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8058 三菱商事 分析 株価は反転してくるのか?

高配当株で個人投資家に人気の三菱商事(8058)を分析していこうと思います。三菱商事の決算は、11月1日にありました。
12月20日時点で株価下落の一途を辿っていますが、そのブランド力と配当利回りから個人投資家に人気があります。
今回は三菱商事を分析して、株価が今後どうなるかを考えていきたいと思います。


1. 現在の株価と配当利回り、PERなど

三菱商事株価チャート


12月20日時点の株価は2496円で、今年5月に高値(3775円)をつけた後、下り調子です。
配当利回りは現在4.01%です。かなり魅力的な水準かと思います。
通期予想のPER 10.6倍、過去2年最大値PERは16.1倍、過去5年24.2倍でした。
株価の水準的には割安になっていると思います。

2. 三菱商事の事業体について

三菱商事は、日本最大の総合商社で、地球環境エネルギー、金属資源、社会インフラ、食品産業など幅広い事業を展開しています。国内外90カ国以上に拠点を持ち、天然資源開発から消費者向け商品まで手掛けます。傘下にローソンや三菱食品などを持ち、中期経営計画「2024」でEX戦略・DX戦略を推進しています。過去にはチリの銅資源会社買収やローソンの子会社化など、大型投資を行っています。
昨年ベースですが、売上、利益の状況がどうなっているかを確認しておきます。

売上と利益構成

売上、利益構成を見ていきます。項目は11分野にわかれています。
売上順で、コンシューマー産業、金属資源、総合素材といった順序で並びますが、利益ベースで見ると全く違った顔が見えます。
利益ベースで見ると、金属資源が30.4%、天然ガス22.5%、自動車モビリティ14.5%でこの三つで67.5%の利益を占めてしまいます。
金属資源と、天然ガスでも52.9%。利益の5割以上です。
三菱商事は商社ですが、エネルギー事業が主体の会社ということです。

3. 11月1日 2024年度第二四半期決算について

11月1日に第二四半期の決算を発表しています。
2024年11月1日発表 2Q決算のポイント

以下は、2024年第二四半期決算の注目ポイントです。

1. 当期純利益の進捗状況

  • 通期予想:9,500億円

  • 当期純利益進捗率:65.1%
    (2Q累積実績:6,180億5,500万円 / 通期予想)

進捗率が61.5%となるに高いにもかかわらず、通期見通しは据え置かれています。

2. 累計実績 vs コンセンサス

  • 2Q累積実績:6,180億5,500万円

  • 市場コンセンサス:6,649億円
    通期予想も市場コンセンサス(9,626億8,000万円)を若干下回る水準で維持されています。

3. 第二四半期累計(3月〜9月)の実績

  • 売上高:9兆3,547億円(前年同期比 -2.2%)

  • 純利益:6,180億円(前年同期比 +32.6%)

前年同期比で大幅な増益となっていますが、売上高は減少傾向にあります

全体的に、純利益の進捗率は好調である一方、通期予想に保守的な姿勢が見られます。

4. セグメント別の状況について

セグメント別の1Q,2Q累計損益のサマリーです。
主なセグメントは三つ、

地球環境エネルギー(天然ガス)
金属資源
SLC(ローソンなど)

この三つで三菱商事の利益を支えています。
SLCは8月に三菱商事がローソンへの出資比率を引き上げ、持分法で三菱商事に組み込まれましたので一過性のものになります。

1Q,2Q累計の利益

通年のセグメント別業績見通しを見ましょう

通年の業績見通し

特に金属資源の緑のバーをみてください。金属資源の通年見通しは2150億円。それに対して、1Q,2Q半年の実績1957億円。つまり、193億円しか残り半年で利益が出ないという内容になっています。
昨年に比べても、大幅な減益となっている。
他の投資家も同様な疑問を持ったようで、カンファレンスコースで質問がありましたので、三菱商事のカンファレンスコースの回答を下記にそのまま載せます。

会見でご説明させていただいたとおり、原料炭価格の市況が当初見込んでいたよりもかなり低くなっている。中国からの鋼材輸出に伴う市況下落といった要因による影響が下期にもある程度出てくることを見込まざるを得ない。尚、下期MDP(中期計画)が赤字になるという見通しではない。
銅の市況の上期実績は期初見通しよりも上振れた。銅・鉄鉱石の市況見通しについては決算説明書で示した通りであり、ある程度の利益水準は見込んでおり、これを踏まえて下期の金属資源の予算を見たっている。特別に何か想定外のものを下期見通しに織り込んでいるわけではない。
原料炭事業については上期の実績が1300億円強程度であり、そこから2炭鉱の売却益(約900億円)を除くと約400億円程度になる。下期については、原料炭価格の市況が足元かなり下落しており、この先についても予断を許さない状況との見方をしているので、利益水準が下がってくるということはある程度見ておかないといけない。

三菱商事IR

上記を見ると、三菱商事側の回答としては、上期は炭鉱の売却益があり、一時利益が出た。また金属資源についての中国市況が悪化しているため、価格下落の要因を織り込んだという説明。

この回答から判断すると、三菱商事の金属資源事業における下期利益の見通しは、市況悪化を考慮して保守的に見積もられていると考えられます。上期には炭鉱の売却益として約1,300億円の利益が計上されましたが、下期の利益が約190億円弱にとどまるというのは現実的ではない印象です。また、下期における金属全体の市況が読みにくい中で、同社が通期見通し9,500億円を維持しているのは、まだ見通しを変更する段階ではないとの判断があるのかもしれません。

さらに、金属市況の悪化が深刻であることも読み取れます。中国市場の低迷やヨーロッパの不景気入りなど、天然資源価格が下落している状況は周知の事実です。エネルギー事業を主力とする三菱商事の経営陣は、この厳しい市況を踏まえ、慎重に見通しを設定していると考えられます。

5. まとめ

結論として、三菱商事が公表している通期純利益の見通し9,500億円は、保守的な数字であると言えます。市場コンセンサスである9,626億円を上回る結果となる可能性が高いでしょう。現在の株価水準や配当利回りは割安感があるものの、投資家はさらに1年先を見据えていると考えられます。

主力事業である金属資源や天然ガスの価格は、中国やヨーロッパの市況次第で下落する可能性があり、今年度はコンセンサス予想を上回るとしても、来年度の見通しは厳しいものとなる可能性があります。現在の株価水準は、この先の価格下落リスクを織り込んだものと見られます。


以上の点を踏まえると、現時点では三菱商事の買いを控え、次の決算発表を待つのが無難と言えるでしょう。次回の決算で今年度の見通しが大幅に上方修正されれば、来年度の展望も明るくなる可能性があります。

しかし、現状では経営陣も投資家も、来年度のエネルギー事業に対して厳しい見通しを持っていると考えられます。この暗い見通しを払拭するためには、決算においてポジティブな見通しが示されることが必要不可欠です。

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