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ロケットが飛ぶ仕組みは、風船が飛ぶ仕組みようなものだ

※この記事は2022年4月8日にstand.fmで放送した内容を文字に起こしたものだ。


今月6日に公表されたニュースで、アメリカのアマゾンが、世界中にインターネットサービスを提供する「プロジェクト・カイパー」計画の実現に向けて人工衛星3000機の打ち上げに協力してくれるロケット会社3社と新たに契約したと発表した。

地理的都合上からインターネット環境に接続できていない地域は世界中にいくつもあるが、そのような地域でもインターネットを快適に利用できるよう、宇宙空間に人工衛星を打ち上げて電波の送受信を行えるようにする。それがこの計画の目的だ。
イーロン・マスクが代表を務めるspacexでは、「スターリンク・ミッション」により衛星を打ち上げをすでに実行しているので、アマゾンはこれと競合するかたちになる。

こんな感じで、面白いニュースの絶えない宇宙開発分野だが、その開発競争の中心にいるのがロケットだ。ロケットをいかに安く、高性能にしていくかは、宇宙開発を手がけるすべての企業にとって最も注目すべきポイントと言っていいだろう。

ところが、そのロケットがどういう仕組みで飛んでいるのかはあまり知られていない。そこで今回は、ロケットが飛ぶ仕組みを簡単に解説したいと思う。ここでざっくりと仕組みだけでも知ると、今後の宇宙開発のニュースも楽しんで見れるはずだ。

ロケットが存在する目的は簡単に言うと、「人工衛星や宇宙探査機などを宇宙空間に運ぶためのもの、あるいは人類を宇宙空間に送り、天体や宇宙現象の謎を解明する」ことだ。

僕たちは日々放送や天気予報、スマホの位置情報機能などを当たり前に利用しているが、これらが利用できているのは、僕らの上空に飛んでいる人工衛星が電波を常に送ってくれているからだ。そして、その人工衛星を上空の宇宙に送り届けれくれる存在こそがロケットである。

地球の引力は僕らが想像するよりはるかに強いので、その引力を振り切って宇宙空間に飛び出すためには、時速約28,000km(秒速約7.9km)もの速度を出さなければならない。これは、ピストルやライフル銃から発射される弾丸の速度よりはるかに速い速度だ。この速度は「第1宇宙速度」と呼ばれる。
また、さっき紹介したような人工衛星を地球の引力が及ばないところまで送るためには、時速約40,300km(秒速約11.2km)と、さらに早い速度が必要だ。これを「第2宇宙速度」という。
こうしたものすごいスピードに達するために、ロケットのエンジンは2段式や3段式にして加速を続けていくのだ。

ちなみに、ロケットがすべて大型で、費用も莫大にかる国家的な事業かといえば、実はそうでもない。
例えば地球の上層大気などを観測する場合は、打ち上げたロケットが地球の引力に引き戻されて短時間で戻ってきても事足りる。その時は、ロケットは第1宇宙速度に達する必要もなく、観測データは飛行中に地上で受信される。これを「弾道飛行」と呼ぶ。

このような目的で作られるロケットは別に小さくてもいいので、大型のロケットよりはるかに安く作ることができる。打ち上げコストも大幅に安いので、小型ロケットの打ち上げに意欲を示す民間企業も多いのだ。

では、ロケットはどんな仕組みで飛んでいるか?ということだが、大気のない宇宙でロケットが飛ぶ仕組みは、ざっくりいうと風船が飛ぶ仕組みと同じである。

風船に息を吹き込んで膨らませたあとに手を放すと、風船は勢いよく飛んで、中の空気がなくなるとやがて落下していくだろう。このとき風船を飛ばしているのは、風船から吹き出る空気の反動によるものだ。これは「推力」 と呼ばれる。
推力とは、噴出する空気とは反対の方向に働く力のことだ。ロケットが空を突き抜けて飛んでいくのも、この推力によっている。

ただし、ロケットが風船と違うのは、機体中に積み込んだ燃料を燃やすことによって推力を得ていること。燃料を燃やして発生させたガスを高圧にしてノズルから一気に噴出させることで強い推力を得ようというのは、ロケットに限らずジェット機でも同じだ。

そしてここが重要なポイントなのだが、大気中を飛ぶ飛行機は燃料を燃やすための酸素を大気から取り入れて使うことができるのに対し、酸素のない宇宙空間を飛ぶロケットは、酸素を含んだ「酸化剤」を自分で持っていかなくてはならない。なので、ロケットには必ず、「燃料」と「酸化剤」が積み込まれているのだ。

燃料と酸化剤を合わせて「推進剤」と呼ぶが、地球から飛び出していくために必要な推進剤の量というのは、ロケットの総重量の90%近くにもなるほど大量である。

例えば重量100tのロケットを打ち上げるとき、そのロケットには90tの推進剤が積み込まれる。現代の技術では、ロケットはいわば「推進剤の塊」といえるだろう。そんな事情もあって、ロケットには飛行機や船のように人間や貨物を乗せる広いスペースを確保するのは非常に難しいのだ。逆いえば、人を載せて安全に宇宙空間に送っているようなロケットは相当に技術力が高いということになる。

ロケットの飛ぶ仕組みはざっくりだがこんな感じだ。僕らが普段目にする乗り物とはだいぶ事情が違うことが分かってもらえれば嬉しい。

次回は、ロケットの推進剤に使われる燃料のことについて詳しく解説するのでお楽しみに。

参考文献:ロケットの科学 改訂版 創成期の仕組みから最新の民間技術まで、宇宙と人類の60年史 (サイエンス・アイ新書)


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