6658シライ電子工業を徹底解剖!初心者でもわかる投資分析【業績、財務、指標チェック】
シライ電子工業は、堅実な経営基盤と成長性の両方を兼ね備えた魅力的な企業です。本記事では、同社の決算短信や中期経営計画などのIR情報に基づいて、現在の株価についてを考察していきます。
また、シライ電子工業がどんな製品をつくっているのかなどの企業概要は下のリンクからごらんください。
1. 業績(企業の成績表)
ここでは2020年3月期から2024年3月期までの業績を確認していきます。
1.1. 2期連続の赤字(2020年3月期~2021年3月期)
2020年3月期、2021年3月期の2期連続で赤字となっています。決算短信によればこの赤字の原因は下のとおりです。
米中貿易摩擦の長期化による売上高減少
中国景気低迷の影響とカーエレクトロニクス、電子応用関連、通信・事務機器関連の受注低迷による売上高減少
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による経済活動の停滞
プリント配線板業界全体の需要減少
特別損失として経営構造改革費用150百万円を計上(2021年3月期)
さいごの「経営構造改革」とは、企業の収益性や競争力を向上させるために行う経営体制の抜本的な見直しと改革を指します。シライ電子工業の場合、以下の取り組みが含まれています:
事業の選択と集中
全社的な経営意思決定の迅速化
不採算部門や業務の見直し
人員の最適化(希望退職の実施)
この経営構造改革をうけて次期以降は業績が急回復しています。では2022年3月期以降の業績もかくにんしていきましょう。
1.2. 急回復(2022年3月期)
2022年3月期は売上高から純利益まで全て急回復し復配(10円)もしました。2022年3月期決算短信によれば、この回復の要因は下のとおりでした。
主力分野であるカーエレクトロニクス・ホームアプライアン ス・電子応用関連で受注が堅調に推移した
経営構造改革により生産性が向上しコストも削減できた
新型コロナウィルスの影響が一部緩和され、供給が一部回復した
補助金や為替差益などの営業外収益が増加した
1.3. 増収増益(2023年3月期)
2023年3月期は、プリント配線板事業の堅調な販売と生産効率向上、経営構造改革の成果によって、営業利益、経常利益、純利益が大幅に増加しました。
1.4. 減収減益(2024年3月期)
2024年3月期は減収減益となりました。その要因は下のとおりです。
主力事業であるプリント配線板事業において、顧客の在庫調整により受注減少
主要市場であるカーエレクトロニクス分野で需要が鈍化
生産効率の向上や固定費の削減努力が継続されたが、売上減少を完全には補完できなかった
原燃料価格の高騰や円安の進行で製造コストが上昇した
1.5. 今後
2024年5月14日に発表された中期経営計画ではこれまでのシライ電子工業を次のように分析していました。
「当社は2015年度以降業績が伸び悩み、コロナ禍で経営の危機的状況に陥った。そうした中、2020年に現社長の五藤を中心に抜本的な経営構造改革骨子を作成・提言し、選択と集中による業績改善施策、及び全社的な意思決定の迅速化と成功体験の共有の積み重ねを行い、その結果2021年度からV字回復を果たし、損益構造及び組織風土を変革させることに成功した。」
そして、今は次のような経営方針で運営していくとしています。
「『未来の成長』に向けて
①成長分野(カーエレクトロニクス、EV等)と成長市場(ASEAN、インド等)を見据えた技術開発と新規開拓を推進
②高品質・高付加価値分野へ注力しビジネスチャンスを拡大
③独自性のある自社商品を開花させ新たなビジネス領域を拓く」
上のとおり、
2024年3月期(実績)売上 → 2027年3月期売上 33,000 14%増
2024年3月期(実績)営業利益 → 2027年3月期営業利益 2,600 11%増
2024年3月期(実績)純利益 → 2027年3月期純利益 1,700 13%増
というような目標をたてています。
また財務目標をみてみると、有利子負債を削減し、金利上昇による支払い利息増加のリスクを低減させる目標となっています。
