これからの「拠点」 の在り方を考える前に、ヒトカラメディアのいままでの拠点を振り返ってみた
ヒトカラメディアの田久保です。
『「都市」と「地方」の「働く」と「暮らす」をもっとオモシロくする』というミッション実現のために「働く場」と「働き方」を軸にアレコレやらせてもらっています。
すっかり在宅ワークにも慣れて飽きてきた頃ですが、withコロナにおけるこれからの「拠点」の在り方を考えていくその前に、そもそも自分たちってどんな拠点を経てきたっけ?を振り返ってみました。累計5つの本社拠点と2つの地方拠点、なかなか個性派揃いの拠点でした。
前置き
コロナ禍という強烈なパワープレイによって多くの人がリモートワークの酸いも甘いもを実感を伴った共通体験として持つ時代になりました。特に比較的ワークスタイルのシフトが容易なスタートアップ・ベンチャー企業の人たちは、この1ヶ月半でお腹いっぱいなくらいリモートワークの可能性も寂しさも味わったわけで、
・在宅でも全然いけるじゃん
・ZOOM会議が敷き詰められて疲れる
・集中できすぎてヤバい
・若手の育成どうしよう
・なんだか味気ない、寂しい
・育児×在宅は大変すぎる
みたいな所感は皆さん各々お持ちだと思います。
今後少し状況も変わっていき、コロナウイルスとの付き合い方が自粛一辺倒からバランスを取りつつというフェーズに切り替わっていくと、働き方も自粛要請に対応する形ではなく、より能動的に、本質的に考えていく必要があります。ここからは企業ごとに、単に事業面・業務面だけでなく、いかにクリエイティブなチームを作っていくのかも視野に入れながら、オンラインとオフラインのワークスタイルをどうデザインしていくかが大切になってくるでしょう。
その中でひとつ重要な要素としてヒトカラメディアのいまの生業としている「オフィス」「働く場」があります。オンラインでコミットできる業務が多い会社なんかは、オフィスを持つことをやめて、全員フルリモートでという働き方も合理的な判断と言えます。賃料として払っていた分を、メンバーのリモートで働く環境や成長への投資に回せたりもしますしね。ただ、そういった「オフィスってもういらないのでは?」という意見に頭で頷きつつも、本能レベルでは賛同しきれない自分がいるわけです(笑)。
オフィスが、少し言い方を変えると、同じビジョンを持つチームが集まる物理的な場が持つ力って果たして何だろなぁ……というのをより本質的に考えて議論して深めていかないとなと思っています。これは僕だけじゃなく、ヒトカラメディアのメンバーをはじめ「拠点」だったり「ワークスペース」の仕事に携わってる人が皆さんが、何かしら考えてるテーマだと思います。人事や組織開発を担っている方、経営者の皆さんもきっとそうでしょう。これからはきっとどの企業も、「オフィスをその場所に構える理由、レイアウトや機能の理由」を明確に説明できる(定量的というわけではなく)必要が出てくると思います。これって逆に、いい意味で濃い、面白い拠点がけっこう増えていくんじゃないかな?と個人的には、ワクワクしていたりするわけです。
さて、ちょっと前置きが長くなりましたが、そんなことを考えながら、まずはとりあえず今までの振り返りをしてみることにしてみました。自社のオフィス・拠点の振り返りです。どんな経緯だったのか、そこでどんなことが起きたのか、いまに受け継がれるものは?このあたりの棚卸しをやってみました。半ば備忘録的な内容なので何か参考になる部分は少ないかもしれないですが、面白半分でご覧いただけると幸いです。
2013年5月 銀座シェアオフィス(創業の地)
ヒトカラをよく知る人どころか、メンバーからも「え、渋谷じゃなかったの」と聞こえたりもしますが、創業の地は実は銀座のシェアオフィス。ヒトカラ代表髙井の昔の職場が近く、たまたま馴染みがあったから、とフィーリング重視で選んだ拠点です。
特にエピソードはないのですが、小さめの規模の企業であれば、今後はこういったシェアオフィスにバックオフィス機能を集約させて、あとは基本在宅のリモートと月に1度のレンタルスペース利用でチームビルディング、みたいな形も増えてくるでしょうね。WeWorkのライト版かつ、具体的な付加価値があると良さそう。
2013年9月 渋谷100坪オフィス
はい、すでにビジュアルがやばいですね(笑)。渋谷の建て替えに伴う取り壊し前の原状状態の100坪を、オーナー様のご厚意で数ヶ月格安で借りさせて頂きました。賃料よりも100坪を暖める空調費のほうが高かったというレジェンド付き。これからどんなオフィスに移ろうが、ヒトカラ史上、最もソーシャルディスタンスに配慮されたオフィスの座は揺らがないと思います。
