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流されてもいいんだよ

祝就労!
8/1よりやっと働き始めた。
とはいえ、まだ研修期間ではあるけれど。

思ったより体がなまっていることに気付く。
現在、8時間の勤務時間は講義形式で、主に前のモニターや手元のパソコンを見ながら座って講義に臨むのだけれど、腰が痛くなる。目がかすむ。肩が重い。
年齢を痛感することばかりだ。(実年齢より体は年取ってる気がするけれど)
すっかりおじさん化した私から見てみると、周りの同期たちは若い!
その年齢を分けてほしい。
妖怪化した私は、彼らの精気を吸いながら何とか若さを保とうと考えている。

しかし、そんな私も大阪一年目の若輩者。
本当に疲れるのは朝の満員電車である。
勤務初日、JRに遅延が生じ、いつもよりパンパンな車内。
初日から遅刻する訳にもいかないので、どこに埋もれば良いのかわからない人混みの中に、私は半ば強引にダイブする。
「おい、お前入ってくるなよ」という心の声がグサグサ聞こえてくるが、お構いなしだ。
私は半ば浮かんでいる。洗濯バサミで服を挟むと、服は当然だが宙に浮かぶだろう?それと同じ原理だ。つまりピンチだ。
私の目的地は大阪駅。近くの駅で、人がどしどし降りていく。
私は、大阪駅にたどり着くまでは決して振り落とされてはならないという強迫観念に駆られ、何とか扉の上や横のへりにしがみつく形で耐えていた。
大阪駅まで残り一駅。最大の大波が電車内で起こった。
私は必死だった。決して振り落とされまいと、扉の横のへりにしがみつき、「うわあああ」という気持ちで耐えていた。
見かねた乗り待ちのおっさんが一喝!

「降りたらええがな!そんなん無理やがな!」

私ははっと気付かされる。そうか、降りたらよかったのか。

私は大阪の朝の忙しい人々に懺悔したい。
橋げたの辺りにたまって流れを塞ぐ流木の、何と邪魔なことか!

そして私を救ってくれたおっさんに懺悔したい。
テンパった私はそのおっさんにお礼の一つも言わなかったからだ。
おっさんは一喝した。
それは大波に抗う私への怒りでもあっただろうが、きっと私を見かねてかけてくれた優しい言葉でもあっただろう。
大阪のおっさん、いや、知りもしない人だが親しみを込めて「おっちゃん」と私は呼びたい、大阪のおっちゃんからもらった優しさを私は無視してしまった。
(大阪の教科書によると親しいおじさんには「おっちゃん」、おばさんには「おばちゃん」と言うらしい。その逆は「おっさん」、「おばはん」

さながら仏様が垂らした糸に無言で上り出すような不遜さである。

おっちゃん、ありがとう。
あの時、言えなくてごめん。おっちゃん、おーきに。
私にとっての、大阪が今始まる。そんな気がした。

8/2、二日目の通勤から私は、きちんとたくさんの人が降りる駅では、自分も一度降りてもう一度乗るようにした。
すると気付く。4,5人はそれをきちんと実践している。
私は再度、自らの愚かさを恥じた次第である。

流されてもいいんだよ。
吹きすぎる風の中に、そんな声が聞こえた気がする。
ねっとりした8月の風だけれど。

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