シライ電子工業はこれまでの業績予想をみていると保守的にみつもる傾向があります。構造改革後は毎期上方修正しています。このことからこの中期経営計画も控えめに見積もっている可能性があります。今後に十分期待できると個人的には考えています。
2. 財務(企業のお金まわり)
ここでは様々な資料をもとにシライ電子工業の財務状況をかくにんしていきます。
上の表から有利子負債(借金)は減少し、自己資本(企業が稼いだお金)が増えています。とても健全な状態です。
有利子負債が減少し、自己資本が増加しているので自己資本比率は増加しています。もちろん健全な財務状況をしめしています。さらに自己資本比率は下のように増加し財務の健全性が増しています。
39.8%(2024年3月期) → 43.8%(2025年3月期第2四半期)
*自己資本比率=(自己資本/総資産)×100
FCF(フリーキャッシュフロー)も経営構造改革を経て安定してきました。
FCF(フリーキャッシュフロー)が安定しているということは、その企業が支払いをスムーズに行えることを意味し、投資や事業拡大をおこなうよゆうがあるということ。
3. 指標(企業の値段)
ここでは様々な指標をもとにシライ電子工業の株価が割安か割高かの判定をこころみます。全て2024年12月30日現在の数値です。
3.1. 株価589円
2023年から見てみると底値として意識されているのは500円あたりでしょうか。たまに株価は700円、800円とはねています。
3.2. 時価総額89億円
これも2023年から見てみると、時価総額の下限は70億円あたり、上限は100億円にひとつのライン、120億円が最大の目安。
3.3. PER5.9倍
PERは最高で8.5倍あたり、最低で3.8倍あたり。現在の5.9倍はその真ん中あたりで割高でも割安でもない水準です。
3.4. PBR1.0倍
PBRは最高で2.45倍あたり、最低で0.9倍あたり。現在の1.0倍は割安水準!
3.5. ROE16.7%
2022年3月期 ROE 33.71%
2023年3月期 ROE 34.95%
2024年3月期 ROE 18.97%
2025年3月期2Q ROE 16.7%
2024年3月期にROEが低下したのは、BPSは増加したがEPSが低下したためである。純資産は増えたが、利益が低下したということです。
*ROE=(EPS/BPS)×100
3.6. 配当利回り5.1%
2024年5月14日に増配や中計の発表があり、そこから配当利回りの水準が一段高くなりました。なので、この水準が高くなっが5月以降で配当利回りをみていくことにします。そうすると、最高配当利回りが6.3%、最低配当利回りが4.3%となります。現在の5.1%はその中間となります。
直近であれば2024年10月の5.7%が最高となります。もう少し株価が下がって配当利回りがあがる場面が来る可能性もありそうですね。
3.7. 配当性向26.3%
2022年3月期 配当性向 10.4%
2023年3月期 配当性向 14.8%
2024年3月期 配当性向 26.3%
さらに2024年5月14日発表の中期経営計画(下記5.「株主還元方針」参照)によれば2025年3月以降の配当性向の目標は、
2025年3月期 配当性向 30%
2026年3月期 配当性向 30%
2027年3月期 配当性向 35%
となっています。
4. で、どうする??
PBRが低い。つまり資産的に割安。
自己資本比率は増加傾向。
ROEは16.7%でこれは十分に高く稼ぐ力あり。
配当利回り5.1%でかなり高配当。JTより高い。
配当性向26.3%で増配余地あり。目標配当性向は2027年3月期で35%だし。
高付加価値製品に注力、成長市場をみすえた新規市場開拓推進。
現社長のもとさらに成長することを期待して私は買いたい。その他にも買いたい理由はありますが、今回はこのへんで。
今の株価589円は若干高いのでもう少し安くなるのを待ちたい。どうなるか。
This is not financial advice. Invest at your own risk.
シライ電子工業の基本情報は下のリンクからごらんください。