SHONEN JUMPを出版するVIZ Mediaの変遷
日本では、集英社が少年ジャンプの漫画を出版していますが、アメリカではどこが出版しているのでしょうか?
昨日、アメリカにある書店に行った際に、VIZのロゴをたくさん見かけました。
アメリカでは、VIZ Mediaという会社が英語版の少年ジャンプの漫画を出版しています。
このnoteでは、アメリカにおいて日本の漫画を出版する会社の1つであるVIZ Mediaの変遷について、まとめました!
創業に至るまで
VIZ Mediaの創業者は堀淵清治さん。現在は、Dandelion Chocolate JapanのCEOも務められています。
1975年に渡米し、放浪期を経て、1986年に小学館からの出資を受けて、VIZ Mediaの前身であるVIZ Communicationsが設立されます。(1)
漫画をローカライズする
1987年にVIZの漫画が初めて書店に並ぶことになるのですが、日本の漫画をアメコミ式にローカライズするにあたって、4つのポイントがありました(堀淵、2006、pp.66-73)。
①反転印刷
日本の漫画は縦書き右開きですが、アメコミは横書き左開きです。当時、小学館の常務取締役であった相賀昌宏さんのアイデアで、原稿を反転印刷させる手法が編み出されます。
②オノマトペの翻訳
日本の漫画は「ガガガ」「ドーン」「バシッ」といったオノマトペを使うことで、漫画における文字数を少なくし、躍動感を生んでいますが、アメコミは全て登場人物の言葉で説明するので、圧倒的に文字が多くなります。こうしたスタイルの違いも、英語のオノマトペ造語を考案することでオリジナリティを表現していました。
③ページ数とカラー
当時のアメコミは月刊スタイルが主流でした。週刊スタイルに適した日本の漫画をそのまま月刊スタイルに合わせると、ストーリーの展開が間延びしてしまいます。これに関しては、隔週スタイルを取ることで、解決されます。
④暴力と性的表現
VIZの創刊号の作品の1つであるカムイ外伝の第1話には、4ページに渡るリアルなレイプシーンがあります。アメリカではエロやグロに対する倫理規制が日本より強いため、第1話はまるごとカットされ、第2話から出版されます。
コレクターズバブルの崩壊とヨーロッパへの進出
80年代のコミックスは読まれるためというよりも、その後の価値上昇を期待して、コレクター達により売り買いされていました。しかし、1990年代に入り、そのコレクターズバブルが崩壊します。
アメリカでのVIZの業績も悪化する中、イタリアの出版社から北斗の拳の出版依頼の問い合わせが来ます。Granata Press社とサブライセンス(再使用許諾権)を結ぶことで、結果的にヨーロッパへの進出を果たします(堀淵、2006、pp.98-102)。
2007年にパリに設立した子会社のVIZ Media Europeは2019年にCrunchyrollに買収されます。
↓Crunchyrollの変遷
ポケモンブームと小プロUSAの設立
1996年にポケットモンスター 赤・緑が発売され、ポケモン旋風が起こります。日本とアジアを除く全世界でのマスターライセンスは、任天堂のアメリカ法人が所有していました。そして、そこからライセンシング業務を委託されていたのが、4Kids Entertainment社でした(堀淵、2006、pp.148)。
ポケモンというビッグタイトルを扱う4Kids Entertainmentの躍進は凄まじく、2000年にニューヨーク証券取引所に上場します(2012年に経営破綻)。
そんな4Kids Entertainmentの躍進を見て、ライセンシングビジネスの重要性を知り、小学館プロダクションとVIZの合同出資で小学館プロダクションUSAを設立し、漫画だけでなく、ライセンシングも扱い始めるようになります(堀淵、2006、pp.159)。
SHONEN JUMPの創刊
2002年にSHONEN JUMPはONE PIECE・遊☆戯☆王・幽☆遊☆白書・ドラゴンボールなどの7つの人気作品を掲載する形で創刊されます。
SHONEN JUMPの創刊に伴い、集英社からも出資を受けて、2003年にVIZ CommunicationsからVIZ, LLCに社名が変わります。出資比率は小学館と集英社で50%ずつ(堀淵、2006、pp.176)。
小プロと合体して、VIZ Mediaになる
2005年には小プロUSAとVIZ, LLCが合併し、VIZ Mediaに社名が変わります。そして、このタイミングでCEOも福原秀己さんに変わります。現在のCEOは、佐々木健さん。
まとめ
このnoteは「萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか」から、多くの内容を引用しました。
日本の漫画文化をアメリカでゼロから広めてきた歴史が詰まっていて、とても面白い本です。
個人的には、創業者の堀淵さんが放浪期にサンフランシスコから車で3時間かけた山に住んでいた話が印象的です!笑
日本の漫画やアニメが世界で大人気な今だからこそ、その歴史を学ぶことは重要だと思います。
ぜひ読んでみてください!
参考文献/記事
堀淵清治(2006),「萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか」 日経BP.
(1) Weekend Beat: Cashing in on over-the-counter culture