こんなに広いにも関わらず、この頃のヒトカラはまだ代表の髙井がひとり。自分はまだヒトカラにはジョインしておらず、ちょうど関わり始めた頃でした。何かしらの心理実験をしているかのような広さで1人で寂しくないのかなと思っていたのですが、数年後直接聞いてみると「途中からはさすがに寂しかった」そう。寂しさは屈強な創業者さえも弱らす。コロナ禍においても参考になる教訓です。
2014年1月 渋谷神南オフィス
建て壊しに伴い100坪オフィスを後にたどり着いた、渋谷神南の「普通」に素敵なオフィス。大幅な縮小移転で、約30坪になりました(ただし入居時はまだ代表の髙井1人なのでこの広さ要件もおかしい)。入居後、3ヶ月ほどで社員は5名前後に。僕がヒトカラに正式にジョインしたのもこの頃です。
ヒトカラのオフィスの歴史の中で、「部室感」が最も強いオフィスだったかと思います。数人〜十数名のフェーズ特有の、カルチャーを作るために◯◯しよう、ではなく好き勝手やっていたことがカルチャーになっていく感じは、やっぱり振り返ってみても面白いですね。だいたいこんなことが起きていました。
・徹夜は当たり前なので仮眠制度
・休日使ってオフィスのDIYをし始める
・とりあえず知り合い呼んでパーティー
・シンドイ話をするときは近所のドトール
・部室のノリもあり女性がなかなか採用できない
この頃全員リモートワークだったら、いまはだいぶ雰囲気違う会社になっていたかもしれない。
余談ですが、ここでのDIYがけっこうヒトカラメディアの移転の仕方や拠点のつくり方の考え方の原体験になっています。関わるメンバーでプロセスをどう共有するか、いかにオフィス移転を通じてチームや組織を自分ごと化できるか、ここはいまでも移転をお手伝いする際の提供価値としてメンバー全員で大事にしているところなので、当時のDIY自体にそんな高尚な狙いはもちろんなかったですが、今に続くエッセンスがあるのは面白い。(加えて、DIYという共通体験を組み込んだオフィス空間の構築を商品化しようと思ったけどなかなか難しく、以後一部の企業さまにしか提供できていないのは悔しい限り)
こんな感じでいまもプロセスの可能性を追求しています。
2015年度は地方に2拠点
2015年度は自社オフィスの動きはなかったものの、振り返ってみると拠点やオフィスに関してアレコレ前のめり気味にやってました。『「都市」と「地方」の「働く」と「暮らす」をもっとオモシロくする』というヒトカラメディアのミッションにある通り、わりと創業当初から「地方」にもスコープを広げていて、創業の2013年からいくつか地域を回っていました。ちょうど「サテライトオフィス」という言葉がちらほら出始めた頃です。
現地でも何かと感じるところがあり、「地方にも拠点を構える効用がなんかありそうだ!言語化できないけど!」というフィーリングのもと、「やってみなきゃ分からん」ということで、2015年には軽井沢と徳島県の美波町、2つの地域に拠点を出すに至ります。それぞれ話し始めると長いので、またの機会に……ではあるのですが、いずれも非常に刺激的な地域であり、拠点です。
2015年4月 軽井沢オフィス開所
拠点構えるなら事業ないとまずいよね、とうことで、東京駅から新幹線で1時間ちょっとというアクセスの良さもあり、新幹線通勤・二地域居住が増えはじめていた軽井沢で、移住検討者向けの物件紹介事業をゼロからスタートしました。いわゆるまちの不動産屋さんですが、軽井沢の不動産業者は「別荘」がメインの商材で、あまり移住者向けの支援をメインでやっているところはほとんどなかったと思います。現在は、立ち上げ当時から現地パートナーとして一緒にやっていた仲間がリグプラスという会社を立ち上げ、そことの二社間での協業という形で継続しています。普通に考えると完全に順番間違えてますが、拠点ありきで事業をつくるのもけっこう面白いものだなと。
最近ではhalutaさんがコワーキングスペース&ホテルを開業されたり、星野リゾートさんがトライアル的に温泉ワーケーションのプランを組まれたりと、「働く」に関する取り組みも増えてきています。コロナを受けて在宅ワーク前提が増えてくると、軽井沢のニーズも大きく変わってくるんだろうな。軽井沢ならではの静かな環境の良さもあるので、あまり騒がしくならない程度に軽井沢らしくいい感じに盛り上がっていけるといいなと思っています。
2015年7月 徳島県美波町オフィス開所
