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Photo by
shiekasai
【ショートショート】自動壺作り機
ある日、中村という男が町の骨董店を訪れると、妙な機械が目に留まった。
「自動壺作り機」と書かれた古びた木札がぶら下がっている。鉄の塊のような外見だが、どこか魅力的だ。店主は言った。
「好きな形、好きな模様の壺が自動で作れる便利な機械です。100年前に天才工学者が作ったんですよ。」
値段は案外手頃だった。中村は迷わず購入した。
家に持ち帰り、説明書を見ながら機械を稼働させてみる。ボタンを押すと、機械が唸りを上げて動き出し、中から見事な壺が現れた。
「素晴らしい! これならいくらでも壺を作れるぞ!」
壺を作るのが楽しくて仕方なくなった中村は、毎日ボタンを押しては壺を増やしていった。最初は部屋のインテリアとして飾っていたが、すぐに置き場所がなくなった。近所の人々に配ると、大好評でどんどん欲しがられる。中村はそれに気をよくし、さらに作り続けた。
やがて町中の家が壺で溢れかえり始めた。ついには役所から「壺の増産を控えるように」との注意が来た。それでも中村は止まらない。
「壺は美しい。美しいものはもっと増やさなければ。」
壺は道路に、広場に、川にまであふれ出し、町全体が壺で埋め尽くされる。住民たちは逃げ出し、町は無人となった。それでも中村は壺を作り続ける。
数年後、町を訪れた観光客が奇妙な光景に驚いた。町全体が壺で埋め尽くされており、その中心に、一人の男が笑みを浮かべながらボタンを押し続けている。
「美しい…美しい…壺は世界を救う…」
だが、その声を聞く者はもう誰もいなかった。