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飲食店のInstagramへの向き合い方と、使い方

先日、こんな記事を書いた。

この記事はとても反響があり、お店を経営する知り合いから、「俺もやってみる。」「社内に共有しました。」等など、多数の嬉しい声が届いた。

皆、「やった方が良いことはなんとなくわかるけど、中々取り組めない」という状況は同じな様だ。「等身大の現場の声」は、同じ境遇の人には刺さりやすいのかもしれない。

多くの人がこのテーマに興味があることがわかったので、前回の記事から3ヶ月経ったこともあり、その後のリールについてはもちろん、僕達のInstagramそのものへの取り組みについて書いてみようと思う。

先に断っておくと、この記事は「飲食店のInstagram活用のHow toについて」をまとめているわけではない。僕はインフルエンサーでもSNSマーケッターでもないので、ただ自分が感じ、実行していることを書いているのであしからず。一つの使い方の一例として見てもらえるくらいがちょうど良いと思う。

(どちらかというと、僕の会社の社員向けに、「変わりゆく環境へどう対処するか」のマインドセットを伝えるための記事として書いている。)

Instagramへのスタンス

まず、僕自身のSNSへの向き合い方のスタンスについて。SNSと言いつつ、ここではInstagramに集中して書いている。(今のところ、僕達のお店ではTikTokやXのアカウントは作っていない。)

いまや飲食店を経営する上で、Instagramは重要な集客プラットフォームの一つだ。
飲食店向けのプラットフォームというと、昔は食べログやぐるなびが筆頭だったが、Instagramの台頭で大きく潮目が変わったと思う。僕達のお店は、食べログやぐるなびは掲載したことがなく、もはや自店舗のページを見たことがないくらいだ。

僕達と同じように、お店のメインのプラットフォームをInstagramにしている人達は多い。個人店では、InstagramのDMでしか予約を受け付けないお店も目にする。

もちろんこれは、お店の業態や価格帯にもよる。繁華街立地の低価格居酒屋は食べログやぐるなびのハックだけで勝負ができると聞くし、街の定食屋や、超高級店等はInstagramは必要ない場合もあるだろう。

ただ僕達のように、安さや利便性とは異なり、「予定を立てて、少し特別な時間を過ごす」という目的を持って訪れるお店にとって、Instagramは避けて通れないプラットフォームだと思っている。

そんなInstagramには、1号店のLOBBYを始めてから5年弱コツコツと施策をうち、3店舗合計のフォロワー数は5万人を超えた。

だが、正直フォロワーがいるからと言って、連日どのお店も毎日満席!というわけではないのが実情だ。フォローはあくまで興味があるとか、好きなお店の一部だということを可視化しているだけであって、実際に足を運ぶアクションへ結びつけるにはもう一段のステップが必要だと感じている。

前述のリールの記事は、そんな背景がある中で取り組んだ内容を書いてみたもの。今回の記事も、実際にどう集客に結びつけるのか、といった点が主題になる。

Instagramというプラットフォームの理解

やはり活用していくに当たり、そのプラットフォームを正しく理解する必要がある。

元々写真投稿アプリとして始まったインスタグラム。ただ、そのアルゴリズムは日々変わっているようだ。

実際、フィード投稿の「いいね数」が減った、という感覚がある人は多いはず。
僕達Honeのアカウントは1.2万人のフォロワーがいるが、投稿に対するいいねは悲しいほどに少ない。昨日実施した以下の投稿は、いいね38件…。あまり言いたくないが、いいねが100件を超えることの方が珍しい…。

さらに、日々ストーリーズで最新情報を投稿しているが、そのリーチも良くて1,000程度。つまり、フォロワーがいても、フィードやストーリーは想像以上に見られていないということだ。

現在のインスタグラムでは、フィードやストーリーズはかなりエンゲージメント(関与度)が高い人にしか表示がされない。エンゲージメントが高い人とは、日頃からDMやコメントでやり取りしているような人。直近で親密な友人の投稿は常に確認できるのはこれが理由だ。

最新のアルゴリズムは、この方の動画を見るとわかりやすい。僕は専門家では無いので情報の確実性に関して断言はできないが、合理的な内容なので納得感がある。

Instagramも店頭も、やることは変わらない

となると、「普段からコミュニケーションを取らないお店の公式アカウントは厳しいじゃないか」と思うところ。特に、看板店主が切り盛りするような個が際立ったお店ではなく、チームで運営する中〜大規模のお店は。

