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PNFとは

【はじめに】

歴史
Dr.KabatとPTのMaggie Knottによって開発された治療手技。

左: Maggie Knott   右: Dr.Kabat


特徴
全ての人間が持つ潜在的な能力に目を向けて、セラピストはその能力を引き上げることに着目する。主な対象疾患はポリオだった。

目標
PNFアプローチの目標は身体を構造的、神経筋的に適切に促通すること。
・機能的 ADL トレーニング
・筋力・筋持久力の向上
・機能的な筋緊張状態の構築
・関節可動域の増加
・好ましくない動作パターンの改善
・バランスや協調性の改善

適応
基本的に、PNFは全ての神経筋に関わる疾患に用いられる。中枢疾患の患者のみならず、整形疾患やスポーツのパフォーマンス向上などにも用いることができる。

PNF(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation )
・Proprioceptive:固有受容器
・Neuromuscular:神経筋
・Facilitation:促通

【PNFを考える上での基盤】

□哲学
・ポジティブアプローチ
 1.ポジティブな評価と治療
  ICFの考え
 2.患者の可能な活動から開始する
  良い部位を活かして動作を改善できないか
 3.成功を得るための準備
 4.間接的治療
  イラディエーションを用いる
  意識下の動作は疼痛が起こりやすく、
  無意識な動作は起こりにくい
 5.痛みを出さない
  基本的に疼痛はネガティブ
  筋トレ好きな人にはポジティブな現象

・機能的アプローチ
 1.治療は構造レベルおよび活動レベルで行う
  -ICF の利用
 2.機能に直結した評価と治療
 3.患者に適した機能レベル

・集中的トレーニングにより潜在能力を導く
 1.患者の積極的な参加
 2.集中的トレーニングー反復と変化
 (肢位・活動・環境を変える)
  課題が難しいとモチベーションが上がらない
  易しいとトレーニングにならない
 3.援助的なトレーニングプログラム
  (ホームプログラム、家族の参加)

・全体像を見る
 1.評価と治療において(直接的・間接的)
 2.環境的・個人的因子(身体的・精神的)

・運動学習と運動制御理論の利用
 1.異なる状況での繰り返し;
  運動制御の段階により、内容を変える
 運動制御 (Motor Control )
  1) Mobility:
   新しい動作をする
  2) Stability:
   その動作を安定させる
  3) Mobility on Stability:
   安定した動作で新たな動作を追加する
  4) Skill
   動作の中で用いる

  Golden Rules
  1)重心移動
  2)安定性
  3)運動性
  ex.運動の難易度を上げる為に重心移動をさ
   せずに動作を遂行させる

 運動学習
 1)認知段階
 2)連合段階
 3)自動段階
  ex.運動方法や目的を知り動作を繰り返し
   行う。初めは意識的に動作を行うが、
   無意識に行えるようになる。

