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前進するAkatsuki Japan女子代表。

「世界一のアジリティをもとにしてあらゆる状況に即応できるカウンターバスケットボール」

これが目指すバスケだと恩塚HCは今年の6/7のJBA強化方針の会見で話していました。

この日にそれがどういったモノなのかをわかりやすく説明されていたのですが、「百聞は一見に如かず」です。

9/22からのオーストラリアシドニーで行われるワールドカップ2022の本番直前の国内での最終強化試合が8/11(木)と8/12(金)に行われましたので、このゲームで表現されたバスケがこの日のプレゼンとどのようにマッチするのか、見てみたいと思います。

恩塚HCのカウンターバスケとは

東京オリンピックで銀メダルを取ったトム・ホーバスHCのチームと、それより前の脈々と引き継がれている女子代表のバスケはサイズの小さい選手たちが世界で戦っていくためにスピードでペイントアタックして外のスリーポイントで確率よく効率的に得点するバスケットでした。

また、小さな選手たちが少しでもリバウンドを取るためにボックスアウトして全員がリバウンドの意識を持つなどして賢く必死にリバウンドを獲得している姿はトムさんの東京五輪より前、内海HCの頃にも見られていました。

指揮官によって戦術に少しの違いはありますが、基本スタイルが強化路線からブレないのが女子代表です。HCによって指導方針が大きく変わる男子代表とは違いがあります。

さて、昨年の東京五輪後に恩塚HCにHCが代わってもその基本のバスケは変わっていません。

スピード(アジリティ)を持ってスペーシングしながらペイントアタックして、行けなかったらキックアウト、スリーポイントを狙う。を基本として、これに加えて、状況に即応できる原則(最適解)を用意して各自が即座に判断して実行するようにする、というのが恩塚流です。

さらに、この原則(最適解)の共通理解が進むとチームプレーがシンクロできる。と恩塚HCは言います。

すべてのプレーが後出しじゃんけんのように、こう来たらこうするという決まり事がありつつ、各自が即興性を持って即応していくバスケット。を目指しているらしいのです。

では、今回のラトビア戦で表現されたプレーはどうだったのでしょうか。

ラトビア戦で試された事。第1ゲーム

目指すバスケの柱は
①プレッシャーディフェンスからTOを奪う
②ペイントエリアでのフィニッシュ(確実性)
③高い確率のスリーポイント(40%超えたい)
④即興性を高めて選手自身でアジャストする。
⑤高い負荷(プレッシャー)の中での再現性。
こういったところだろうと思います。 

第一戦 結果は83-54で日本が勝利を収めました。

試合後のインタビューで恩塚HCは

「今までトレーニングしてきたディフェンスとペイントエリアのフィニッシュで大きな成果を得られた」

「ペイントエリアで(約)60%の確率でシュートを決められた。ディフェンスでもTOを33個誘うことができたのはよかった。(一方で)3Pシュートが来ていない。その中でも、出来ることを見失わずに戦い抜くことが出来たことは素晴らしいことだと思う。選手を誇りに思う。」

とコメントしました。

恩塚HCの言うようにディフェンスは、目指している即応力の高いディフェンスでした。最後まで足を使ってプレッシャーをかけ続け多くのスティール(18個)を奪うことができていました。

ラトビアは連続してピック&ロールを仕掛けて高い確率の3Pシュートを放つ東欧らしいバスケットをしてきました。

これに対して日本はボールマンにはプレッシャーをかけ、ピックに対してはスイッチしたり、ファイトオーバーしたり、かなりの確率でハードショーからダブルチーム(ブリッツ)を仕掛けていました。

ここに原則(最適解)があるのでしょう。
スイッチするのか、しないのか、ブリッツに行くのか、行かないのか。選手間の共通理解、ルールのようなモノがあるように見えました。

序盤は、ラトビアのピックからドライブで割られたり、ダブルチームに行ったところをパスを捌かれて、クローズアウトした時にフリーができて、高い確率の3Pシュートを決められていました。

ところが、第2クォーター以降は対応して、ローテーションを迷いなく素早く行うことでフリーを作られることが少なくなります。

この日のラトビアの3P確率の推移は下記の通り。
第1クォーター8/22(57.1%)
第2クォーター0/  3(  0%)
第3クォーター2/10(20%)
第4クォーター2/  5(40%) 
第2クォーター以降ラトビアの3P試投数も成功数も明らかに減っています。 

