマホにシフトした時とは比べ物にならないくらいの大きなゲームチェンジが起きているので、「AGIピルを飲んだ」側の人たちを私たちとしても増やしていけなくてはいけないと考えています。
情報システム部門の未来
孫さんが提唱するASI(新たな発明を生み出すような超知性)に近づくにつれ、ゲームチェンジングなテクノロジーが生まれるスパンはますます短くなっていくでしょう。
そうした時代において、企業の情シス部門がいかに迅速に対応し、変革を牽引できるかは、企業の競争力を左右する重要な要素となります。
単に、PCやサーバーの管理や社内システムの維持をするだけの部署だと経営層が捉えているようでは、本当にまずい状況といえるでしょう。
今後2〜3年の間に、情シスはAIエージェントを活用して全社の生産性最大化を担うような戦略部門へと進化するのではないかと考えています。
情シス部門が率先して社内向けのAIエージェントを選定・導入し、その挙動や権限をセキュアに設計しながら、業務プロセスを自動化する役割が期待されるでしょう。
例えば、総務・人事系の定型手続きを自動化するエージェントや、営業部門の提案書作成を補助するエージェントなど、各部門のニーズに合わせたAIツールを事業部門と対話しながら導入を進めていくことになります。(こうした取り組みを当たり前のように実践できる人材は、ますます高い付加価値を持つようになるはずです。)
「オンプレシステム」から「SaaS」へ移り変わっていったように、先進的な企業では、「SaaS」から「AIネイティブなSaaS」、また「ピュアなAIエージェント」への切り替えを様々な業務プロセス・コミュニケーションの結節点に組み込んでいくような未来が待っています。
そのため、従来のITスキルの延長線上にありながらも、プロンプト設計やAIモデルの評価、倫理・リスク管理など、AI時代ならではの新しいスキルセットを習得・実践する仕事へと変化していくと考えられます。
言うなれば、情シスは「AIのオーケストレーター」として、人とAIエージェントが協働する社内環境をデザインし、管理する役割へシフトしていくのではないかと私は考えています。
定型的で繰り返しの多い業務はエージェントに任せ、優れた推論力やリサーチ能力によって人間の可能性が拡張されれば、より豊かな働き方が実現し、私たち人間はさらなる挑戦に集中できるようになるはずです。
たとえば社内ヘルプデスクでは、社員からの問い合わせ対応をAIチャットボット(エージェント)が引き受け、必要に応じて人間の担当者にエスカレーションしたり、あるいは代理店やソリューションプロバイダー側のエージェントに自律的にコミュニケーションをしたりするでしょう。
また、アカウント管理のような手間のかかるIT運用タスクもエージェントが自動化していくことになると思います。
OpenAIのOperatorのようなツールが、各ソフトウェアのユーザーアカウント作成・削除や権限設定といった管理者作業を自律的に行える世界もそう遠くなく、すべてをルールベースでこなす必要がなくなり、柔軟なビジネスロジックを社内のワークフローに組み込めることを意味します。
サム・アルトマンも「早ければ2025年中にバーチャル従業員(AIエージェント)が企業の労働力に加わる可能性がある」と述べており、もはやこれはSFではなく目前の現実です。
情シス部門は、こうした“バーチャル従業員”を迎え入れるための環境整備(システム接続、権限管理、セキュリティ対策など)を推進することが求められるでしょう。
それによって社員一人ひとりが高い付加価値を生み出す業務に専念できるようになり、結果として企業全体の生産性と競争力が向上する好循環が生まれます。
私たちDXERの想い:社会的意義とコミットメント
ここまで読んでくださった方は、情シス部門が担う社会的意義がいかに大きいかをご理解いただけたのではないかと思います。
DXERを創業してからの5年間、私たちはこの課題感を強烈に持ち続け、日々事業を磨いてきました。
「情シス業務をBPaaSという形でアウトソース化し、企業のDX推進を下支えする」
そんな想いから生まれたのが、私たちのサービス「シスクル」です。
ありがたいことに、多くの企業様がシスクルを活用してくださり、情シス部門の運用・保守業務を効率化するだけでなく、より戦略的なIT活用へとシフトするお手伝いをさせていただいています。
私たちが最終的に目指すのは「日本全体の情シス部門の進化」を後押しすることであり、それはひいては力強い日本経済を取り戻し、デジタル後進国の汚名返上にもつながると信じています。
AIやデジタル技術の力を使って、もっと日本を元気にしたい。そんな想いで私たちは取り組んでいます。
そして、私たちはこのエコシステム自体を大きくしていきたいと考えています。
情シス部門の課題を解決する技術やサービスを競い合う健全な競争環境が生まれれば、新たなイノベーションや資本流入も期待できます。
そうやって情シス領域が盛り上がれば、若い世代や優秀な人材がもっと情シスに興味を持ち、キャリアパスとして選んでくれるかもしれない。
今の私自身も、この情シスという領域に魅せられ、そのようなキャリアを歩むことが出来ています。
その循環が回り始めれば、現在の日本が抱える多くの課題を一気に打破できる可能性があります。
私たちDXERは「BPaaS」を基盤に、情シス業務を効率化し、企業におけるIT活用の加速を後押ししてきました。
これから、国内外で進むテクノロジーの進化の波をいち早くキャッチアップし、企業の“デジタル変革の当事者”である情シス部門の皆様とともに歩んでいきたいと考えています。
もし、情シス部門が抱える課題や、その社会的意義に共感してくださった方、ぜひカジュアルにお話ししましょう!Xで直接DMください!
これから私たちが目指すべき組織やチームは、SaaS企業の教科書的であったThe Modelのようなものにはならないと考えています。
現在、私たちはコアメンバーが5人、創業初期の頃から長く手伝ってくれたり、前職メンバーや知人である業務委託の方々も含めると約20名ほどのチームでやっています。
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まだ誰も正解を知らない挑戦に、私たちと一緒に挑みたいと思ってくださる方、お待ちしております!
採用情報はこちらに。
次回noteの告知
さて、ここまでお読みいただきありがとうございました。次回のnoteでは、「情シス業務の中で、具体的にどの部分がどのようにAIエージェント化されるのか?」を、より具体的な内容を解説していきたいと思います。
・社内問い合わせ対応はどうなる?
・アカウントのプロビジョニングと削除は本当に自動化できるのか?
・セキュリティ上の懸念は?
・データ連携やカスタマイズの範囲は?
実際に私たちDXERが検証している事例や、新しいAIツール活用のリアルな苦労話などを交えつつ、今後の情シス業務の変貌を深堀りしていきますので、是非ここまで読んでくださった方は次回のnoteもご覧いただきたいなと思っております。