寿司と愛⑭~予約困難~
「おい!聞いたか久十兵衛の二番手に新しい小僧が入ったみたいだぞ」
「え?今田のオヤジが雇ったのか?」
「さえき田親方の息子らしいぜ」
「聞いた事ないぞ?さえき田親方の下には握れる奴がいなかったはずだ」
豊洲市場はあの日以来
佐伯田優星の話題で持ち切りとなった
そして
寿司の世界は狭い
すぐに周りの銀座中、いや、
日本中、いや世界中の寿司屋やフーディーの間で
「久十兵衛にとんでもない職人がいる」
との噂が広がった
朝から晩まで
休みなく働く佐伯田優星は
高校を中退し
その時はもう18歳になっていた
佐伯田優星の握りの所作は大変美しかった。
そして、
毎朝頭とヒゲを剃り
豊洲に親方と向かう日々
優星は非常に疲弊はしていたものの
充実感に溢れていた。
それから数か月
いつの間にか
佐伯田優星の席の予約は
1年後まで一杯となった。
順風満帆に見える日々
その裏には恐ろしいまでの努力と涙が隠されてる
(つづく)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?