チャレンジの連鎖が止まらない!住民も企業も行政も「チャレンジ」するまち、島根県雲南市の魅力
こんにちは!ヒトカラメディアの田久保です。
ヒトカラメディアは『「都市」と「地方」の「働く」と「暮らす」をもっとオモシロくする』というミッションの元、企業や組織、地域にとって意義のある「働く場」のプロデュースを手掛けている会社です。主に都心部でのプロジェクトが多いですが、地域との関わりもあり、1年半ほど前からご縁あって島根県の雲南市というまちへと行き来するようになりました。
古事記で描かれるスサノオノミコトとヤマタノオロチの逸話の舞台であり、たたら製鉄など日本古来からの文化が色濃く残るまちですが、この雲南市にはまた別の顔があります。「ソーシャルチャレンジバレー」と呼ばれ、この「チャレンジ」という旗印のもとに域内・域外の個人や企業が集い、刺激的な状況が日々起こっているまちなのです。
実際に、東京に拠点を構えるヒトカラメディアも2019年3月に雲南市を訪れて以来、その「ソーシャルチャレンジバレー」の熱に引き寄せられ、現地に飛び込み(それ以来、事あるごとに「雲南市がアツい!」と言い続け)、いまでは雲南市に地域住民の方々と子会社「たすき株式会社」を現地に立ち上げ、絶賛チャレンジ中。僕個人も、地域おこし企業人交流プログラムを使って市役所に出向し、行政側の立場で地域に関わりはじめています。
百聞は一見に如かず、何よりも現地で実際に様々なチャレンジを知り、触れてもらうことほど早いものはないですが、なぜこんな状況が生まれているのか、その一端だけでも知ってもらえるよう紹介したいと思います。
住民による課題解決スタート!合併の危機感から生まれた「地域自主組織」
出雲大社のある出雲市の南、2004年に6町村が合併して生まれた雲南市は東京23区ほどの大きさで、里山豊かないわゆる中山間地域が土地の多くを占める人口約3万8000人のまちです。中心部からは松江市・出雲市、そして出雲空港へ車を30分ほど走らせるとたどりつける、自然豊かな環境もありながら、暮らしにも便利な立地です。日本海からの湿った風が里山を抜け、日によっては低い雲が山の裾野にかかる、まさに「雲、出ル」といった県外から来た人からするとちょっと幻想的な風景も印象的。
この雲南市には、2004年の合併の際に生まれた「地域自主組織」という独自の仕組みがあります。雲南のチャレンジを語るには、この仕組みの話が欠かせないので、少し説明させて下さい。
前述した6町村の合併により様々なインフラ、サービスの効率化を図れる一方で、大きな懸念がありました。それは地域ごとのきめ細かやな個別最適がやりづらくなることです。商店街が立ち並ぶエリアと、農業主体の山間のエリアでは課題も当然違ってきます。加えて、住民が農作業の格好で気軽に立ち寄れていた町役場の頃に比べると、5階建ての市役所は場所も遠ければ敷居も高い。これでいままでのような地域自治が成り立つのか。
そんな懸念の中、役場や住民の方々が議論を重ね続けて生まれたのが地域自主組織という仕組みです。行政も地域づくりにコミットしながらも、住民も受け身ではなく自らの手で地域づくりを行うための組織を形成。彼らの活動を行政がサポートします。地区の住民によって形成される地域自主組織は、防災や教育、健康、商業など様々な領域を横断的に束ねていて、行政では補えない、その地区ごとの個別の課題把握や課題解決を彼らが担い、まさに「自治」という形で地域の暮らしのための小さなチャレンジを積み重ね続けているのです。
皆さんご存知の通り、地方には人口減少や高齢化問題、空き家問題など、これからの地域の継続性を考える上でのシビアな課題を数多く抱えています。雲南市も例に漏れず、地域によっては40%を超える高齢化率。このような課題に行政・住民共に真摯に向き合って解決をしていく。これが「ソーシャルチャレンジバレー」と呼ばれる現在の雲南市の大きな源流のひとつとなります。
大人、子ども、若者、そして企業へと続くチャレンジの循環
この地域自主組織主導での地域づくり・課題解決が起点となり、新しい試みが生まれます。地域自主組織の取り組みを「大人チャレンジ」と称し、そこに続く形で若者の起業支援を行う「若者チャレンジ」、そして地域の子どもたちに教育の一環として地域課題解決に挑んでもらう「子どもチャレンジ」が始まるのです。容易には語り尽くせない実践の積み重ねがありますが、いまでは老若男女問わず、「チャレンジ」という言葉が合言葉になり、地域課題に挑む実践者が増えています。直接的に関わりのない住民の方々でも、新しい取り組みに対して温かく応援してくれる雰囲気があるのも、いままで積み重ねてきたチャレンジあってのこと。