その通りではあるが、よくよく考えるとやれることはある気がしている。

当たり前だが、僕達飲食店を始め、リアル店舗のビジネスは必ず店頭にスタッフがいて、彼らは店頭でお客様とコミュニケーションしている。それをオンラインで実施すれば良い。お店に興味がある人達や、実際に来てメンションしてくれた人達と、こまめにDMでコミュニケーションを取ることだ。

オンラインとオフライン、SNSと店頭で何故か認識が変わってしまうことは良くあるが、実際はやることは同じ。店頭でお客様から良く聞く質問に対して答えたり、お客様からの好反応があった物事を発信していくことが重要だ。

いつの間にか僕達の情報発信の内容も、お店からの発信だけがメインになっていた。実際店頭でよく聞かれる、「お店の場所が分かりづらかった。」「中が見えないから入るのに勇気が必要だった。」「1杯からでも入れるか不安だった。」等など、疑問や質問に対して回答する発信はしていなかった。

お店主体で発信したいことと、お客様が知りたいことは必ずしも一致しない。一方通行の発信になると、コミュニケーションは生まれない。

この点を意識するだけで、フォローから来店までのアクションのハードルを下げることができると感じている。

ここから先は、単純に写真を投稿するということに加え、僕達が実施している取り組みについて書いていく。

Instagramでの取り組み① DM

まずはDMについて。

レストラン・バーであるHoneでは、お客様のタグ付け投稿、メンションに対してサービススタッフがDMで返信を行っている。

大体のお客様が、料理やカクテル、ワインの写真をメンション付きで投稿してくれる。サービス担当であれば、客席や内容からどの席のお客様かは把握できるので、実際に会話した内容、提案した内容を元にメッセージを返すようにしている。(気持ち悪くない程度にバランスは気をつけながら)

これは非常に反響があり、驚くことに約80%の人が返信をくれる。しかも、一文というよりも会話に近い内容で返信をくれるのだ。

飲食店に行ってタグ付け投稿することは一般的な行動になっている。でも、そのアカウントからメッセージが帰ってくることはなかなか無いと思う。

そのお店で良い体験ができ、好意を持ったためにタグ付けしてまで投稿しているのだから、そのお店から丁寧なメッセージが来たら、多くの人が嬉しいと思うはずだ。よくよく考えればこれも当たり前なのだが、ほぼ誰もやっていない。だからこそ、返信するだけで来店後の満足感を更に上げることができ、他のお店と差別化できる。

このアイデアは、チーム全員でのディスカッションの中で生まれた。売上が低迷していた6月、Honeの営業を休みにして実施した全体会議でのアイデアだ。当時の課題として、

「内装にこだわってるからこそ、斜に構えていて、ファッションでやってるお店に見られてない?」

「そもそもアクションしてくれてるのにお礼もしてない。これよく考えたら不思議だよね。意図せず上から目線になってるよね。」

「来店数が落ちているのに、誰でもできる、やるべきことをやってなくない?」

そんな意見に対して、どうしたらもっと再来したり、おすすめされるお店になれるのか議論する中で、「人間味をもっと伝えていこう」と始めたのがDM返信だ。SNSを使っている人は双方人間。であれば、対人へ対してのコミュニケーションを丁寧にやっていこうというシンプルな話。

自分で言うのもなんだが、実際僕達のお店のスタッフは人間味が自慢だ。皆最高に良いヤツなので、その人間味をもっと伝えられたら、「また行きたいお店・人に進めたいお店」にランクアップできるはず。

この「タグ付け投稿者へのDMの返信」は、長い目で見て効果があると感じている。お店の認知が広がるきっかけは、もちろんオフラインの日常生活の中にもある。友人知人のリアルな会話でおすすめし合うことも多いだろうし、むしろその方が信憑性が高い情報なので行動に繋がりやすい。DMの返信で来店後まで満足度をあげることができれば、オフラインの会話で「あのお店良かったよ!」とおすすめされることも増えるはず。

加えて、もちろん再来の増加も見込める。日々DMを返信していると、過去のDM履歴があるお客様も頻繁に目にするようになった。これは以前よりも確実に増えているので、「良いお店だったなー、また行こう!」と思ってもらえる効果は大いにありそうだ。

