100匹以上の魚をさばくときの記録と知見🐟
はじめに
「SAKAMA(サカマ)」という全国の漁港で水揚げされた魚を生産者から直接購入できるサービスがあります。
このサービスの中で、気になっていることがありました。
それは未利用魚を扱ったチャレンジボックスなるものが購入できることです。
未利用魚とは、加工しにくいかったり流通に乗せるほど漁獲量がなかったりと食卓にのぼりづらい魚ことです。未利用魚とはいっても漁獲される産地では、その土地では美味しく食されているものが多くあります。
普段から魚中心の食生活を送っているのでは、俄然、未利用魚に興味がありました。なので意を決して、怖いもの見たさで、チャレンジボックスを購入してみました(今回の購入先は下記の通り)。
大量の魚がとどいた夜7時
水揚げがあってからの発送なので、注文から2週間たちました。
忘れかけていた頃に、「水揚げしたので発送します」とメッセージ。
その翌日の夜19時、届きました、おそらく100サイズの発泡スチロール。
で、でかい。しかもずっしり。高まる期待感。
蓋をあけてみると…
あーーー、大量の縞々模様のちっちゃい魚だ!
約10cmの高さの発泡スチロールに上から下までびっちり入ってました。
調べてみると、これはイシダイの稚魚で「サンバソウ」というみたいです。
全て体長5cmから10cmくらいのサイズでした。
他にはアイゴが数匹と見知らぬ魚が数匹はいっていました。
アイゴの背びれには毒があるのですが、事前にカットされていました。
知らずに触ると大激痛不可避なので気遣いに感謝です。
それにしても、箱の中から魚のつぶらで澄んだ瞳がこっちをみていると考えると気味が悪いです。普段、この量の魚を買うことがないですから仕方ないのかもしれません。
しかし大変なのはここからでした。
魚を買う前に考えておくこと
まず初めに大事なことを述べておきます。
これからSAKAMAで未利用魚を購入したい方、大量の魚を捌く予定がある方へ。
捌きはじめるまえに、魚を下処理した後の生ごみの処理方法を考えておきましょう。絶対にです。
可燃ゴミの回収日まで時間がある場合は、冷凍庫にいれて凍らせておくと良いでしょう。100匹も捌くと大量の生ゴミがでるので、場所をあけておかないといけないのですが…。
私の場合、冷凍庫にはいらずゴミ袋に何重にもくるんで外のゴミ箱に置いておきました。これが悲劇の始まりでした。
ゴミ袋は密閉されているようで、実は表面には目に見えない穴がありそこから臭気が漏れ出してしまいます。
何重にも袋にいれれば問題ないかといえば、そんなこともなく、これまで経験したことない腐敗臭が漂いました。
これはいかん、ということで対策しました。
それは特殊なフィルムをつかったを臭いを通さないゴミ袋を使うことです。
下記のハウスホールドジャパン株式会社から販売されているゴミ袋が大変有用でした。
この超強力に臭いをブロックできるゴミ袋に入れて、その口を紐でしっかり縛り上げたところ、超強力に悪臭を防ぐことができました。
大量の魚を買うときは後処理のことをしっかり頭に入れておきましょう。
下記がまとめです。
ゴミ袋を買いに走ったり、カラスや虫が湧かないかやきもきしたりと、精神をすり減らしてしまいました。なので、同じような思いを経験して欲しくないのが本音です。
下処理4時間
そして話は戻ります。
生ごみの処理も大変ですが、捌くもの大変でした。
とりあえず鮮度もあるので、頭を落としたり内臓をとったり下処理を先に終わらせておこう、とチャレンジボックスが届いてから思いました。
すでに時刻は19時、苦行、いや修行の4時間がスタートしました。
まさか4時間かかるとは思ってもいませんでした、下処理に4時間…。
最終的に効率化された下処理手順は図の通り。
これを淡々と、こなしていきます。
数をこなしていくうち、ほのかな磯の香りに敏感になります。
そして気持ち悪くなり、途中からマスクが必須でした。
幾度となく内臓を引っ張って出す作業とその感触…「命を頂戴している」…そんな気持ちになります。
捌けど捌けど、終わらぬ途方もなさ。
あともう一息で終わるかな、まだまだ残っているか…何度もそう思いました。
過酷でした。
下処理を終えたサンバソウは、縞々模様のただの肉片にしか見えません。
ただのタンパク源です。
大量消費レシピ
一度に全て食べらるわけではないので、30匹分(もしくはそれ以上)、唐揚げにしました。刺身でも美味しいそうですが、磯の匂いもありましたし、刺身で食べたいというような気持ち、気力、食欲がなくなっていました。
下処理とは別に全て皮を剥いで3枚におろしました。
これがまた大変で、さらに2時間かかりました。
慣れれば作業自体は簡単ですが、ここでまた途方もない徒労感。
そしてニンニクと生姜、醤油、みりんのつけだれで漬け込んで、
一気に揚げてしまいます。
丁寧に皮も骨もとりさってしまえば、程よくしまった肉質で酒のあてにはピッタリです。
ただサンバソウを味わっている感覚はなく、ただタンパク源を摂取している、それだけです。ここまでのたどり着くの達成感も通り越して、ここまで捌いたから食べようという義務感めいたものでした。
もうサンバソウは当分みたくないです。
発泡スチロールから覗く無数の目ん玉と縞々は、集合物恐怖症でなくとも気味が悪くなってしまいますよ。
でも誰も何も悪くないです。
ただ慣れてないだけです、大量に捌くことなんて普段ないですから。
おわりに
文章を書いている時点でまだ冷凍庫にはあの「肉片」が冷凍されています。
また食べるときに、皮剥いで、3枚におろして、2時間経っちゃった、なんてことがおこると思うと戦々恐々です
時間の割に合わないと言えば割に合わないです。
この稚魚も漁獲されなければ立派なサイズのイシダイになるんだろうな、と思うと、水産資源の持続可能な取り方がされているのだろうかと疑問が起こります。
このチャレンジボックスの一箱からそんな意見をするなんて、おこがましいことではありますが。
例えばサンマやハタハタといった魚の漁獲量は、昔に比べるとだいぶ減っています。
そういった水産資源の変化の危機感からか、近年、日本で漁業法の改正で水産資源の持続可能的に獲れるような本腰入れはじめました。
それでも水産資源管理という点で取り組みが進んでいる北欧ノルウェーのようなレベル(資源評価、漁船や漁業者への漁獲枠の配分など)には達していないのが現状のようです。
そんなこんなで大量の魚をさばきながら調理しながら、日本の水産資源の現状についてもっと知りたくなったので、今後もウォッチしていきたいです。
未利用魚のチャレンジボックスですが、時期や地域によってとれる魚は異なるので怖いもの見たさに試してみると面白いでしょう。