スクリーンショット_2018-11-02_23

【5年目以下療法士さん向け】事例報告の書き方(質問会動画付き)

【ターゲットになる読者層】

研究に興味を持っている5年目以下の療法士さん。

【この記事の特徴】
・事例報告について、思考の手順を解説
・内容は適宜アップデート
・個人が持った疑問に対する質問に随時お答えします
・今後の研究や論文作成に関するオンラインサロンの情報提供

【購入前の留意点】
今後研究に真摯に取り組む方に読んでいただきたいと思っているのと、具体的な質問にも応えていく予定なので、少し高めの料金設定をさせてもらっています。ですので、「研究や論文作成の簡単な相談をしたい」という志の方がお買い上げになるようにお願いします。質問機能を利用しなけらば、あまり有意義なシステムとは思わないので。

【目次】
1. 事例報告について
2. 何について事例報告を行うのか?
3. 事例報告を書くまでに行うこと
4. 実際に事例報告を書く
①事例報告の種類を知ろう
②ガイドラインの存在を知ろう
③引用文献について
5. 事例報告の倫理的観点について

1. 事例報告について

 事例報告とは,公衆衛生学の観点から言えば,非常にエビデンスが低い研究方法に当たります。従って、事例報告の結果によって、治療やアプローチの優先順位が決まることなどは絶対にあり得ません。
ただし、今世界中に存在するエビデンスが高い治療やアプローチにしても最初は、「事例報告」からスタートしているわけです。つまり、「最先端は事例報告にある」という側面も理解しておく必要があります。ですから、将来的に「研究をしていきたい」と考えている若い方々には、まず「事例報告」を経験してもらい、そこからステップアップを図る方法が一番スタンダードであると考えています。
 また、事例報告は「将来的に研究者を目指す人」以外にも、利得のある研究方法です。例えば、臨床家が「自らの治療やアプローチに疑問を持つ」ことを推進してくれます。例えば、Aという治療法を自分が得意としているとして、世の中では対象者の病態を鑑みるとBの治療法が推奨されているとします。最初の一週間は自分の得意なAという手法を用い、次の一週間にBという手法を使用したとしましょう。結果、AとBの期間の前後でアウトカムを取得し、比較した際にどちらの方法が対象者に適していたのか?という手続きをとることできます。
 これは、事例報告の手法を応用した「自らの臨床の検証方法の一つ」と考えることができるでしょう。このように事例報告は、実臨床の中でも役に立つものですし、将来の世の中を変える知識となるような源にもなると考えられています。本noteでは、事例報告について、ガイドラインの知識なども踏まえつつ、どのように企画し、書いていくかについて、みなさんと知識を共有したいと思っています。
 「私は研究しないから関係ないかな…」と思っている方、人ごとではありません。このような「自らの能力や思考」の検証方法をしっかりと理解しておかなければ、あっという間に、「自分本位なリハビリテーション」つまり、「療法士中心のリハビリテーション」に陥る危険性は全ての人が孕んでいるのですから。

2. 何について事例報告を行うのか?

 何について事例報告を行うのか、これが事例報告を成功させるための90%以上を占めていると言っても過言ではありません。「え??そんなに??」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、結局研究というものは、「世の中が抱えている疑問も解決する」という手段なわけです。
ですので、自分本位の疑問だけではなく、「大多数の他者が抱えている疑問」も解決する必要があります。ですから、まずは世の中でどのようなことが疑問として持たれていて、それを解決するための「新規性を持つ何か」を自らの中で仮説立てていく作業が必要になります。よって、自分が抱えている疑問が、世の中でも共有されており、その疑問の解決に価値があるのかどうか?ということをマーケティングする必要があります。
 商品開発でよく「自分が欲しいものを作れば売れる」というようなコピーもあるとは思いますが、それだけでは自分本位なわけです。研究者中心の研究です。少なくとも、その疑問の解決に価値があるのかを前もってリサーチしておくことで、より自らの研究の意義を認知することができるので、必ずしておくべきだと思います。

3. 事例報告を書くまでに行うこと

 そこで、一番間違った事例報告の動機に関する例をここで一つ上げておこうと思います。例えば、事例を見る中で色々と考え(仮説をめぐらし)、対象者の方の回復が得られた例があったとしましょう。で、大体の場合は、「これを論文にまとめよう」とここから後ろ向きに事例をまとめることが多いと思います。これは、事例報告というよりは「実践報告」に近い形と考えるべきだと考えられています。つまり、言葉は悪いですが、「いきあたりばったりやってみて、たまたま結果がついてきた事例」をまとめるという解釈が近いような気がします。
ですから、こう言った事例を経験した際には、「ここが事例報告の始まり」になると考えたほうがいいかもしれません。つまり、この時点で、良好な結果を示すことができた事例から、その対象者が持つ病態の解釈や、世の中でどのような取り組みがなされてきたのかをまず調べる機会が生じます。ここで、その疾患や病態に対する治療やアプローチの歴史を学ぶことが始まるわけです。
さて、実際に学んでいくと、「あ、今回の自分が考えた仮説はすでに過去の賢い人たちによって検証されていたな」と気づく場合がほとんどです。ですから、まず、「治療やアプローチがうまく言ったな」と思った対象者の方の経過を、そこでまとめてしまうのではなく、そこを起点として、徹底的にその疾患や病態に対する「歴史」を調べましょう。
 その上で、今までの治療やアプローチの歴史を学び、今までのものと比較しても新規性があったアプローチであるならば、次回類似の事例を担当する際に、前回の事例を診た際にタイムリーに立てた仮説を前向きに設定し、その仮説に応じた介入を展開し、その結果を介入前後で「エビデンスが確立されたアウトカム」で示すことを意識するといいでしょう。
新規性にも色々とあります。「アジア人や日本人以外の人種で効果が検討されているだけ」という治療やアプローチならば、「日本人を対象に行った」ということだけでも新規性になりますし、従来のアプローチに「日本の診療文化や背景」を配慮したというものでも新規性になり得ます。ただし、論文として意味のある新規性としては、仮説形成の上で「従来法をそれに従いこのように修正した」などの新規性を提示した結果、従来法よりも明らかに良好な結果が出た際、より世の中から求められる研究となることは間違いありません。
 さて、歴史の調べ方は、その疾患や病態に対するアプローチがメジャーであるものならば、「システマティックレビュー・メタアナリシス」からの孫引きをお勧めします。逆に、最も効率の悪い方法が「キーワード検索」だと思います。
ただ、事例報告を書くまでに行うことで、一点だけ例外があります。それは、「疾患自体が稀で、リハビリテーション関係の報告が皆無である場合」です。これも今までかなりの物事がやり尽くされてきているので、相当レアケースですが、無きにしもあらずというところです。ですので、そういう対象者へのアプローチが良好であった場合は、背景の歴史を調べた上で、「皆無」ということを確認し、執筆することも良いと思います。

ここから先は

19,870字 / 4画像
この記事のみ ¥ 800

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?