見出し画像

3861王子HD株主還元姿勢をおってみる、アクティビストが買ってきた

本記事では王子ホールディングスの最近の株主還元政策について確認していきます。


1. 企業価値向上に向けた取り組みについて(2023年12月25日)

王子ホールディングスは2023年12月25日に企業価値向上に向けた取り組みについての資料をだしています。

王子HDの現状認識について

王子HDのPBRは2018年度には1倍程度だったが、その後低迷し2023年は0.6倍弱、2024年末は0.5倍となっています。ROEは一時回復はしたものの、再び2023年度は6%前後、2024年末で4.4%となっている。

王子HDはこの低いPBRは、ROEの低下が一因とし、事業が市況や需給変動の影響を受けやすく、収益性が不安定であることが要因と考えられるものの、根本的な要因は成長力に関する説明が不足し、成長ストーリーが浸透していないことと推測している。

PBR向上に向けてROE資本収益性向上とともに、PER将来にわたる持続的な成長力を両輪として取り組みを進め、IR・SRでの情報発信を強化していくこととした。

企業価値向上に向けた取り組み

以上のような現状認識のもと、取り組みとしては、資本効率性の改善と、持続低成長につながる取り組みを推進し目標達成をしていくとしています。

〇2030年度目標
・連結売上高 2.5兆円以上

〇ROE向上の取組方針
利益率の向上と資本効率の向上を重視し、事業ポートフォリオ転換および生産体制の効率化を進めるとともに不要資産の処分を行い、資産のスリム化を目指す。
安定的な株主還元を継続するとともに、収益力に応じた株主還元とするべく、配当性向30%を目安とし、長期的な企業価値向上に向けた成長投資と適切な株主還元のバランスを両立させる。
このような取り組みを通じ、ROE8%以上を安定的に達成し、将来的には10%を目指す。

収益性向上に向けた取り組み

成長性のある分野に集中投資し、低収益事業は撤退や売却を視野に検討していくこととしている。

成長市場としては、東南アジア・インド市場に着目し、パッケージング事業や感熱・粘着事業を推進してきた。さらにインドでは現地に事業開発会社を設立した。

不要資産の処分、資産のスリム化については、特に国内事業において、長年の事業展開で発生している遊休・不要資産の活用や売却を推進する。また、政策保有株式については、保有目的や保有による便益を個別銘柄毎に精査し、保有の適否をより厳しく判断し、保有の合理性が希薄化した株式の売却を進めるとのことでした。

このように王子HDはROEやPBRを意識した経営に力を入れているようです。

2. 自己株式取得について(2024年2月26日)

2024年2月26日に自社株買いの発表がありました(詳細は下記資料参)。

2024年2月26日自社株買い発表

翌日2月27日に自己株式の取得結果が発表されましたが、計画と実績については下の表のとおりです。

自社株買いの計画と実績について

株数としては計画の79%、金額としては計画の65%となりました。株式の買付単価は551.6円、取得した株式は発行済み株式数の0.88%です。

3. 政策保有株式の縮減について(2024年4月26日)

2024年4月26日発表の政策保有株式縮減について

王子HDは、政策保有株式の縮減に関する具体的な計画を発表しました。この計画は、企業価値向上と資本効率性の改善を目的としています。

〇縮減目標と実施期間

目標金額:2024年3月末時価ベースで300億円の縮減
実施期間:2024年度から2027年度までの4年間

この目標は、過去5年間(2019年度から2023年度)の縮減額43億円の約7倍に相当する規模です。

〇資金の活用方法

縮減により得られた資金は以下の目的に活用される予定です。
・持続的な成長のための投資
・株主還元(配当、自己株式取得)

この取り組みにより、王子ホールディングス株式会社は資本効率性の改善を図るとともに、持続的な成長と株主価値の向上を目指しています。

4. 保有株式の縮減について(2024年11月7日)


2024年11月7日発表の保有株式縮減について

さらに、王子HDは保有株式の縮減に関する新たな方針を発表しました。この発表は企業価値向上の取り組みの一環として行われています。

〇縮減目標の見直し

当初の目標:2027年度までに政策保有株式を300億円縮減
新たな目標:2027年度までに総額700億円の縮減
 ・政策保有株式の縮減目標を引き上げ
 ・グループ会社の退職給付信託株式も見直しの対象に

〇2024年度の目標と進捗

通期縮減目標:400億円
第2四半期までの実績:106億円の縮減を実行

〇資金の活用計画

縮減により得られた資金は以下の目的に活用される予定です。
・持続的な成長のための投資
・株主還元(配当、自己株式取得)

〇財務影響

2025年3月期連結決算において特別利益の計上が見込まれており、この影響は既に通期連結業績予想に織り込まれています。

この新たな方針は、王子ホールディングス株式会社の資本効率性の改善を目指すものであり、投資家や市場に対して積極的な姿勢を示すものと言えます。

5. 野村絢さん王子HD株の1.5%保有判明(2024年11月13日)

