TOBとかMBOなどM&Aが話題ですが、いっそのこと日本M&AセンターHD(2127)を買ってみたらいいんじゃないと思ったというお話。でも1点気になるところがあり、最終的に今は本気買いしないことになりました。
「次はどこがTOBされる?」とか「親子上場しているからこの子会社は買い取られるかな?」「ここはキャッシュリッチだから、、、」とか一攫千金を夢みて先回り投資したくなります。私もいろいろ考えていました。まあある程度TOBされるかもしれない企業は推測はできるかもしれませんが、なかなかバシッと当たらないし、いつTOBがくるかわからない。
そんな可能性があるだろう企業に先回りして投資して資金がロックされジット待っているくらいなら、いっそのこと様々なM&A案件を取り扱っている日本M&Aセンターに投資しちゃったほうがいいんじゃないかと思ってさくっと調べてみました。30%とか40%などというTOBプレミアは狙いないかもしれないが、株価10%とか20%上昇はありえるんじゃないかと思った。
TOBやMBOされる企業の特徴などをまとめた記事は下のリンクよりどうぞ。
1. 事業内容
日本M&Aセンターホールディングスは、主に中堅・中小企業を対象としたM&A仲介サービスを提供しています。同社は、譲渡企業の特性や業界情報を分析し、シナジー効果の高い相手先を選定することで、最適なマッチングを実現しています。
具体的には、譲渡企業の受託、企業評価、提案、交渉・契約の調整など、M&Aプロセス全般をサポートしています。また、全国1,021ヶ所の地域M&Aセンター(会計事務所、地方銀行、信用金庫など)と連携したネットワークを活用し、幅広い情報収集とマッチングを可能にしています。
その他の特徴
●社内に法務・会計・税務・PMIなどの専門組織を有し、ワンストップでサービスを提供。
●2024年3月末時点で従業員数1,043人、うち645人がコンサルタント職。
●累計9,000件を超える成約実績を誇り、業界No.1の地位を確立。
2. 経営環境
M&A業界は、少子高齢化や事業承継問題の深刻化に伴い、中堅・中小企業のM&Aニーズが高まっています。日本M&Aセンターは、全国の会計事務所、地方銀行、都市銀行、証券会社との連携を構築し、情報量で他社と一線を画しています。
2025年までに約60万社が黒字廃業の可能性があることから今後60万社のM&Aニーズがあることになります。
事業継承型M&Aの潜在需要は2035年にピークを迎える予定。これから10年もあれば長期投資に値すると個人的には思います。
ポテンシャル市場規模は13.5兆円。13.5兆円という規模は、日本の外食産業、コンビニ業界、自動車関連部品と同程度です。相当な規模ですね。
3. 直近決算短信(2025年3月期2Q)から見る業績概要
2024年10月30日発表の中間期の決算をかくにんします。
3.1. 業績の概要
業績状況
売上高: 1,859億円 (前年同期比 -3.0%)
営業利益: 59.2億円 (-2.9%)
経常利益: 59.9億円 (-1.9%)
親会社株主に帰属する中間純利益: 37.4億円 (+1.0%)
主要因
M&A成約件数が前年同期比42件減少(454件)した一方で、1件あたりの売上高は39.6百万円に向上。
譲渡案件の新規受託件数は前年同期比26.8%増の378件。
3.2. 財務状況
資産総額: 5,530億円 (前期末比 -5.7%)
流動資産の減少が主因 (特に現金および預金の減少)
純資産合計: 4,415億円 (前期末比 +0.4%)
利益剰余金の増加と自己株式の処分が影響。
自己資本比率: 79.7% (前期末: 74.9%)。
3.3. 配当および株主還元
中間配当金: 14円 (うち特別配当3円)。
年間配当予想: 29円 (特別配当6円含む)。
3.4. 業界動向と競争環境
M&A市場は大型案件と地方企業のM&Aが拡大。
同社は「地方創生プロジェクト」に注力し、新規受託と地域密着型の施策を展開。
3.5. 通期業績予想に対しての進捗率は40%
今期も下期偏重となる見込みなので、半期での進捗率40%は心配する必要なはいか。
4. 株主還元
日本M&Aセンターは2024年1月30日に株主優待の廃止と配当性向40%から60%への引き上げを発表。また同時に、2023年5月に続き2回目の自己株式取得の計画も発表。配当性向60%は株主還元バッチリといった感じですが、今後の増配にはやや懐疑的になってしまう水準。増配にはEPSの継続的な上昇が必要です。自己資本比率79.7%とキャッシュリッチなので当面株主還元の原資は大丈夫だとは思いますが。