そして立て続けに、夏に開いた徳島県の美波町オフィス。神山町と同じくサテライトオフィス企業が多く拠点を構える地域です。2014年から何度か足を運ぶ中で、美波町を拠点に様々な地域活性化プロジェクトを取り組まれているあわえさんから「不定期で使ってもらえる拠点を作ったんですが、どうですか?(もう3回くらい来てることですし…)」とお話を頂き拠点の開設の運びに。ヒトカラのような外から来た企業を地域につないでくれたあわえさんには感謝しかなく、こういったつないでくれるプレーヤーが地域の活性には不可欠だなと強く感じました。
そもそも徳島県のサテライトオフィス誘致の取り組みとしてユニークなのが、現地に常駐するかしないかで「常駐型」と「循環型」を明確に定義しており、いずれに対しても支援体制があることです。ヒトカラメディアは「循環型」にあたり、あわえさんが運営されている『戎邸』という施設に拠点を構えることに。現地で事業は行っておらず、不定期で使う地方拠点といった感じです。オフィシャルに非常駐のスタイルも認めてくれている点は大きいと思います。
ここでもいろんなことが起きたのですが、一番象徴的だったのが『デュアルスクール』です。親子一緒に一時的に地域滞在をし、親は仕事、子は学校と、普段の暮らしと変わらない体験を地方でするという試みです。事業ではないのですが、所属するメンバーの働き方・暮らし方に「拠点」できっかけを作れたのがとても嬉しかった。元ヒトカラメンバーの杉浦のデュアルスクール記事は毎度アツいので、子育て×地方に興味ある方は必見です!
その他、トライアスロン大会や地域の祭りへの参加と体を動かしながら、『ミナミマリンラボ』という地域のハブ拠点のプロデュースもお手伝いさせていただきました。コロナうんぬんの前からリモート教育のトライアルをやっていたり、地域×企業の取り組みが行われています。
2016年2月 居抜き支援のスイッチオフィス立ち上げ
自社オフィスとは関係ないですが、『スイッチオフィス』という「居抜きオフィス」に特化したサイトを作りました。居抜きに関してはうまく仲介側がコーディネートできれば入居者も退居者もオーナー側も3者ハッピーになれるということで、2014年頃から度々議論をしていたのですが、何故かこの時期に熱が高まり、一番多忙な年度末に企画してから1ヶ月くらいでポンッとリリース。
いまニーズの高い、居抜きでの退居相談も受けてますので、縮小移転をご検討の企業さまはぜひご相談ください。数年前の取材では、謎に予言めいたことを言ってたりします。まだ「定番」には程遠いかな。
居抜きに関しては僕よりも詳しいヒトカラのメンバーがまた記事を書いてくれると思いますが、まだまだ課題が多いのが現状です。居抜きが当たり前にできると思いがちなテナント、居抜きでの仲介の経験が乏しい仲介業者、居抜きで生じるトラブルや面倒を避けたいオーナー。全体的にリテラシーを上げていかないと、まとまるものもまとまらなかったり。また情報の流量も必要です。いまでこそ居抜きオフィスに関するサイトは増えましたが、コロナ禍において考えなきゃいけない次の宿題は、これらの居抜き情報の流動性をいかに健全に上げれるかなと思っています。なかなか難しい宿題です。
2017年2月 渋谷桜丘オフィス
話は自社オフィスに戻りまして……神南オフィスも20名を超え、机の幅も80cmくらいの立派な3密状態となり、拡張移転することに。社内メンバーをいくつかのチームに分け、次の拠点候補のプレゼンをしてもらいながら、最終的には「神田」vs「渋谷」となり、結論としては今はすっかり再開発で景色が変わってしまった渋谷の桜丘エリアに移りました。
再開発エリアなので期限付きな代わりに賃料お安め、かつココナラさんが使っていたオフィスに居抜きでの入居、ということで事業計画ともフィットかつコストも抑えれてお財布に優しい、お手本のような移転でした。当時の移転プロジェクトメンバーに本当に感謝。
80坪ほどの広さなので、わりとオフィスのレイアウトも自由に活かせ、いま思うと、ヒトカラメディアのメンバーの「働き方」に対する柔軟性はこのオフィスで実体験として培われたような気がします。壁はほとんどなく全面オープンなレイアウトで中央に執務スペースがあり、周囲に軽い打ち合わせができたり、集中できたり、休憩できたり、模型作ったり、の機能が散りばめられているような設計で、「自ら自分に合った働き方を模索する」「場を工夫してうまく使う」みたいなことが頻繁に起きてた気がします。それに並行する形で、社内制度も部室時代からいい感じでアップデートされたり。
