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ポイント生活・アメリカと日本の違い

前回はアメリカ人と日本人のお金に対する考え方や、ファイナンシャルリテラシーの向上が今後の日本の成長に重要かということについて解説したところ様々な人からご意見を頂き改めてお金に対する関心の高さを感じました。

そこで今回はもう少し日常生活に近いファイナンシャルリテラシーの事例として、日本とアメリカのポイントサービスについて比較してみたいと思います。

日本人はポイントが大好き

日本へ帰国してコンビニへ寄った時にいつも驚くのは、レジに貼ってあるT-Pointや楽天ポイントなどのポイントの種類の多さです。POS端末でもガソリンスタンドでも、常に会計を終わらせる前にポイントカードの有無を聞かれるのには正直うんざりすることもあります。ですがきっとこの記事を読んでいられる方もいくつか財布にポイントカードが入っていることと思います。

実際少し調べただけで、日本のポイントサービス市場は2兆円間近という記事まで出てきました。

この記事では銀行にお金を預けても利息はほとんどつかないし、賃金も上がらないからポイントは生活防御に欠かせないと書かれています。同時に次の記事にあるように、注意しないとポイントの罠にハマって結局お金が貯まらないという側面もあります。

かく言う私も25年前にアメリカ・シリコンバレーへ移住するまでは、セゾンの年会費無料カードで永久不滅ポイントを貯めたりレコードやCD買う時にはCCCカード(後にT-Pointとなる)でポイントを貯めたりしてました。

アメリカのポイント事情

さて、ポイントが乱立している日本と比べ、アメリカでは主にエアライン系、ホテル系、そしてクレジットカード系とポイントの種類が分かれています。また企業間がアライアンスを組んでいることが多く、相互にポイントを移行したりできるところもありますが、日本ほど複雑ではないという印象です。

航空会社のマイレージ

アメリカでポイントと言えば、まず初めに航空会社のマイレージが思い浮かびます。私も90年代半ばにアメリカ留学中、日本への帰省にはNorthwest(その後Deltaと統合)やUS Air(Unitedと統合)などを利用した際にマイルを貯め始めたのがアメリカでのポイント生活の始まりでした。

当時日本ではまだマイレージについて知ってる人も少なく、一度だけANAで帰国した際にカスタマーサービスの人に問い合わせても、ろくに相手にされなかったことを思い出します。

そんなアメリカでは航空会社同士の争いが激化するのに伴い数々の倒産や合併が前述の通り行われ、現在ではOne World, Star Alliance, Sky Teamという3つの同盟に各航空会社が分かれている状況です。日本でもポイ活されている方の間ではJALは赤組(One World)、ANAは青組(Star Alliance)と呼ばれているのでこの二つについてはご存知の方も多いかもしれませんが、世界的にはDeltaやAir Franceが入っているSky Teamも合わせた3つのアライアンスがそれぞれ顧客の囲い込みに必死になっています。

主要な航空会社は3つのアライアンスに分かれている

ホテルの宿泊ポイント

航空会社と同じように、アメリカではホテルの宿泊ポイントによる囲い込みも熾烈になっています。ただしホテルの場合航空会社のようなアライアンスは存在せず、あくまでグループ内のホテルで共通のポイントを貯める感じになっています。中でも3大ホテルチェーンである、マリオット、ヒルトン、ハイアットのポイントはアメリカで生活していると良く目にします。

この点日本はまだまだOTA(Expediaや楽天トラベルなどのオンライン旅行代理店)が幅を利かせているのか、そこまでホテル間の競争が行われていないような印象がありますがどうでしょうか?日本でのホテルポイントについて検索しても、マリオットやヒルトンなど米系ホテルのポイントが上位を占めているように思います。

クレジットカードのポイント

最後に近年アメリカで一番競争が激しくなってきているのがクレジットカードのポイント競争です。以下の記事に書かれているよう、国民の約3割がクレジットカードのリボ払いで$1000以上の借金があるというほど、もともとアメリカはクレジットカード大国なのですが、クレジットカードのポイントについてはここ10年ほどで大きく様変わりしました。

クレジットカードのポイントシステム自体は1990年代から存在しましたが、2010年頃から各社が新しい顧客の取り込みにポイントを利用することにAMEX, Citi, Chaseの大手3社が本腰を入れ始めました。