さらに2019年度から始まった取り組みが「企業チャレンジ」です。企業に雲南市内に入ってきてもらって、雲南市の課題やアセットを活かした事業づくりにトライしてもらうというもの。これにヒトカラメディアも参加しています。地域の課題×企業の新規事業開発は、いまや地方創生や企業誘致のアプローチとして事例も増えてきていますが、通常、企業が地域に入り取り組みを行う場合、地域によっては理解を得てもらうためにいろんな方々にお会いするなどしてけっこうな時間を必要とします。そして雲南市はここが一味違うんです。地域自主組織が企業と地域との間をつなぐ役割を担ってくれ、遠慮なくチャレンジできる環境を提供してくれます。
加えて、行政側の後方支援も本当に力強い。物事が円滑に進むような段取り、枠組みを丁寧にケアしてくれて、いざトライとなったら地域内での合意形成もスムーズ。具体的にアクションできる状況まで持っていけるスピードには驚きました。ヒトカラメディアもはじめての訪問の際に、地域の方にも行政の方にもお会いさせて頂き、「じゃあ、もし具体的に何かチャレンジすることになれば連携とって進めていきましょう」といった具合。かと言って、スピード優先で本質を振らすようなこともありません。じっくり、どんなチャレンジが可能性がありそうか、伴走スタイルで一緒に考えてくれます。
どんなチャレンジが行われているのか?
そんな地域で具体的にどんなチャレンジが行われているかいくつか紹介したいと思います。ここで挙げる例は主に「企業チャレンジ」と「若者チャレンジ」になりますが、当然ここには書ききれない「子どもチャレンジ」「大人チャレンジ」があることはお忘れなく。
Case1.ヤマハ発動機(企業チャレンジ)
ヤマハ発動機が製造する、ゴルフ場などで利用される「カート」を地域のスローモビリティとして活用できないか?という観点で、雲南市で社会実装に向けて挑戦しています。行政、地域自主組織のサポートもあり、検討から実際にはじめての実証実験が行われるまで数ヶ月というスピーディさ。地域の事業者も巻き込みながら、バスや電車などの公共交通のみではカバーできない地域の交通の課題をいかに解決するか?というテーマで取り組みが行われています。
Case2.ヒトカラメディア(企業チャレンジ)
都内を中心に「働く場」のプロデュースを手掛けるヒトカラメディアが取り組むのは、「働く」をベースにしたコワーキング兼コミュニティスペースを空き家を改修して実現しようというもの。雲南市内のさまざまなチャレンジを「つなげる」という役割も兼ねています。また、地域と一体となって進めるべく、地域住民の方にも出資をしてもらい「たすき株式会社」を設立。現在、「オトナリ」という施設のオープンに向けて準備を進めているところです。
Case3.コミュニティケア(若者チャレンジ)
地域医療の在り方を考え続けたUIターンの若手看護師3人が「訪問看護」の事業をスタート。家と家の距離が離れている中山間地域での訪問看護はビジネス的には高いハードルがありますが(例えば、家と家が離れているので、効率・生産性が上げられないため)、ここを乗り越えいまや組織規模は10名を超える規模に。医療や福祉に加え、法人名に冠している「コミュニティ」の観点も含め、これからの地域の身体的・精神的な健康の土台を支える事業を展開中です。
Case4.うんなんコミュニティ財団(若者チャレンジ)
2020年に立ち上がった市民コミュニティ財団です。既存の枠組み、活動ではなかなかタッチできない「隙間」の課題を市民自らで解決していくサイクルの実現を目指しています。
「地域自主組織」が地区に根ざしたバーティカルな課題解決機能だとしたら、うんなんコミュニティ財団は雲南市全体の横断的な課題解決を行うホリゾンタルな機能を担っています。ちなみに雲南市ほどの小さな規模の自治体でコミュニティ財団が活動している事例は日本全国で見てもまだ、2、3事例とのこと。
繰り返しになりますが、ここに挙げた事例はほんの一例。本当はもっともっと紹介したい事例があるんです。大学がないのに、日本全国の大学生がインターンに来るとか、地域のコミュニティナースが郵便局とコラボレーションしているとか。雲南市には大小問わず、様々な取り組みが自律的に生まれ、そういった動きを支援・伴走するための仕組みを行政が整え、3ヶ月ぶりに訪れたりするといろんなコトが進んでいます。
チャレンジ溢れる地域×企業の可能性
