ピースメイカー始まったネ
ジェイムズ・ガン『ザ・スーサイド・スクワッド』のスピンオフドラマである『ピースメイカー』の配信がU-NEXTで始まった。スーサイド・スクワッドは犯罪者の集団なのだけど、決して全員が世界征服を目論むような「悪党」という訳ではない。見た目がサメだったり、親父がホームレスだったりと環境のせいで社会から爪弾きにされた人々の集まり。このドラマの主人公ピースメイカーもまた社会不適合者で、彼自身は自らを「平和の使者」だと思っているが、そのやり方が度を越してる(目的のためなら誰だろうと平気で殺す)ため、社会的には「悪」となってしまってる男。映画の方はラットキャッチャー2やポルカドットマンといった根は優しいキャラクターに共感しやすく作られてるため、ピースメイカーについては過激なヴァイオレンス要員といった感じで、そこまで内面に関して深く掘り下げられていなかったように思う。そこで今回のドラマというわけだが、第1話で既にめちゃくちゃ面白い!いわゆる現代のポリコレについていけない「アップデート」できない男の様が笑えるという、『コブラ会』と通じるところもあるブラックコメディになっていて、とにかくゲラゲラ笑える。と同時に『コブラ会』がそうであるように、本人はなんの悪気もなく昔のまんま生きてるだけなのに周りからキモがられ、人間のクズと言われ、避けられる姿はどうしても同情せざるを得ず、シーンによっては少しうるっときてしまうほどの哀愁を漂わせている。こういう人間は現実にもたくさんいて、例えばSNSで思ってることをツイートしようものなら意識が高いアップデートされた人々の総スカンを食らうこと間違いなしだろう。ぶっちゃけなるべくなら関わり合いになりたくないような人物だ。でもそんなやつでも、フィクションの中なら同情してしまう、というのは不思議なことだが、現実世界の埋まることのない溝や社会的な断絶を毎日毎日そこら中で目撃してる現在、そこにこそ希望があるような気もする。
"こちらから見りゃサイテーな人
だがあんなんでも誰かの大切な人"
と宇多丸師匠もラップしている。そんな大人な気持ちに一瞬でもなれれば少しはマシだ。今のところピースメイカーを気にかけてくれるのは鳥の相棒ワッシーしかいないっぽいが…
勿論それらの美点はジェイムズ・ガンの巧みな作劇があってのこと。オープニングのダンスもらしさ爆発で素晴らしい。
また、Twitterでも指摘している人がいたが、『フォックスキャッチャー』とも似てる。色々と考えさせられるのだが、最近思うのは、ある人の特徴を「有害」と切り捨てるのは簡単だけど、彼らにとってそれは揺るぎない自分の中の一部だという視点は忘れないでいたいということだ。それはアイデンティティそのものであり、「属性」のように、タグのように「剥がせる」ものではないし、スマホみたいに簡単に「アップデート」できるものではない。
第2話はもう公開されてるので早く観たい。
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