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さらば、SNSマーケティング。ようこそ、JARVIS。

※この記事は2022年4月1日にstand.fmで放送した内容を文字に起こしたものだ。


SNSを利用したマーケティングが浸透して早10年以上が経つが、TwitterやinstagramなどのSNSを通じて自分達の商品やサービスを売り込むことはもはや当たり前になった。2017年にはGoogleの広告収入が950億ドルを超え、facebookのそれは390億ドルに達している。両社を合わせると、世界の広告支出の約25%を占める。

ここまでの規模に拡大したのは、Amazon、Shopifyなどのオープンソースのeコマース・プラットフォームやスマホに代表されるモバイルデバイス、そしてPayPalなどのオンライン決済インフラの進歩と重なったことが大きい。

何よりSNSマーケティングが優れていたのは、インターネットによって生まれた個人のデータや検索履歴などの情報を元に、ユーザー一人一人の嗜好に合った商品・サービスをレコメンドする技術を活用していたことだ。紙、テレビ、ラジオといった伝統的な広告産業そのものが駆逐された理由も、これほどの要因があれば頷ける。

個人のデータや履歴に基づいてレコメンドされる機能は人工知能(AI)によるものだが、これからの10年は、AIを利用したレコメンドはさらに進化して、SNSマーケティングそのものを消滅させる可能性がある。それが、「音声アシスタントを使った買い物」だ。

「JARVIS」という名前を聞いたことがあるだろうか?マーベルシリーズの「アイアンマン」の作中に登場するAIのことである。こいつは、主人公のトニースタークの手によって作られていて、人間の声を受け取り会話ができる。時には、主人からの命令によりインターネットで検索をかけて必要な情報を提供したりもする。

現在では、このような音声アシスタント機能はappleが開発した「Siri」やamazonの「Alexa」などが代表的だが、これらの音声アシスタントは今後さらに進化を続けて、「ユーザーが直接買い物をしなくても、欲しいものを一言命令すれば最適な商品を買って選んでくれる」ようになるだろう。

例えば、「歯磨き粉を買っておいて」と一言命令するだけで、音声アシスタントは、市販されている歯磨き粉の分子構造や価格などを検討し、歯を白くする効果を立証や口臭の消す効果に疑問を呈する研究成果をチェックし、公表されている顧客満足度の報告書まで調べた上で、最適な歯磨き粉を選ぶようになる。フィクションの話だと思うもしれないが、実際これらの技術は部分的にもすでに実現されている。身近な例でいうと、「Googleのページ内検索」機能だ。
開いているページの中で検索ボックスに特定の単語を打ち込むと、該当する単語にマーカーが引かれる。これで自分が知りたい情報を簡単に調べやすくなるのだ。みなさんも一度は使ったことはあるだろう。

こういう技術を買い物の際に音声アシスタントが利用すれば、歯磨き粉に関する情報を絞り込んで最適な買い物をするのも、遠い先の話ではない。
もっと言えば、そこまでの技術が実現されるようなら、もはやユーザーが商品を注文する必要すら無い。
Amazonでおすすめ商品が表示されるように、すでに企業側でユーザーの閲覧履歴や購入履歴のデータは集約されている。それも音声アシスタントに組み込んでしまえば、ユーザーがいちいち命令しなくとも、過去の購入履歴と購入頻度からAIが勝手に注文まで済ませてくれる。特に日用品の類は、いつもどこで買っていて、どのくらいの値段のものを選んでいて、どの程度の頻度で買うのか、多くの人は自分で大体分かっているだろう。それをいちいち買いに行く手間は意外と馬鹿にできない。なら、その辺りは全てAIに任せてしまった方がいい。むしろ、その方が自分よりいい買い物をしてくれるかもしれない。

日用品に限らず、娯楽や新しいものを買うときであっても、音声アシスタントに買いたいものの特徴を命令して事前にリスト化してくれれば、自分で探し回るよりはるかに簡単に、それでいて満足のできる買い物が実現できる。こうなると、SNSでマーケティングを受ける必要などもはやないことがなんとなく想像できるのではないだろうか?
もちろん、自分で四苦八苦しながら買い物をしたい人はすればいいが、自分の買いたいものをAIに事前に調べてもらってリスト化してもらうくらいのことは、ほとんどの人にとって有益な買い方のはずだ。

僕らはAIについて、まだぼんやりとしか分かっていないが、ニュースで見られるAIの技術を実生活に落とし込むと何が起こるのか?そういう具体的な例を考えてみると、また違った見方ができるのではないかと思う。

参考文献:2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ (NewsPicksパブリッシング)

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