寿司と愛⑪~小手返し~
三崎 仁基
久十兵衛史上
最も若く1番手の握り手となった男
現在35歳
1985年生まれ
埼玉県出身
初めて喧嘩をしたのは
保育園の時
三崎は当時5歳、相手は17歳の暴走族のヘッド
持っていたアイスピックで片目を指し
失明をさせ問題に
保育園を強制退園させられた
小学校にあがるころには
常にポケットには
100万円の札束を輪ゴムでくくっていれ
もう片っぽのポケットには
スタンガンを持っていた
「見たこともない悪」
全国的に裏社会では名前が広まった
そして
初めて人を殺めたのは小1だが
証拠不十分で釈放
小2で街の売人
小6で埼玉川越のクラブでオーガナイズを始める
小学校から中学校の間で
68回の転校をさせられるが
その後格闘技に目覚め
高校進学を決意
すでにこの時には貯金は20億
そして
ボクシング部に入部
その時スポーツ・格闘技としての
ボクシングを初めてしたものの
入部初日
部員、ギャラリー、ご父兄
全員半殺し
当時コーチであった
太平洋王者ですら
意識不明の重体にする
サイレントキラーアニマル~沈黙の殺人猛獣~
ボクシング界では一瞬で彼の名前は広まった
高校1年生の終わりに学校をやめプロボクサーとなり
世界チャンピオンも夢ではない
そう三崎は誰からも囁かれていた
そんな時に
不運が起こる
三崎が当時交際した彼女が
三崎に復讐をたくらむ連中らに
捕まり、強姦されるという事件が起きた
それを知った
三崎は
世界チャンプへの切符を自らやぶり
たった一人で
たった1日で
彼女を犯した
犯人がいる街の悪を全員血祭に上げた
884人のワルの内4人死亡、653人失明、112人半身不随
新聞、ニュースにも載った
三崎は
両手の拳と
拳銃、ナイフ、ボーガン、スラッパーだけで
そこまでの殺戮を繰り返したのだ
それが終わったころには
両腕骨折
両足骨折
両半月板消滅
歩けず、立ち上がれず
自身も死ぬ直前であった
まるで壊れたピエロだ‥
第一発見者は壊れた三崎を見てそう告げた
そんな希代の悪である
三崎がどうして
今は寿司を握っているか
3年前に懲役から釈放されたその日
最初に釈放を待っていた
友人が連れて行ってくれた
地元の回転寿司が
あまりにもうまく
涙を流すほど感動し
全て、黒い事から足を洗い
寿司に人生を賭けると決意したからである
そして、四六時中
24時間
寿司に向き合う事を決め
久十兵衛で働く事になったのだ
そんな三崎の握りの所作は誰よりも美しかった
佐伯田の左手での本手返しに対して
三崎の握りも周囲を魅了した
まるでシャリが踊っているかのようなスピードで
シャリを成型する
三崎の握りは小手返しだ
そして、
握ってる最中に必ず目を閉じ
想いを込める
そのしぐさは
現在、日本で一番の実力とも言われる
日本橋蛎殻町
杉山親方を彷彿させた
審査員である
今田親方も真剣なマナコで
三崎の所作を見つめる
三崎の1巻目は
佐伯田優星同様
中トロ
美しい切り付けにバランスのいいシャリ
審査員の今田が
口に入れた瞬間に
マグロの融点に触れ
シャリを包み込み
すぐに旨味を残しとけていくネタ
「うん、うまいね。口の中で一粒一粒がふんわりとほどけた」
佐伯田優星のとき同様に
久十兵衛 総料理長
今田 清次郎は
三崎にも賞賛の声をあげる
『親方が何かに対してほめた事‥初めて聞いた‥親方でもそんな気持ちを持つことはあるのか‥』
久十兵衛各店舗から集まった
ギャラリーとして決戦を見ている板前やスタッフは
初めての今田 清次郎が見せた賛美に啞然とし
固唾をのむ
2人の高レベルな決戦に
刹那すらも目が離せない
(つづく)
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