また、2024年3月期は年間配当総額約73億円、自社株買い2回の合計が140億円で総還元性向200%。その結果、自己資本が減りROE21.8%と上昇することとなった。
*ROE(自己資本利益率)=当期純利益÷自己資本×100
5. 中期経営目標
2025年3月期経常利益予想170億円から3年後の2028年3月期経常利益目標は305億円としています。3年で1.6倍の成長を目指しています。
ちなみに、これまで14期連続の増収となっています。売上高ですが。
営業利益率や純利益率は低下傾向。
5. 今後の課題と注目ポイント
M&A業界は競合他社が多く存在し、差別化が課題となっています。また、平均勤続年数が短いことから、人材の定着率向上も重要な課題です。
また、日本M&AセンターHDの不適切会計の問題が話題となっていました。2021年12月に発覚しましたが、具体的な内容は以下の通りです。
過去約5年間にわたり、83件の不適切な売上高計上が行われていました。
主な不正の手法は、最終契約が完了する前に偽造した契約書の写しを管理システムに登録し、本来よりも早く売上高を計上するというものでした。
この不正の影響で、2021年3月期の純利益を7億3600万円下方修正することになりました。
不正は主に営業部門で行われており、高い成長を掲げる経営陣の要求に応えるためのプレッシャーが背景にあったとされています。
2021年12月6日に常務会で関係する部長9名と取締役営業本部長の処分を決定しましたが、経営陣の対応の遅さも問題視されています。
この問題により、株価は2021年12月20日の3025円から2022年2月14日には1833円まで下落しました。
調査報告書では経営陣の直接的な関与は認められなかったものの、不正を生む環境を作ったとして、経営陣も報酬減額などの処分を受けています。
この不適切会計問題は、日本M&AセンターHDのガバナンスとコンプライアンス体制の脆弱性を露呈させ、業界リーダーとしての信頼性に大きな影響を与えました。
この不適切会計や人材定着率がよくないところがこの企業をちょっと不安に思ってしまう材料となってしまいますね。
6. 現在(2025年1月20日)の株価や指標を確認
株価660.7円
時価総額2,096億円
PER19.4倍
PBR4.8倍
ROE24.4倍
ROA19.4%
自己資本比率79.7%
配当利回り4.4%
配当性向68.0%
配当29円
株価は低迷しています。底値なのかどうかはわかりませんが。
配当利回りは株価の低迷とともに上昇しています。配当利回り5%あたりが上限となるのでしょうか。2025年8月5日の急落時は5.2%とまで上昇しました。
時価総額も株価低迷とともに低下しています。
現在のPER19.4倍。ここ3年の最高PERは29.44、最低PERは16.8なのでPERは低い。
現在のPBR4.8倍。ここ3年の最高PBRは14.78、最低PERは4.19なのでPBRも低い。
これまでの指標を総合すると、割安と判断できます。
7. ただ、ちょっと気になる点がある
それは信用買い残です。
下のグラフで信用買い残と株価をかくにんしてみると、、、
信用買い残は2023年3月で一度増加し、その後2023年8月でさらに増加した。その後は徐々に減少していっている。株価は2023年8月からずっとヨコヨコ。信用買い残の売り圧をこなしながら株価はキープしているのである程度の現物買いが入っていると解釈できる。2024年2月は出来高が2億弱と活況であったが、信用買い残は減少傾向。その後の月ごとの出来高は1億を満たしていなく減少傾向。信用買い残も減少傾向が継続した。
ざっと言えば、信用買い残と出来高が減少傾向で株価がヨコヨコという状態。信用買い残の減少傾向はよい傾向。ただ、不祥事前の信用買い残と比べたら多い。今後も売り圧が続くことが予想できる。出来高も盛り上がりに欠ける。
8. ということで結論としては、
PERやPBR的には株価は割安を示しているが、まだ本気買いする段階ではないかなと個人的には判断します。今後の私の作戦としてはじっと待って株価が下がったら単元未満株で少しづつ買い集めていこうかなといったところ。配当利回り的に株価は底値な感じはするが。念には念を入れて下がったら買うスタイルでいこうかなあ。そして、株価があがらなくても今の高配当をもらいながら待てる。
This is not financial advice. Invest at your own risk.
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