再開発に関する立ち退きに関しては、もう少し計画が固まるのは後ろにズレていくんじゃないかな〜と少し楽観的に見ていたのですが(それまで毎年ズレていたので)、ばっちりまとまりましたとのことで1年半ほどで移転となります。桜丘、けっこうダウンタウンな感じで好きだったんだけどな。
2018年10月 中目黒オフィス
渋谷を離れ、次に選んだ場所が中目黒。たしか代々木か中目黒が最終的には有力候補で、なんとなく「暮らし」の雰囲気に近いエリアを選びました。これがいまのヒトカラメディアの本社拠点になります。
中目黒ってとても気持ちのいい街なんですよね。いい感じでリラックスな雰囲気。なので移転当初は社内も緩みました(笑)。あれ、なんかみんなランチの時間長くなってきてない?みたいな。これはけっこう面白い気付きで、逆に丸の内のビル街でスーツでビシッと働く意味はあって、「働く」と「街」の関係というか、作用は確実にあるようです。その雰囲気に無意識に飲まれず、逆に活かせるような構えが大事ですね。中目黒はちょうど「働く」と「暮らす」の中間のようなけっこうユニークな空気なのですが、うまくハマる会社もけっこうありそうだなと思います。「オフィス=作業する場所」ではなくなっていくこれからを考えると、ますます可能性はあるのかもしれません。
空間の仕掛けで特徴は2つ。ひとつは、前の桜丘オフィスと同様に基本的にはオープンなのですが、今回は「逃げ場」となる隠れスペースも設けました。集中したいとか、1on1も増えてきたのでそういったことをサクッとやれる場所として使っています。もうひとつは簡易のキッチンとカウンター。キッチンに関してはもともと声がそれこそ4年前くらいから上がっていた待望のスペースで、メンバーが各々好きな感じに使ってくれて組織の潤滑油的な機能を果たしています。こういった作用をオンライン上でどう実現するか、まだまだオフラインでできることとはギャップがあるので、考えていかないといけないテーマのひとつかなと思っています。
2020年2月 島根県に子会社設立
軽井沢、徳島県美波町からしばらく間が空いた久しぶりの地方での展開で、島根県雲南市に子会社を設立、いままさに空き家を改修した拠点の開設準備中です。雲南市については人と取り組みも風景も、語り尽くせない魅力があるのですが、今回は地域の住民の方々と一緒に会社を設立したというのがヒトカラメディアとしては大きなチャレンジです。詳細はまた改めての機会に。いろいろやっていきますよ〜!
2020年7月 下北沢オフィスに移転予定
今年の7月にまた移転します(笑)。移転自体を決めたのは2020年1月で、いまのコロナの状況を想定してというわけではなかったのですが、外出するメンバーが大半の中、日中のオフィスを見渡してみると1/3くらいしか席が埋まっておらず、冷静に「あれ?使い切れてなくない?」とそもそも論から始まり、中長期で見るとダウンサイジングはアリなんじゃないか、と検討を進めて移転となりました。
次の拠点は下北沢。山手線沿線から大きく離れた、いい意味で「暮らし」が非常に近い地域で、ここに企業がほどよく集まってくることで街にどんなプラスを作れるのかな、というところも見据えながらの移転となります。ここもプロジェクトは追って発信していきたいと思います。
120坪の中目黒オフィス、ヒトカラメディアは人数的に持て余してしまいましたが、内装自体はいい感じです!もし居抜きで入居検討してみたい!という企業さんがいらっしゃったら遠慮なくお声がけください!
さいごに
棚卸ししてみましたが、やっぱり拠点って何かを起こすエネルギーが詰まってるんじゃなかろうか。街や人に作用することも多いし、もっともっと考えていきたい。リモートワークの体制も作り、オフィスの広さを減らそうとするタイミングだからこそ、より濃い意味合いを持った拠点が必要なのかもしれません。
メンバーの声も聞きながら会社の指針もより強く持ちながら、「自分たちらしさ」にこだわって次の拠点を検討してみたいという企業さまいらっしゃいましたら、きっと何かの力になれると思います!ぜひお気軽にお声がけください。
<<居抜きでの入居を検討されている企業さま、募集中です>>
現在、ヒトカラメディアの中目黒オフィスに居抜きで入居したい企業さまを募集中です。広さは約120坪になります。もしご興味ある企業さまいらっしゃいましたら、ヒトカラメディアの公式HPもしくは私宛に直接お問い合わせ下さい。
<<働き方に関するご意見、募集中です>>
ヒトカラメディアも含めた4社共同で、『リモートワークと働く環境の未来』というアンケートも行っております。こちら、ご協力いただけると幸いです。