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伝わらない介護現場の温度感

6月16日、骨太の方針2023が発表されました。
この骨太の方針2023によると、「来年度の介護報酬を上げるか下げるか政府は年末に決める予定である」との見解が示されています。
年末に持ち越されたということは、つまり介護報酬が上がるか下がるか、現時点ではわからないということです。

これは介護業界にとって逆風であるとしか言いようがありません。

事業者は介護サービスの値付けができない

他の産業と違って、介護業界は介護報酬というかたちで公定価格が決まっています。
介護報酬とは、事業者が介護サービスを提供した際に、その対価として受け取る報酬のことです。通常、介護サービス利用者は介護報酬の1~3割を事業者に支払います。残りの7~9割は、保険者から事業者に支払われる仕組みです。
この介護報酬は、介護保険法によってあらかじめ料金が定められています。
たとえば、デイサービスで要介護1の人なら1回〇円、要介護2の人なら☐円といった具合です。
このように、介護サービスは他のサービス業と違って公定価格ですから、事業者側で勝手にサービスの値付けができないといった特徴があります。

事業者による自助努力の限界

昨今、物価高や燃料費の高騰が続いています。そのため、多くの業種で値上げを行っている状況です。
施設の電気、ガス、水道代の上昇や、デイサービスの送迎車のガソリン代の上昇など、介護業界も物価高や燃料費高騰によって同様の影響を受けています。
他の産業と大きく異なるところは、介護サービスは物価高による影響を価格に転嫁できないことです。
勝手にサービス費用を決められない以上、事業者の自助努力には限界があります。

加速する介護事業者の倒産

東京商工リサーチの調査によりますと、2022年度の介護事業者の倒産件数は143件で、過去最高の件数です。
実際にわたしの地域でも、今年度に入ってすでに3件のデイサービスが閉鎖されています。
このまま何の対策もせずに放っておいたら、今後ますます倒産する事業者が増えるのではないでしょうか。

来年度の介護報酬といった悠長なことは言ってられません。本来なら政府は、今すぐにでも臨時の報酬改定をすすめるべきです。
物価高の状況下で介護報酬がこのまま変わらなければ、体力のない事業者から次々と倒産していくことでしょう。

そんな現場の温度感が政府へ伝わらないことに、この業界にいる者としては歯がゆさを感じます。

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