見出し画像

ホーバスジャパンWindow2を見て思うこと

FIBAワールドカップ2023予選ラウンドWindow2が沖縄アリーナで2/25、26、27に行われました。昨年11月の中国戦に続くホーバスジャパンの第2ラウンドはチャイニーズタイペイに勝利(ホーバスジャパン初勝利)。オーストラリアには敗戦して、予選は通算1勝3敗となりました。

ホーバスHC就任前の日本は、
2019年FIBA上海ワールドカップ本戦5戦全敗。
2021年東京オリンピック予選リーグ3戦全敗。
ラマス体制のこの結果を受けてスタートを切りました。

ホーバスジャパンに多くのファンが望んでいることは何か?と問われれば、国際大会の大舞台に立つことができた代表が来年のFIBAワールドカップ2023で悲願の「勝ち」を得ること。そして2024年のパリオリンピックに出場して1勝を勝ち取ること、なのではないでしょうか?


そこで、私的に勝手に「ワールドカップ1勝」「パリ五輪出場、パリ五輪で1勝」をバスケ男子代表の目標設定としてみた時に、今回のワールドカップカップ予選Window2のチャイニーズタイペイ、オーストラリアとの対戦の結果が示す日本代表の位置付け、現在地はどこなのか?
そんな考えを巡らせてみました。

何よりも勝ったことがよかったチャイニーズ•タイペイ戦


ワールドカップの出場権を開催国枠で持っている日本は恵まれた状況にあります。他の国はアジア予選第1ラウンドで予選グループ4チーム中3位までに入って第2ラウンドに進みます。第2ラウンドは日本、フィリピンを除いて予選グループ6チーム中3位までに入ってワールドカップ本戦の出場権を取らなければなりません。(開催国の1つのインドネシアはアジアカップで8位以上に入るとワールドカップの開催国枠が与えられます。)

日本は予選の勝ちにこだわらなくても本戦の出場が決まっているためチーム作りに集中できます。昨年11月の中国との予選リーグWindow1では2連敗を喫しましたが、そこに焦りはありませんでした。ホーバスジャパンの初陣、目指すバスケの方向を示して、選手を試す事ができたので、それで良しという感じでした。


今回のWindow2でも必ずしも勝たなくても良いのですが、ワールドカップ本戦で勝てるチームを作るという目的のためには「勝つこと」で自分達のバスケスタイルに「自信」を持つという意味で「勝利」は必須だったのではないかと思います。

NBAシーズン中でもあり、またコロナの影響もあり、海外チームの選手は代表に呼べず、Bリーグのスケジュールも代替試合をバイウィーク中で開催をするなどの調整もあり、思うような選手招集ができなかったことはあるでしょう。

それは、チャイニーズ•タイペイもオーストラリアも同じであったようです。沖縄で姿を見せた各国の選手は若手中心でした。

1戦目チャイニーズ・タイペイ戦は76-71。リードを許す展開から辛うじて逆転して5点差で勝利しました。

相手の帰化選手のビッグマン、アルティーノに15得点18リバウンド。シューター周に21点、スリーポイント4本と苦戦を強いられました。


しかし、西田のドライブとスリーポイント、ルーク・エヴァンスの攻守に渡る活躍で「勝ち」を収めたことが何よりもよかったと感じました。

このゲームで西田とエヴァンス以外に目を引いたのは齋藤拓実と佐藤拓磨です。齋藤のアジリティと判断の速さにチャイニーズ・タイペイはついていけていませんでした。また、佐藤のディフェンスとスリーポイントはチームにとって効果的でした。    


第3クォーター残り2分41秒。
齋藤がトップ、エヴァンスがピックに行きます。さらに佐藤がエヴァンスのマーカーにスペインピックからポップして齋藤からパスを受けてスリーポイントを決めました。このプレーは印象的でした。

オーストラリア戦で見えた日本の目指すバスケと課題


翌日の東京オリンピック銅メダルのオーストラリアとの対戦。FIBAランキング3位のオーストラリアもBリーグで活躍する島根のニック・ケイ、好調B2香川のアンガス・ブラント、リース・ヴァーグ以外の選手は若手主体の構成でした。

もしかしたら、この若手オーストラリアなら日本は良い勝負が出来るかもしれないと甘い期待を持っていました。前半第は日本がいいリズムでゲームを運びました。しかし、後半に入ると日本は失速して80-64で敗戦となりました。

日本の良い時間帯であった第2クォーターと富樫の個人技スリーポイント3本しか得点出来なかった第3クォーター。図らずもそれはホーバスジャパンの目指すバスケが表現できた時間帯と課題の見えた時間帯でした。