更に、これは意図していなかったが、DMの返信はInstagramのアルゴリズムにも好影響だった。返信があることで双方向のコミュニケーションが成り立ち、エンゲージメントが上がる。そうして、ストーリーズの情報発信も表示されやすくなる。これもまたリピーターを作る上で大きな後押しになってくれる。

Instagramでの取り組み② 動画

動画への取り組みも強化している。動画とはつまり、ストーリーズとリールだ。「なぜ動画なのか」は、繰り返しになるがこのnoteに細かく記載している。

リールに加えて、ストーリーズも動画で音声をつけ、リッチな情報量で配信するようにしている。

ある時から僕が社内で「リールだリールだ!」と言い出したこともあり、今では各店舗で現場メンバーがリールを作ってくれている。

前述の通り、SNSも実店舗も、本来コミュニケーションの内容は変わらないはず。となると、情報発信は現場主導で実施した方が良い。顧客の声を元にした発信内容の企画ができるためだ。

バズらせることがリールの目的ではない。

リールの目的は、フォロワーへ対してのお店の理解促進に置いている。

Honeは路面店では無いので、「中の様子がわからないこと」が来店ハードルになっていた。「中の様子がわからない」というのは、「料理の内容等はもちろん、店内やスタッフの雰囲気がわからない」ということ。そこで、発信内容は、実際の店内の様子、スタッフの雰囲気をそのまま表現する動画を作り、事前に情報を出すように心がけている。

「あ、中こんな感じなんだ!」「スタッフの人達優しそう!」と思える情報があると、来店ハードルは下がるはず。

以下はシェフのトミーが作ってくれた採用向けの動画。シェフが率先してこれを作ってくれるので助かっている。

現状Honeは1.2万人のフォロワーに対し、リールの再生数は3,000〜2.1万回。平均すると6,000回程度に留まっているので、バズっているというわけではない。

前述のように、これらの動画の目的は、お店の理解を促進し、来店意向を高めることにある。広くバズらせて認知を拡散させることが目的ではなく、お店を既に知っている人に深い理解を促し、Honeに行ってみたいと思ってもらうことが重要だと考えている。

先に書いたように、フォロワーがいるからといって、連日満席なわけではない。フォロワーの1.2万人が月に1回でも来てくれたらお店は大繁盛なのだが、実際は1度も来たことがない人が大半を占めているだろう。となると、「認知はしているものの、来店したことがない人達のモチベーションをどのように上げるのか」が大事になる。

先日、下の動画を投稿した。海外のバーテンダーの元ネタ動画をシェフが見つけてみて、それを真似して僕自身が撮影したものだ。

Honeはレストランのイメージが強く、バーとしての認知が弱い。21時半〜カクテルを中心にしたバータイムがあるものの、それを知らない人も多い。そこでこの動画は、「バーもやってます!」「美味しいカクテル作れます!」と間接的に伝えるために投稿した。

ネグローニという世界で一番飲まれているクラシックカクテルを、卵白とレモンジュースを入れてサワースタイル(カクテルにおけるサワースタイルはソーダで割るものではなく、酸味のある果汁とシロップで作る)にアレンジしたもの。そのメイキングシーンを定点で撮影して編集しただけのシンプルな動画だ。
「なんか、このお店カクテルもちゃんとやってるっぽい?」と思ってもらう程度のゴール設定で、撮影5分、編集10分、合計15分で完成した。

後日、この動画が外国人のゲストの来店に繋がった。スタッフにスマホを見せながら「これを下さい!」と言ってきたそうだ。ネグローニはお酒好きはもちろん、カクテルを飲み慣れた欧米人からは馴染み深いカクテルなので、サワースタイルのアレンジが興味を引いたらしい。

こんな風に、「認知→来店に繋げるためのマインドの育成」において、情報量が多い動画は効率良く活躍してくれる。

思わぬバズに繋がることも。

継続して配信を繰り返していると、思わぬバズに繋がることもある。
最近、nephewで投稿した下の動画がバズに入り、41万回を超える再生回数に達した。

上部から撮影した画角や、珍しいブルーのカウンターが目新しさに繋がったようだ。(テクニックとして、見慣れない画角の動画は、目新しさで滞在時間が長くなり、バズリやすいそう。)