さて、こんな取り組みが盛んな雲南市ですが、企業側から見てどんなバリューがあるのか、少し整理してみたいと思います。
①チャレンジングな空気、とりあえず進んでみようの精神
最初に雲南を訪れた際の強烈な印象としてあるのが、「雲南市はベンチャーだな」というものでした。上記の通り、地域住民の方々が様々な「チャレンジ」を積み重ね続けているまちで、とにかく課題を見据えて新しくトライすることに本当に前向き!2、3ヶ月ぶりに雲南市に訪れたりすると、いろんな取り組みが大きく前進していてけっこう驚きます。現地を訪れて何人かと話せば、地域の課題は山積みながらも、未来に向かって前進する「空気」を体感できるはずです。
②住民、行政、企業、セクションを超えた「チーム雲南」
それぞれ立場や役目が違って見えている範囲や情報量が違うのにも関わらず感じる、強い連帯感。話せばアイデアをもらえたり、人をつないでもらったり、資金調達に関するアドバイスも、とにかく誰かのチャレンジのためにGIVEし合う。この連携の中であれば、難しいチャレンジも何かしら前進はさせられる、そういう強さがあります。
ちなみに、この状況を目の当たりにすると、企業の組織体を考える上でも勉強になることがものすごく多いです(一朝一夕で真似できるものではありませんが……)。立場やスキル、見ている範囲が違う中で、いかにビジョンを共有し合い、各々の役割からゴールを目指せるか。そのヒントがこういった場所にはあるんじゃないかなと思うんです。
③地域課題がよく見える。25年後の日本に求められる事業開発の場
これは雲南市に限ったことではありませんが、事業開発の場としてのバリューがあります。雲南市は日本の25年先の高齢化社会をいく地域です。高齢化率の伸びのピークは過ぎ、高齢化率は今後大きくは伸びません。
言い換えると、雲南市で求められるニーズは今度日本全体で求められるニーズということ。もちろん規模の経済は成り立ちにくいので事業化のハードルは決して低くはありません。ここは企業側が一生懸命、知恵を働かせるところでしょうか。そもそも規模の経済の前提すらもここから10年、20年と考えていかないといけないでしょうし、そういう意味でいくと都市部と様々な前提が異なる地域に入ってチャレンジしていくということはサスティナビリティの観点でもヒントがあるかもしれません。
上記に加え、島根県・雲南市には拠点進出において補助も比較的厚めに用意されています。具体的な検討の際は行政側が「チャレンジ!」のマインドで多方面でサポートを行いますので、その点も安心材料です。
いきなりチャレンジじゃなくても大丈夫
さて、散々「チャレンジ」と書き続けてきましたが、雲南市としては一度訪れてみて知ってみて、企業側と地域側とに関りしろがあれば一緒にチャレンジしましょう!というスタンスです。はじめから「何か具体的な話がないと駄目」というわけでは全然ありませんし、単に魅力的な拠点として既存事業のサテライトオフィスを開設する、というのもウェルカムです。 でもたぶん、雲南市に拠点を構えたら、そのうち何か地域の課題を解決できる事業は作れないかと、チャレンジしたくなってくると思います。そういう気にさせてくれるというのもまた、都市部の高層ビルでは得難い、地域の中の拠点の醍醐味ではないでしょうか。
さいごに
今回は雲南市の話が中心でしたが、都市も地方も関係なく、いろんな地域でいろんなチャレンジが行われていると思います。そこに未来に向かっての新しい行動がある限り、優劣もないですし、いい悪いもないのかなと。ただ、その中でも合う地域と合わない地域、はあると思います。山と海ではアセットも違えば、やはり地域性・県民性みたいなものも確実にある。長い付き合いにもなるはずなので、もし企業が地域で何かしら取り組みを行うのであれば、ここのフィット感は1番重要なんじゃないかなと思います。
この記事を読んでみて何かしら直感的にでもいいので雲南市にピンときたら、まずは機会を作ってぜひ雲南市に足を運んでみてください。これは雲南市に限らずですが、得てして地域での活動は、地域に飛び込んでみてからの方が材料やヒント、きっかけ、縁を得る機会は圧倒的に多いです。なかなか行ける機会を作りづらいという方はオンラインで一度お話させていただくことももちろん可能です。
現地での視察や企業合宿、ワーケーションの相談、一度オンラインで雲南市のことをもう少し詳しく知りたいなどありましたら、下記の「たすき株式会社」よりお問い合わせください。もしお知り合いの方でしたら、僕に直接連絡でも構いません。熱く語りますので!