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Wリーグセミファイナル。際立つ川井麻衣のゲームメイク

Wリーグプレーオフも佳境を迎えています。
Wリーグセミファイナルが武蔵野の森総合スポーツプラザで4/8、9に行われました。

2勝先勝方式でトヨタ自動車がシャンソンに1戦目78-64、2戦目66-56勝利し、ENEOSはレギュラーシーズン1位のデンソーを71-67、61-59で敗りそれぞれ決勝に駒を進めました。

セミファイナル観ましたが、Wリーグも熱いです。さすが世界トップレベルのリーグです。ゲームの流れが変わると10点くらいはすぐに逆転してしまうのでハラハラ、ドキドキが止まりません。

セミファイナルではシーズン途中でHCが交代して主力選手7人が退団しても、セミクォーターファイナルでトヨタ紡織(シーズン6位)を、クォーターファイナルで三菱電機(シーズン3位)を敗って下剋上を果たしたシャンソンに注目していました。

シャンソンの諦めない試合っぷりは半端ありません。三菱電機戦では最大22差をひっくり返しました。

対する大神HC就任1年目のトヨタ自動車は長岡、河村の移籍、3P王三好の引退、エブリンのお休みで若手中心の新しいチームを作り上げてシーズン2位でセミファイナル登場です。

注目の若手チームの対戦は心躍る好ゲームでした。今回はトヨタ自動車-シャンソン戦を切り取りたいと思います。

強力アーリーエントリー、イゾジェ・ウチェ

7人が退団、怪我人と不帯同選手がいて困難なチーム状況のシャンソンがプレイオフ出場権を得てセミファイナルに上がってくるためには、この選手の存在は不可欠だったと思います。

イゾジェ・ウチェ。昨年のウィンターカップで京都清華学園を初優勝に導いたナイジェリアからの留学生です。この選手がいきなり Wリーグの舞台で超人的な活躍をしています。

ゲーム1でウチェは、トヨタ山本と並んでゲームハイ19得点、11リバウンド、ゲーム2でも17得点、12リバウンドのダブルダブルでした。


そのプレーぶりは188センチの高さと身体能力でゴール下を支配するだけではなく、ミドルレンジのシュートやステップ、ターンの技術を兼ね備えたもはや新人離れした存在感です。

第1ゲーム第1Q
シャンソンはスタートのセンターにパレイを起用してトヨタの様子を見ているようでした。トヨタは梅沢のポストアップを軸にポストアタックやここから展開してステファニーと梅沢とのハイローを狙う攻撃です。

また、ハイローを警戒させてトップから山本が3Pを沈める(1Q残り5分28秒)など序盤はトヨタがリズムを掴んでいました。

ところが残り4分41秒からウチェが入ると流れはシャンソンに傾きます。

PG小池とウチェの2メンアリウープで逆転、続くリバウンドからのトランジションで吉田→金田と繋いで速攻(13-16)。

1Q最後は、ウチェのオフェンスリバウンドからセカンドチャンスで17-19です。

流れを変えた川井のゲームコントロール

第2Q
残り7分のところでシャンソンがリードを広げて20-26でしたが、ここからトヨタのPG川井がチームを引っ張ります。 

第2Q残り6分45秒  
川井は親指を立ててサイン。
川井と梅沢のPnRに梅木がウチェにスクリーンに入るスペインPnRです。そこからポップした梅木にボールが渡りドライブを選択しますがこれをファンブル、水野がスティールしてターンオーバー。
しかしウチェに渡ったボールを宮下がスティールの仕返し。これを川井に渡して仕切り直し。

梅澤とのPnRから右ウィングから川井が3Pを決めました。23-26
シャンソンはタイムアウトを取ります。

この攻防からトヨタのディフェンスのギアが上がり一気にこのシリーズそのものの流れを変えたのではないかと思うほどのトヨタの攻勢が始まりました。

13-0のラン。

トヨタはマンツーマンの強度を上げてシャンソンのターンオーバーを誘発します。
川井はこのクォーター残り6分の間に6本のアシストを決めます。

一方でシャンソンはこのクォーターで10本もターンオーバーをしてしまいました。

流れが変わると不思議でそれまで取れていたシャンソンのリバウンドも止まり、第2QはトヨタOR5-DR5-TR10本に対してシャンソンはOR1-DR5-TR6本にとどまりました。

この時の川井のパフォーマンスは多彩でした。

第2Q残り3分50秒
川井のディフレクションから梅沢がスティール、速攻で川井がペイントにドライブ、ストップして背後でトップに来た平下にパスして3Pをお膳立て。(30-28) 

第2Q残り1分36秒
梅沢がローポストからエルボーVカットでペイントの中で面を取って川井がパス。ターンしてゴールイン。(34-28)

第2Q残り1分7秒
川井とステファニーのPnRから川井がヘジテーションを効かせたドライブでレイアップ。(36-28)

この後、第3Q、第4Qともシャンソンはトヨタの勢いを止めることが出来ずに最終スコア78-64で1戦目を落としました。この日13アシストの川井はゲームメイクでトヨタの勝利に大きく貢献しました。

逆転のシャンソン、力尽きる

第2ゲームでもトヨタ自動車は66-56とシャンソンを下しました。しかしシャンソンはスタッツでは現れない見せ場を作りました。

1Qこそ前日の流れのまま22-12とトヨタが10点のリードをつけましたが、第2Q、第3Qでシャンソンが2-3ゾーンとのチェンジングディフェンスでリズムを変えました。

オフェンスでは小池のドライブ、アシストとウチェのインサイドで第2Qには一時17点差あった点差を第3Q残り33秒には逆転しました。(45-47)
第3Q最後に山本の3Pを許して再逆転となりますが、トヨタの得点は山本の3P3本とステファニーのフリースロー1本だけの10点に留まりました。
(48-47)

シャンソンの集中力は半端ありません。
まさに逆転のシャンソンです。

勝敗を決したのは、シャンソン1点ビハインドで始まった最終第4Qです。(48-47)

シャンソンは金田の2本シュートで50-52とリードしました。

そこで、トヨタのステファニーがファウルをしたところで鵜澤HCがタイムアウトをかけて引き離しにかかったのだと思います。

鵜澤HCはエンドインからのデザインプレーを授けましたがショートコーナーからフリーで打った吉田のシュートは外れました。

良い流れを切ってしまうタイムアウトは裏目となることもあります。


ここから山本の3Pが炸裂してトヨタは再逆転。(52-53) 

ここから先、トヨタがリバウンドを全員で奪い、流れはトヨタに傾いて行きました。

最終スコアは66-56。

ロースコアゲームはトヨタが一歩上回りました。

ファイナルは女王対決。シャンソンは来年に期待

トヨタ自動車は2連勝で決勝進出です。 
デンソーとENEOSは接戦の末ENEOSが2連勝で勝ち上がりました。

決勝は3連覇のかかるトヨタ自動車と今シーズンの皇后杯女王ENEOSとの女王対決となりました。

梅沢と長岡の古巣対決もあり、山本と宮崎の代表PG対決あり、日本のエース渡嘉敷をトヨタがどう対策するのか楽しみが止まりません。

そしてシャンソン。 
苦境を乗り越えて少ないロスターで戦い、しかも逆転勝ちを収める姿は見るものに感動を与えます。

また、こうして鵜澤HCのもとベスト4まで勝ち抜いて来た自信とチームの結束は強固なものになったに違いありません。
来年のシャンソンには期待しかありません。

photos by ちとからぁ

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