□テクニック
1)Rhythmic Initiation
 ・目的の運動またはパターンを教える
 ・運動の開始をアシストする
 ・異常な過緊張がある場合、
  患者にリラクセーションを与える
 ・運動速度の正常化
 ・協調性と運動感覚の改善
2)Combination of Isotonics
 ・筋力の増大・筋持久力の増大
 ・協調性と運動の自動的コントロールの改善
 ・機能的活動における運動コントロールの改善
  (特に遠心性コントロールに対して効果的)
 ・ADLへの機能的トレーニング
 ・パターンを教える(groove を見つける)
3)Repeated Stretch from beginning of range
 ・筋収縮の促通
 ・運動開始の促通
 ・運動单位の増加
 ・筋力の増大
 ・自動運動の拡大
 ・筋疲労の減少
 ・望ましい運動方向への再誘導
 ・異常な筋緊張の正常化
4)Repeated Stretch through range
 ・運動单位の増加
 ・筋力の増大
 ・自動運動可動域の拡大
 ・疲労の軽減/特久力の増加
 ・あるパターンにおける機能的に重要な
  可動域での強化
 ・パターンや運動中の目的とした方向への
  動きの再誘導
 ・異常な筋緊張の正常化
5)Replication
 ・ある特定の関節位置や姿勢、動作の一場面な
  ど1つの「場所・地点」を覚えさせたい場合
 ・その「場所・地点」を対象者が自分で認識
  できているのか、深部感覚の評価として行い
  たい場合
6)Contract-Relax
 ・筋のリラクセーションまたはストレッチ
 ・可動域の拡大
7)Hold-Relax
 ・筋のリラクセーションまたはストレッチ
 ・可動域の拡大
 ・痛みの軽滅
8)Dynamic Reversals
 ・筋力と筋持久力の増大
 ・自動運動域の拡大
 ・方向を変える協調性能力の改善
 ・疲労の軽減
 ・筋緊張の正常化
9)Stabilizing Reversals
 ・安定性の増大
 ・姿勢コントロールの改善
 ・協調性の改善
 ・肢位・姿勢を維持する
 ・新たな位置・可動域を教える(再教育)
 ・筋力、筋持久力の増大
10)Rhythmic Stabilization
 ・同時収箱のための安定性の増加
 ・姿勢コントロールとバランスの改善
 ・協調性の改善
 ・肢位、姿勢を維持する
 ・新たな肢位または可動域を教える(再教育)
 ・静止性筋力や筋持久力の増大
 ・リラクセーションの促進

□基本的原理
1)視覚刺激
 ・随意運動は視覚刺激によって制御される
 ・視覚入力は運動や姿勢修正をコントロール
  できる
 ・視覚入力はより強力な筋収縮や強調した動作
  を起こすことができる
 ・固有受容感覚が低下している際にはより有効
  である
2)聴覚刺激
 ・セラピストは多くの情報を患者へ与えるこ
  とができる。
 ・運動反応は声のトーンに影響を受ける。
  鋭く、強いトーン…より強力な筋活動が
           必要なとき
  通常のトーン…運動を維持したいとき
  優しいトーン…患者が恐怖や痛みを抱えて
         いるとき
 ・聴覚刺激はある特定のリズムを与えること
  ができる。リズムは歩行やダンスなど繰り返
  しのある動作を補助するのにとても効果的で
  ある。
 ※ロ頭指示はシンプルで明、正しく理解しやす
  いものであり、適切なタイミングで与えるこ
  とが必要となる。

3)触覚刺激
 ・運動行動への影響
  感覚入力に加えて、働く筋への徒手による
  接触は筋収縮を増幅させる。
 ・虫様筋握り
  セラピストがより効率よく抵抗をかけること
  が出来る。
 ・心理的影響
  グリップは患者にとって心地よいものである
  べきで、痛みを感じさせない。

□固有受容性刺激
1)圧縮
 ・安定性を向上させる
 ・体重負荷と抗重力筋活動を促通する
2)牽引
 ・筋反応と運動性を促進させる
 ・痛みの軽減
3)抵抗
 ・筋収縮を促通する
 ・筋力、筋持久力を増加させる
 ・筋収縮後の弛緩を呼び起こす
 ・グルーブ “Groove”へのガイドとなる
4)エロンゲーションと伸張刺激

□手段
1)パターン
 ・PNFパターンは対角線的・螺旋的パターンで
  ある。これは人間が日常生活やスポーツにお
  いてそのような動き方をしているからであ
  る。
2)放散(イラディエーション)
 ・放散によって、筋活動はより強い部分から
  弱い部分へと派生する。そして放散は筋協調
  性を引き起こし、これにより協調された筋は
  より強く収縮する。
  痛みがある場合にも放散は有効な手段となる
3)強化ー加重
 ・時間的加重
 ・空間的加重
4)タイミング
 ・多くの協調された、効率のよい動作は遠位
  から近位に向かって起こり、これをノーマル
  タイミングと呼んでいる
5)ボディメカニクス
 ・セラピストが良い位置に身体を置くことは
  良い反応や効果を得るためのポイントとな
  る。セラピストは Grooveの中にいるとよ
  い。
 ※Grooveとは
  PNFでは対角線上で身体が最も協調して
  動けるラインをGrooveと呼んでいる。

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