特にChaseが2016年発表したChase Sapphire Reserveは年会費が当時$450と高かったのにも関わらず、入会ボーナスが他社の倍近い100,000ポイントだったことや、メタルカードで名前がエッチングされているなどの差別化を図ったことによって、プレミアカード戦争が本格化しました。

その後各社追従し、CitiやAMEXそして近年ではCapital Oneが同じように桁違いの入会ボーナスと引き換えに年会費が高いプレミアカードを次々と市場へ投入しています。

日米比較・ポイント換算率

アメリカのポイントやマイル事情が分かったところで、日本とアメリカのポイントを比べてどちらが本当に得なのか検証してみたいと思います。

私は最近の日本のポイント事情についてはあまり詳しくはありませんが、ざっと調べた感じの印象では日本ではまだまだ積算率(ポイントの貯まる率)に注目する人が多く、還元率(ポイントを消費する率)にはそれほど焦点が当てられておらず、入会ボーナスもアメリカほど過激なものはないように思えます。

ポイントからマイルの還元率

例えば日本でメジャーと言われているモッピーというポイントサービスでは貯めたポイントは1p=1円で現金化できるところはアメリカのキャッシュバックカードと同じ還元率ですが、マイルに変える場合50%の率で変換されるみたいです。

この記事では15000pを7500マイルに変換して、2万円以上する東京→福岡の飛行機チケットをマイルで取れば、ポイントをキャッシュバックするよりお得ということが書かれています。そのこと自体は間違っていないのですが、そもそもアメリカでポイ活やる場合には1pを50%でマイルに変換するということはあり得ません。

アメリカのクレジットカードで貯まるポイントは、各クレジットカード会社が提携している航空マイレージプログラムに通常1:1で移行できます。例えばアメリカ発行のAMEXで貯まるMembership Reward (MR)ポイントは、ANAマイレージクラブに1:1で移せます。

そこで日本発行のAMEXも調べてみたところ、日本独自のメンバーシップリワードプラスというオプション(年会費3300円)に入った上でメンバーシップ・リワード ANAコース(年会費5500円)にも入っていればANAには1:1で移せるようになるみたいです。しかし入っていないと概ねどの航空会社でも50%のようで、JALのマイルに移すには3300円払ってたとしても元々のポイントの40%にしか変換できません(2500ポイントが1000マイル)。

クレジットカード入会ボーナス

前述の通り、アメリカではクレジットカード発行会社が熾烈な顧客獲得争いをしているため、入会ボーナスも100,000ポイント(キャッシュバックだと$1000)を超えるようなキャンペーンも珍しくありません。しかし日本のクレジットカード入会ボーナスは、平均して1万円から2万円相当のポイントがもらえるというものが多いようです。

さらに日米の比較がしやすいAMEXの入会ボーナスを比べみたところ、日本のゴールドカードは本記事執筆時で年会費3万円ほどで入会ボーナスは37,000ポイント(41000と書かれているのはカード利用時に付与される通常ポイントも含む)、アメリカのゴールドカードは年会費$250で入会ボーナスは90,000ポイントと、特典や細かい規約の違いがあるとは言え同じクラスのカードでこれほど大きな差があることに衝撃を覚えます。

日本のアメックス・ゴールドの入会ボーナスは37,000ポイント
アメリカのアメックス・ゴールドの入会ボーナスは90,000ポイント

またアメリカのカードではレストランやスーパーでの利用で4%ポイントが付与されるのに加え、毎月Uber Eatsの利用額から$10キャッシュバックがもらえます。

まとめ

日本でもファイナンシャルリテラシーの高い人は、ポイントやマイルを貯めて上手くやりくりされているのは今回改めて日本の陸マイラーやポイ活マスターの記事を読んで分かりました。

ただ同時にアメリカほどポイ活に費やす費用対効果が低いなとも感じました。そこで今後ポイントサービス市場がどう拡大していくかの参考になるかと思い、アメリカのポイ活の現状と比較してみました。マイレージもアメリカで定着してから約5年以上経ってから日本でも導入され始めたことを考えると、クレジットカードやポイントシステムについても今後より活発な競争が始まることが予想できると思います。


おまけ

ちなみにアメリカ在住日本人向けに、アメリカでのポイントについて情報交換するグループやホームページを昨年作りました。facebookでは既に3000人以上のメンバーが登録されており、初心者が上級者に気軽に質問できるコミュニティーに育っているのでもしご興味のある方は是非参加してみてください!



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