この動画経由で、3日のうちにフォロワーが2,000人増えた。その効果かどうかは分からないが、ここ数日は平日でも来店数がグッと伸びている。

カフェの場合はレストランと違い来店ハードルが低いので、フォロワーの多さが来店数に直結しやすい。バズが広がり海外のゲストの来店も増えていたりと、良い効果がありそうだ。

この動画は、アルバイトのメンバーが作ってくれた。彼は最近動画にはまり込んでいて、日頃から暇があるとリールを見込んで、新しい表現を試している。本当に面白い企画を打ち出してくるので、僕自身も新しい動画を楽しみにしているほどだ。

nephewのカフェチームは、「撮影・編集」をオペレーションの中に組み込んでいる。スタッフは、時間がある際にオペレーションから外れ、撮影・編集に取り組むことが認められている。そして、新メンバーへ対しては、その方法のレクチャーもトレーニングプランに組み込むようにしている。(僕じゃなくて、マネージャーの後藤がやってくれている。笑)

SNSの取り組みは、一見するとスマホをいじっているだけに見えるので、表立ってアクションしづらい。だからこそ、チーム全体で業務の一環であると共通理解を作ることが大事だ。nephewカフェチームを見ていると、「チーム皆で本気で取り組めば、必ず明るい方向に結果が出るんだな」と僕自身も常に勉強になっている。

最近はより制度化するため、万バズ賞という奨励金制度も導入した。

【万バズ賞】
リールのビュー数が、アカウントのフォロー数の3倍を超えた投稿を対象に、企画者へ2万円の奨励金を支払う。
※過度な演出が無く、ブランドを毀損しない範囲内での動画表現に限る

この支給は、ただ結果を称賛するというよりも、その背景にある行動へ報いることを目的としている。
拡散される動画を生み出すために、多くの事例をリサーチし、企画し、撮影、編集する。特に企画にかける時間はなかなか可視化されないので、その時間が報われるようにしたいと思い導入を開始した。

この制度も後押しし、今後更に現場チームからのアウトプットが増えることを期待している。

変わり続ける状況に柔軟に対応できるチームは強い。

ここまで、instagramの取り組みについて書いてきた。書きながら改めて思うのは、「なんだか当たり前な事言ってるな」ということだ。本当に、目新しいことは特にない。

DMに返信するのはコミュニケーションにおいて当たり前なことだし、動画での情報発信は別業界では当然実施している普通のこと。アパレルブランドでは、ショップスタッフが着用イメージやコーディネートの参考リールを頻繁に投稿している。

ただ、まだまだ日本国内の飲食店では実施しているお店が少ないので、今がチャンスだと思う。

本来は、「〇〇だからこれはやらなくて良い」なんてことは存在しないはず。だけど、いつの間にか自分の固定概念や、周りの人達の流れに沿ってしまって、やるべきことを見過ごしてたり、新しいことに取り組めなかったりする。これが蔓延していくと、事業は停滞していく。

だからこそ、変わり続ける環境に柔軟に対応できるチームは強い。

僕達のチームでは、この柔軟性を大事にしていきたい。料理人だろうが、バリスタだろうが、必要とあらば動画も撮るし編集もする。更に、やるからにはそれを楽しめる集団は最強だ。

もちろん最初は、「え、それも俺の仕事?」となる人も多いし、気持ちはわかる。でも、独立したら遅かれ早かれ向き合わなければならない。

飲食業界は、将来的に独立を目指す人が多いし、僕達のチームも大半は独立志望者だ。彼らには、「一握りの天才以外、独立したらマーケティングも考えないといけないんだから、ここにいる間にやっとこうよ」と伝えている。

それに呼応して、職人育ちの料理人達も隙間時間を見つけて動画を作ってくれている。この姿を見るのはとても嬉しいし、新しいことにチャレンジする姿から僕自身も刺激を受ける。

こんなnoteを書くと、自分へのプレッシャーもかかる。笑
「言うだけ言って、お前がやってないじゃん」と言われないよう、僕もDMに返信しているし、必死で動画を作っている。

必死に取り組む中で、またシェアできる情報が見つかったらnoteに書いて見るので、よかったら感想等教えてもらえると嬉しいです。

Instagramも頻繁に投稿しているので、こちらのフォローも是非お願いします。




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