第1クォーターは8点ビハインド。第2クォーターの入りは西田のドライブ、続いてオーストラリアのゾーンディフェンスに対して富樫がスリーポイントが射抜きました。

第2クォーターは日本は良い入りができました。
対するオーストラリアはケイ、ブラントのローポストからのインサイドアタック中心にオフェンスを組み立てていました。ディフェンスは1-2-2のゾーンプレスと2-3のゾーンを使っていましたが、その時間帯に日本は速いボールムーブからスリーポイントがよく入り、富樫とエヴァンスのピックアンドロールからエヴァンスのペイントアタックが決まったりもして第2クォーターはやりたい日本のバスケを表現できていたのではないかと思います。 


日本の目指すバスケは速いバックコート陣のペイントアタックやカッティングによる得点とキックアウトパス、スキップパスなどによりオープンを作り確率の高いスリーポイントシュートをアテンプトするオフェンスのように見えました。守りはスモールサイズをカバーするためしつこくマンマークしつつ、時にはオールコートからダブルチームでトラップディフェンスを試していました。

攻守とも東京オリンピックで銀メダルを獲得した女子代表がしていたバスケットを指向しています。

さて、第3クォーターに入るとオーストラリアは最初のセットを決めます。さらにディフェンスはハードショウからトラップをかけるなど強度を上げてきました。

第3クォーター残り9分42秒
トップのモラーから右ウィングのズニックにパス、その間に右ローポストのケイが谷口の裏から左ローポストのブラントのオフボールスクリーンを使ってカールアップ。ケイのマーカー谷口はブラントに止められ、ブラントについていたエヴァンスはスイッチしませんでした。
右ウィングでフリーでパスを受けたケイはスリーポイントをスウィッシュで決めました。


この1本簡単に決められてからディフェンスの強度を上げたオーストラリアはリバウンドからリズムを掴みます。
第3クォーター開始から約3分間半、日本がタイムアウトを取るまで9-0のランでオーストラリアは日本を突き放しました。
その3分間半にオーストラリアのリバウンドは10本(OR5本DR5本)日本は竹内の1本(OR)のみです。

また、FGは日本の0/6に対してオーストラリアは4/8でした。西田の2本のペイントアタックと富樫、西田、佐藤のスリーポイントアテンプトは全て外れたのに対し、オーストラリアは外から打ったシュートのオフェンスリバウンドを連続して取りセカンドチャンスをものにしてこのゲームの主導権を手繰り寄せました。


ここで私的に見えてきた日本の課題を挙げてみます。

①オーストラリアはサイズは大きいにも関わらず、トランジションが速くディフェンスリバウンド奪うとケイのプッシュからパス1本で得点します。これに対する日本のトランジションディフェンスは遅れていました。このトランジションディフェンスの改善が必要だと思いました。
②スリーポイントシュートが入らない時間帯はオフェンスが停滞します。こういった時にペイントから得点できるセットオフェンスを構築しておいたら良いのにと感じました。
③分かってはいるのですが、サイズが小さいとはいえリバウンド取得は日本のテーマです。ボックスアウトする、タップして拾うなどの何かしらの工夫が必要だと思いました。
④ブリッツなどトラップディフェンスの頻度、精度の向上をもっと図るべきと思います。
⑤エヴァンス、谷口プレータイムが長くスタミナが切れていたように見えました。また、ファウルに対するアジャストもできていなかったためファウルを頻発していました。ビッグマンのタイムシェアは必要なのではないでしょうか。

ワールドカップからパリへと続く道


昨年から始まったトム・ホーバスによる新生ニッポンのチーム作りは来年夏のワールドカップ本戦が1つの目標でしょう。

ワールドカップでオセアニアを除くアジアで1位という結果を得られればパリオリンピックの出場が決まります。これに漏れると世界最終予選(OQT)に出場して6チームずつの4つのグループのトーナメントで勝ち上がらければならないとのことです。
これは、世界の強豪相手に4/24ですから厳しそうです。なんとかワールドカップ本戦で結果を出してパリへの切符を手にしてもらいたいものです。


昨年8月のFIBAランキングは日本35位、フィリピン31位、韓国29位、中国28位、イラン22位です。ワールドカップでアジアで1位となるためにはワールドカップ本戦で勝つ事がパリオリンピック出場の最低条件のように見えます。

あと1年半、沢山の課題をクリアして魅力的な『ワールドカップで勝てる日本代表』を是非作ってもらいたいと願います。JBA、Bリーグ、私たちファンブースター「日本一丸」でホーバスジャパンを後押ししてパリでのAKATSUKI FIVEの雄姿を見たいと思います。

photos by きょっぴ

いいなと思ったら応援しよう!