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BIOGRAPHY 2

#523  basic data

まさかの初日にやるコトがなくなった。

とゆうか、やるべきコトを終えた。

なら旅立ちの日までこの人に尽くそう、そう思った。

仕事の送迎はいつもやってるし家事もしてる、じゃあ他に何ができるのだろうか、そんなコトを考えていたらリクエストがきた。 

もう充分だから自分の準備をして、と。

準備ったって引っ越し当日に何もかも始める自分にとってはやるコトなんてないよと思った。

オレにできる準備といったらこの人に来週来る別れの日に笑って見送られるくらいかな。

人前で泣くのはありえないと思ってオレは1週間早く家を出た。

あの時、最終日まで残っていたらきっと決意が揺らいだ気がする。

気分は堺正章のさらば恋人。

まっ正直な恋人じゃなかったけど、カテゴライズで言えばそれ以上の人との別れはキツいかと思えばそうでもなかった。

ドライに割り切ったというより、アメリカでまだ見ぬ景色にワクワクが止まらなかったから。

こうやって書いてると、決意が揺らいだのか新しい旅路に興奮してたのか未だに分からなくなる。

とにかく今以上に、良く言えばポジティブ、悪く言えば何も考えてなかったオレは旅立ちの日を心待ちにしていた。

渡米初日

着いたのは日本から直行のロサンゼルス

L.A.

兎にも角にも目指す場所は1つしかない。

ロックの頂点、ハリウッドロックウォーク。

ロックウォーク着いた!

見て回った!

さほど面白くない!

なんでやねん!マジでそう言った。

英語話す前に関西弁話すとは思わなかったよ。

ここにくれば何か降りてきた様な神秘的な体験をできると思ってたのに現実は大したことないね。

オレはアメリカに来る前に2つの切り札を用意していた。

せっせと貯めた、といっても前述の人から1年半かけてもらっていたお小遣い。

それを投資していたんだ。

それは共同経営とゆう名の後に金のなる木に。

もう一つは宿。

宿とは名ばかりで小さなトレーラーハウス。

1つ目の切り札は数年成果がでなかった。

そもそも、人にブン投げた様な資産運用、上手くいくわけない。

2つ目の切り札は初日から大活躍した。

売れねぇミュージシャンみたいな気分をどっぷり味合わせてくれて嬉しかった。

そんなこんなで何も起きない日が続き大事件は突然起きた。

まさかのトレーラーハウス撤去!

リトルサンシャインアベニューに堂々と停めてりゃそうなるか。

今日からホームレス。

成り上がりのスタートにしてはロックだな、なんて考えてた。

家がねぇ

カネもねぇ

頼れる人もいねぇ

三重苦とはこのこと。

でも、そんなもんは東京に上京して来た時と変わらない。

変わるとすれば言葉が通じないコトくらい。

小せえ小せえなんてタカをくくってた矢先、ある大発見を2つした。

言葉の壁はかなりデカい!

音楽は国境を越えない!

そりゃそーだ。

人間は話せば分かる、でも話す手段がねぇ。

音楽は生まれも文化も違うヤツをも熱狂させる、でもぬるま湯に浸かりきったオレの音楽なんてクソみたいなモンは聞いてるとアタマ撃ち抜きたくなる。

異国の地で味わったつまずきは泣けてくるよ。

それでも泣かなかったのはアメリカが、アメリカにいるオレが心安らかだったから。

理由はいまでも分からない。

ホントに感覚。

きっとオレの魂はこの地で産まれ、沖縄で産まれた肉体に入ったんだとそう思った。

だから何とかやっていけるそんな雰囲気を毎日感じてた。

そこからは毎日必死だった。

この歳にしてやったこともない仕事なんてできない。

とゆーか、したくない。

どうせ日本で売れないならアメリカで売れない方がマシ、そんな思いで来たのだから忙しくてもキツくても天国だった。

最初に始めたのはハコ探し。

1度オレのバフォーマンスを見せりゃどうにでもなる。

そのキモチを頼りにL.A.中を歩き回った。

正確に言うとスケボーで滑りまくった。

ようやく好きに使えと言ってくれたハコを見付けた時はホームレス生活が1週間くらいたった時だった。

ガーリックシュリンプとテキーラとマリファナのニオイでごった返す小さなライブハウス。

入った瞬間、目に飛び込んで来たのは従業員の乱交パーティー。

アジア人と寝てみたかったの、とラリった目で言ってくるオネーさんを尻目にオーナーに呼ばれた一室でオレは話を聞くんだけど、話なんて耳に入らない。

金髪ギャルの喘ぎ声すら耳に入らない。

オレはオーナーの後ろにある壁に書かれたロニー・ジェームス・ディオのサインに心を奪われてた。

ディオがここでライブをやったのか!?

その質問をオーナーに問いかけると彼の言葉は通訳越しにこう聞こえた。

何十年も前にやってたよ。

ただ、アイツは売れたらココに顔を出さなくなった。

恩知らずなヤツだ。

と。

そりゃそーだ。

こんなトコ、他にやるトコありゃカネ貰っても来やしねぇよ。

ディオが恩知らずなんじゃねぇ、アンタがアホなんだ。

オレだってディオのサイン見なけりゃアジア人好きのオネーさん連れて帰ってたわ。

そんなコトを思ったアメリカ1年目の夏。

〜〜〜〜〜

日本での生活を捨てアメリカに渡ったオレ。

次回はヤラれたらヤリ返す、無限返しだ!のブロックを投稿します。

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