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寿司と愛③~季節外れの松茸~

チーン
チーン
チーン


ななんみょーほうれんげきょーーんみょーほうれんげきょーー


親父はあっけなく死んだ


こんな簡単に人って死ぬんだ


そう高校生にして初めて思った


葬式中も


俺は涙が出なかった


どっちかというと


まだオヤジの死を受け入れられてない自分がいるから


ただ


俺の人生が変わったのは


この葬式の日からだった

オヤジが経営していた寿司屋


銀座 鮨 さえき田は


寿司を好むものだったら誰もが知ってる


8年連続ミシュラン3つ星の店だ


ちなみにミシュランガイド2020で3つ星を取っている寿司屋は


さえき田を除くと


「銀座よしたけ」


たった一店舗


俺のオヤジは紛れもなく寿司界の財産であり


天才職人であった


当然


オヤジの葬式には


日本中から


有名店が来ていた


【北九州のドン】
北九州小倉 
寿司天 
天田親方


【岡山の宝】
岡山県赤磐市
寿司処ひさ山 
久山親方


【北のラストエンペラー】
北海道札幌市
鮨 二幸
久能親方




俺でさえ雑誌やインスタで見たことがある寿司界のスター達


こんなメンバーが一堂に会する事なんてこれが最初で最後であろう


それだけオヤジは愛されていたし、尊敬されていた


もちろん


オヤジと同じ


銀座の寿司屋さんもたくさん来ていた


銀座の中心部だけでも


現在150件以上の寿司屋があるが


その大半が集まってきていたのだが

葬式が終わった直後
そこで事件が起こった


「おい、見ろ、あれがあの親方のバカ息子だぞ」

「あのバカ息子のせいで佐伯田親方はこんなに早くなくなっちゃんだよなぁ!寿司界の宝がよぉ!!」

葬式が終わった途端


1人でタバコを吸ってる俺にわざと聞こえるように話す奴ら


「まあ、いいじゃないですか、あの寿司屋、佐伯田親方しか寿司握れませんよね?
二番手は無能、そして息子はチンピラのクソガキですからねカッカッカ」


「そうだな!ライバルが一個つぶれてくれたのは我々にもラッキーなことだな!!グワファッファッファ」


そんなことを言い始めたのである。


俺も

堪忍袋の緒が切れてしまった


「てめえら!!何言ってやがる!!!クソジジイが!ぶっ殺しやる!!」


俺は一目散に殴りかかった


もちろん勝てるわけがない


相手は50人以上


ボコボコにされた


殴る蹴るが10分以上


歯は全部抜け


着ていた喪服は引き裂かれハーフパンツになった


全身が痛い


どこかが切れて


血の海ができた


「おい、クソガキ、寿司をなめんじゃねえぞ?
おいお前らカミソリもってこい!!!」

そういって手足を抑えられ
頭の頂点をかみそりで剃られ


なんと頭頂部だけスキンヘッドにさせられてしまった

「はっはっはっはっは!みろよこいつ!!カッパじゃねえかよ!
お前みたいなチンピラはよお!
かっぱ寿司でもくってりゃいいんだよ!
二度と俺らの前に出てくるんじゃねえぞ?

小僧が!!


おい俺の股間のキュウリでもしゃぶるか?河童くんよ!グワファッファッファ」



そういって無理やり口に死んだイカのように臭い欲棒をねじ込まれ


イラマチオされた


屈辱的だった


頭はかっぱ、そして口には初めて男性器をつっこまれ

最後はガンシャまでされたのだ

あたたかく、死ぬほどイカ臭いmilkをぶっかけられたのだ


屈辱的だった、人生で一番



ガンシャした男は寿司業界で最も巨大なグループ


「鮨 巧-たくみ-」の創業者 中川であった


周りはさすがにやりすぎでは、という表情であったが


鮨会の有力者である中川を誰も止めることは出来なかった

「くそ!くそ!くそ!」
俺はもがき、反撃しようと立ち上がったが

次第に意識は遠のき


俺は病院に運ばれた













その日以来


毎日顔を洗うのと同じようように


かみそりで頭を剃るようになった


それから俺の寿司人生が始まった


あのクソジジイの


季節外れの松茸の味は一生忘れない


(つづく)

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