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恋愛遍歴 1度だけ女の子と付き合った話①
私は異性愛者、ノンケ、ストレート。色々な言い方があるけど、世間一般的に普通とされがちな恋愛をする。
初めて好きになったのは幼稚園の頃。しょうたくん。
野球とワンピースが好きだったらしい。
マグカップをプレゼントしたことがあるのは覚えてるけど正直顔は覚えていない。
次は小学生の頃。私はよく言えば恋多き乙女だった。
実際のところは理想を理想のままで留めておくタイプ。
行動することも無くコイワズライに耽けるだけのタイプ。
優しくされてその気になって、彼が私を助ける妄想をして、思いを伝えるなんて考えは微塵もなくて、鼻をほじってるところを見ては幻滅して。
そういうタイプ。
そんな私の簡単な好きが長く続いた男の子がいた。
ゆうなくん。女の子に付いていてもおかしくないような可愛らしい名前に可愛らしい容姿。
肌は学年でいちばん白くて儚げで、でもちゃんとイナズマイレブンが好きな男の子。
一目惚れだった。人目を気にするなんて考えを持っていなかった私はどこへでも彼を追いかけた。
言葉では 好きじゃない。好きな人なんて居ない。
それでもきっと学年みんなにバレていたと思う。
小学6年生になったとき、一人の女の子に泣かれた。
その子もゆうなくんが好きだったらしい。
私はずっと邪魔だったらしい。でも怒るべきは私にじゃないと思う。
学年でいちばん綺麗なゆうなくんには学年でいちばん綺麗な彼女がいたから。
それからはぐっと距離を置いた。でも、中学を卒業するまで私はずっと彼が好きだった。
高校に入ってからは私の目移りし続けるような恋心は自然にぴたりと止んだ。
初めて出会う同級生達の顔をまじまじと見ながら、中学はレベルが高かったんだななんて思った。言葉にこそ出さないけど人の顔を値踏みするような嫌な奴だったと思う。
だから好かれることも無かった。本当に恋愛のない青春時代を過した。
私は生まれつき重たい一重で、その頃の私は可愛くなることを諦めた。
思い切って校則違反。そこら辺の男の子よりも短く3ミリでツーブロにして流行ってたマッシュにした。
コロナ禍でマスクが必須だったからそれだけでいわゆる"どしたんはなしきこか"になった。
ボーイッシュとして生きていくのはとても楽だった。
いやまあ、少々トイレに行きづらかったりはしたけど。
でも可愛いは言われない人生だったけどかっこいいって言われるのは簡単で、褒められ慣れていないからそれだけでも気分は良かった。
ある時、詳しく言うとあれは文化祭が終わって代休の次の朝、下駄箱に手紙が入ってた。
ハートのシールで止めてある。ラブレターだ!
私はこんな見た目だけど女の子。だからてっきり男の子からだと思って、物好きもいるんだなって。
でも確かに良く考えれば高校生男の子はハートのシールなんか貼らないのかもね。
誰にも見つからないようにブレザーの内側に隠してそのままトイレに向かった。
ドキドキというかソワソワというかフワフワみたいなそんな気持ちだった。言葉に出来ないけどあの心地よくも気味の悪い感情はよく覚えている。
開くと、とっても丸くて可愛い字が並んでいた。
女の子からだった。
驚きすぎて1周目は何も入ってこなかった。予鈴がなって急いでしまって教室に駆け込んだ。
思ってたのとは違ったけど、何も手につかない1日をすごした。
たこすけ先輩へ
急なお手紙でびっくりさせてすみません。
もっとびっくりさせてしまいそうですがこれはラブレターです。女に好かれるなんて気持ち悪いですよね。ごめんなさい。でもどうしても伝えたくて…
みたいな書き出しで始まった。衝撃だった。
ほんとに女の子からで、ほんとにラブレターだった。
元から私のことはボーイッシュで目立つから知ってくれていて、よくすれ違っていたみたい。今回文化祭で司会をしたのをきっかけに気になってくれたらしかった。
学年もクラスも名前も、何も知れなかった。
彼女はレズビアンだということをクラスでは隠しているらしかった。
馬鹿な私は全部のクラスを回ってこれ書いてくれた人ー!って聞いて回りたかったけど。
でも名探偵コナンの映画だけは全部見てる私は頭が冴えていた。後輩からだって気づいたんだ。先輩って書いてあったから。私は2年生。つまり差し出し主は1年生。1年生は8クラス。廊下で普段すれ違居やすいのは塔がおなじA〜C組だろう。
そう、私は差し出し主が知りたかった。
イタズラを疑うわけでも、女の子からの恋心を気味悪がるでもなく、純粋に人からの好きが初めてで嬉しかった。
答えられるかは分からなかったけどとにかく誰なのか知りたくて、とにかくありがとうが伝えたかった。
それと、素直な気持ちに気持ち悪いですよねって書かせてしまったことがすごく申し訳なくて、ただその子を肯定したかった。ガキなりの正義感だった。生徒会役員だったしね。
その子は意外と早く判明した。知り合いの後輩がいつも一緒にいるグループの子だった。
その後輩、はるかが彼女から私の名前と靴箱の場所を教えて欲しいって頼まれてたみたい。
私ははるかとしょっちゅう一緒に帰るから靴箱の位置もそりゃあ知ってて、点と点が線になった感覚だった。
はるかに頼んで放課後の教室に彼女を呼び出した。