アメリカの近代建築

 アメリカは広大な国土を持つため、ヨーロッパからのモダニズムとは違うものとなって伝播していった。またわずか400年の歴史しかなく、人口は莫大であるので、装飾過多な表現が好まれ広まっていった。

 アメリカの近代建築は19世紀末のシカゴ派に始まる。いかに高層建築を実現させるかと試行する建築家たちであり、誕生したのは1871年のシカゴ大火に起因する。よって耐火性のある鉄骨構造と垂直移動のためのエレベーターの技術が発展していった。ところが、今までの様式建築のデザインをそのまま高層建築に与えることが出来ないため、どうデザインを与えるかということが課題であった。典型的な解法として、軽々しい鉄骨構造とマッチするテラコッタを用いてデザインされた。シカゴ派の代表格であるサリヴァンは「形態は機能に従う」と主張し、モダニズムに沿う合理主義と機能主義の理念を確立した。彼の代表作であるカーソン・ピリー・スコット百貨店は、人々が注目する1,2 階に過剰な装飾をし、上層部はシンプルに仕上げている。この構成はアメリカの商業建築の典型である。一方、商業性より権威性の重視される駅や大学、銀行などは古典主義を用いて、重々しい表現を与えた。

 次にアメリカの近代建築において最も重要であるサリヴァンの弟子であるF.L.ライトについて述べる。19世紀末のアメリカの住宅は、コロニアル様式が主流であった。これを近代化したのがライトである。ヨーロッパから輸入したのではなく、独自に考えられた。1890年〜1910年まではプレーリーハウスの時代、1930年までは失われた時代、1930年以降はユーソニアンハウスの時代と、3つに区分出来る。プレーリーハウスとは、従来の箱型や対称性を崩し、流動性・水平性の高い空間を持つ住宅である。落水荘が有名であるユーソニアンハウスはアメリカ市民の家という意味があり、自然共生型で効率的で低価格の住宅である。ここにサリヴァンの精神性が感じ取れる。最終的には有機的建築を目指した。落水荘で見られる内と外の連続性のつくり方には感心させられる。

 最後にカリフォルニアの郊外住宅について記す。特筆すべき人物はW.モリスの影響を受けたグリーン兄弟とライトの弟子であるシンドラーとノイトラである。前者は木造の工芸的な住宅を設計し、後者はライト以上にモダニストで、流動的な空間を持つ軽々しい住宅を設計していった。

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