2024年11月13日発表の半期報告書で野村絢さんが大株主となっていることが判明しました。

2024年11月13日発表半期報告書で野村絢さん1.5%株式保有が判明

ちなみに、野村絢さんはアクティビストで有名な村上ファンドの村上世彰さんの娘さんです。野村絢さんもアクティビストとして活躍されています。

村上ファンドや野村絢さんの活動の中ではジャフコグループの株式大量買い付けが有名です。

村上ファンド系のジャフコグループに対する株式保有比率の推移

その後、2023年1月25日にシティインデックスイレブン(村上ファンド)が保有する株式が全部売却され保有比率が0%となりました。

1,500円あたりが底値ですが、そこから2,500円くらいまで上昇し村上ファンド劇が幕をとじました(下のチャート参照)。

ジャフコグループ3年チャート
(2022年8月から2023年1月にかけて村上ファンド系の株式買付や売却劇がありました)

ジャフコグループは村上世彰さんが関係しているので大きく上昇しました。王子HDは野村絢さんのみの所有なので、ここまで激しいことにはなるとは思いませんが、王子HDの株価も上昇しています。

ちなみに、野村絢さんが現在所有している株式は以下のとおりです。

野村絢さん所有株式

6. 自社株買いについて(2024年12月12日-13日)

ここでは自社株買いの決定から実際に自社株買いがどの程度おこなわれたのかについてみていきます。

6.1.自己株式の取得に係わる事項の決定について(2024年12月12日)

まずは12月12日に発表された自社株買いの計画についてです。

自社株買い決定のお知らせ

上の資料の内容を簡単にまとめると下の表のとおりです。

自社株買いの概要

王子HDは、2026年度末までに1,000億円の自己株式取得を実施する方針を決定しました。その一環として今回(2024年12月13日~2025年12月12日)は、100百万株、500億円の自社株買いを計画しています。この100百万株は発行済み株式数の約10%です。つまり、総額1000億円なので、今回と同規模のものが2026年度末までにおこなわれる計画となっています。

株主還元方針には以下が含まれます。
年間配当: 1株当たり24円を下限とし、減配せず配当性向30%を目安に実施。
内部留保: 成長投資に備えた内部留保を考慮しつつ、収益力に応じた安定的な配当を継続。

2024年11月30日時点での自己株式保有状況は次の通りです。
発行済株式総数(自己株式を除く): 986,405,576株
自己株式数: 27,976,241株

6.2. 自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の買付に関するお知らせ(2024年12月12日)

自社株買いの具体的な方法

この発表の内容を表にまとめると下のとおりです。

558.1円で買い付けることが決まりました

558.1円で、上限2600万株、上限170億円規模の自社株を買うことに決定となりましたということです。

6.3. 自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の取得結果に関するお知らせ(2024年12月13日)

下の表は今回の株式取得の結果です。

12月13日取得計画に対する達成率など

今回の自社株買いは2025年12月12日までの計画です。12月13日に実施された自社株買いの消化率などは下の表のとおりです。

全体計画に対する残枠と進捗率

今回の取得により、全体計画の約4分の1が実施され、今後も約367.4億円分の自己株式が取得可能な状態です。

繰り返しますが、この500億円規模の自社株買いが、2026年度末までにもうひとつ用意されています。最近発表された本田技研の自社株買いと同じくらいの衝撃です。

参考【2024年12月23日夕方発表・本田技研の自社株買い】
・取得株式総数:11億株(上限、自己株式を除く発行済株式総数の23.7%)
・取得総額:1兆1000億円(上限)
・取得期間:2025年1月6日~2025年12月23日

7. それぞれの発表と株価の関係

これまでの発表と株価の動きをみていきます。

王子HD2年チャート
  • 2023年12月25日の企業価値向上に向けた取り組み発表で株価上昇。

  • 2024年2月26日の自社株買い発表で株価上昇。

  • 2024年4月26日の政策保有株式縮減の発表がありましたが、同日業績予想の下方修正(売上高-4.0%、営業利益-12.2%、純利益-12.3%)の発表もあり、これで株価は下落していきました。これまでの過熱感もあったのでしょう。

  • 2024年11月7日は保有株式縮減の発表がありましたが、2Q決算純利益が-23.4%、通期業績予想を下方修正(売上高-3.7%、営業利益-26.3%、純利益-24%)し株価急落。

  • 2024年11月13日の野村絢さんの株式保有の情報では少しだけ上昇。

  • 2024年12月12日の自社株買い発表で急騰。その後株価は下落して押し目をつくっていると個人的には言える状況となっています。少し戻しましたが。

8. まとめと今後の個人的な作戦

2023年末に企業価値向上に向けた取り組みを発表し、そこから一時株価は上昇しました。株主還元姿勢が積極的になりつつも、業績が伴わずスルスルと株価は上昇していきません。野村絢さんの影響がどれくらいでてくるかはわかりませんが、ROE10%を目指し、政策保有株式を削減し、株主還元をしていく計画を発表していることから、これまでの下値550円を割れる可能性は低いのではないかと勝手に考えています。

円高銘柄であるので、現在の1ドル157円の水準では利益がうまくとれないので、短期的には業績に期待できないと思います。日本の利上げ、米国の利下げが本格的に始まりドル円が下落するまでは自社株買いで頑張ってもらいましょう。

セクター的にもあまり利益をのぞめない銘柄です。高利益率の事業を伸ばしていく方針でもあるので、長期的にはその事業ポートフォリオに移行していくことを待ちながら私は長期ホールドしていきます。紙パルプセクターの銘柄を私はこれ以外もっていないのでMyPFの分散のためのホールドでもあります。

This is not financial advice. Invest at your own risk.



いいなと思ったら応援しよう!