ペイントアタックでガード陣のドライブでは安間、宮崎のスピードにラトビアはついて行けていませんでした。インサイドでは渡嘉敷のポストプレーや高田の合わせでしっかり得点できていました。

お家芸であるはずの3Pは第1ゲームではさっぱりでした。ワールドカップ本番でもシュートが入らない時間帯は必ずあります。こういった時にペイントで点が取れる方法が確認できたことは大きかったように思います。

また、全く入らなかった3Pシュートですが、第2クォーター残り1分54秒にチームで15本目の試投で最初に沈めたのが宮澤でした。この宮澤のメンタルの強さ。困った時に誰に回すべきかも確認できたと思います。 

そしてカウンターバスケットの即興性をバスケットIQの高さと共に発揮したのが平下でした。
先を読んで狙いすましたスティールが6本。
リバウンドも6本。アシストも4本。こちらすべてチームハイでした。

一方で、この日の課題は③3Pシュートの確率と④高い負荷の中での再現性。の2点であったと思います。相手のプレッシャーや動きの中での3Pシュートが落ちていたところは留意される点です。

ラトビア戦で試された事。第2ゲーム

さて、第2戦です。
スコアは74-48で日本の勝利でした。

ラトビアを48点に抑える日本のディフェンスは芸術的でした。

3Pシュートを高い確率で打ってくるラトビアにスイッチ、ローテーションして最後までしっかりクローズアウトして3Pシュートを楽に打たせませんでした。

この日のラトビアの3Pシュートは4/25の16%でした。3Pシュートを持ち味としているチームに対してタフショットを打たせて攻め手を無くさせる素晴らしい守備でした。 

また、この日はラトビアからTOを21本誘発しています。第1ゲームの33本のTOは出来過ぎですが、21本もTOを取れれば普通は負けません。

やはり、ラトビアは日本のプレッシャーディフェンスに手を焼いていたと思います。

そして、日本はタイムシェアをしつつ、ディフェンスリバウンドの後や、ラトビアの攻撃後の早いトランジションの展開でラトビアの選手を毎回走らせていました。
確実にラトビアの体力を削っています。

第1クォーターで20点取ってから以降、ラトビアの点数は11点、7点、10点と減少しています。
後半ラトビアの足は止まってしまいました。

一方でオフェンスです。
恩塚HCは、「セットをあまり使わず手間をかけずに省エネで攻める。」と6月のJBAの強化方針の会見で言っていました。その通りの展開だったのですが、早め早めに3Pを打ち込むので 少し淡白な印象が残りました。

もう少し作って、1本エクストラパスなど捌くともっとラクなシュートシチュエーションができるのではないかと思いました。

それでもこの日は3Pシュートが14/36(38.9%)と質、量共に良かったのですが、2Pの確率は11/29(37.9%)と前日の25/42(59.5%)からは大きく落としています。ラトビアがペイントに対してプレッシャーを強くしたようです。

その中でもペイントでのフィニッシュのスキルの高さを表現したのが東藤選手とステファニー選手でした。

さて、この日の課題として恩塚HCが上げていたのはリバウンドです。日本のリバウンド数35本に対してラトビアは50本と15本も差を付けられています。

せっかく21本TOを誘発して自らのTO数を8本と少なくして(その差は13本)ポゼッションを稼いでもリバウンドを取られ過ぎれば、チャラになってしまいます。

ワールドカップ2022に向けて

9月22日から始まるワールドカップでは、グループリーグで当たるオーストラリア、フランス、カナダをはじめ世界の強豪と対戦します。

強豪を相手にすればすべてが思い通りに行く事はなく、想定外のタフな状況に遭遇する事でしょう。これに立ち向かうメンタルが必要となります。

バスケットボールキングの記事によると恩塚HCは今回の強化試合の前の会見で、「(練習で)戦術的に負荷をかけてカオスな状況をあえて起こるようにしています。その中でもチャンスを作り、チャンスを作り直し、攻防の速さを鍛えている」と言っていました。

「目標は世界一です。」「世界一になって帰ってきます。」

力強く放った指揮官の言葉に真実味を感じました。恩塚JAPANに期待が高まります。

photos by kii
写真はkiiさんにご提供いただいてます。

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