小豆島の山岳霊場 その1 西之瀧
小豆島には四国88ヶ所霊場とは別に、島内に88ヶ所の霊場があり、毎年たくさんのお遍路さんが島を訪れる。
僕が子どもの頃(もう45年くらい前になりますが・・・)には、今よりもたくさんのお遍路さんが島を訪れていて、実家のすぐ横のお寺からお遍路さんの鈴の音が聞こえると、あわてて家を飛び出し、「お遍路さん、豆ちょうだーい」と駆け寄っては、お菓子をもらっていたものだ。
(お接待ではなく、逆接待(笑)。そして、その頃は、お遍路さんの携帯食は煎り豆から飴やチョコなどのお菓子に変わっていたので、いただくのは豆ではなくお菓子だった。たまーに、おこづかいもらっちゃったり・・・)
島88ヶ所霊場の中には山岳霊場と呼ばれる、その昔、山伏などの行場(修行の場)であった険しい岩場や洞窟などに建てられた小さなお寺が何か所か存在する。
そういう山岳霊場には今でも厳かで静謐な空気が漂っており、かつての修験者が行っていたであろう、火とともに祈りをささげる「護摩炊き」を体験することもできる。
そんな島の山岳霊場の中で、僕にとって大切な場所となっているのが第42番札所の西之瀧(にしのたき)だ。
悩んだときや、気持ちを落ち着かせたいとき、何かを始める節目の時など、何かあれば、いや、何もなくてもふと訪れたくなるそんなお寺。
僕が暮らしている町の背後にそばだつ大麻山という山にある。(ふもとから山を見上げると、頂上付近の岩場に小さな建物(お寺)があるを見つけることができる)
結構急なつづら折りの細い登り道を、対向車にドキドキしながら車で一気に登ること約15分。(歩いて登ると約1時間)
車を降りると目の前には穏やかな瀬戸内海と四国香川の山並みが広がっていて、その素晴らしい風景に、思わず、おー!と声をあげてしまうこと間違いなし。
そこから階段をのぼり、山門をくぐると、周りの空気がガラリと変わる。ヒンヤリと厳かな雰囲気に、下界とは異なる世界へ足を踏み入れたような感覚になる。
本堂にはご本尊の「十一面観世音菩薩」がまつられているのだが、このご本尊は弘法大師(空海)がこの山の石を刻んで作ったという秘仏で、古来より33年に一度開帳される。(僕はまだ見たことがない)
「オン マカキャロニカ ソワカ」
本堂でご本尊へのご真言を唱えたら、そこから奥へと続く洞窟へと進む。
洞窟の一番奥には龍神がまつられていて、年中涸れることなく水が湧き出ている。(コンコンと湧いているというよりも、ゆっくりと岩から染み出てきているという感じですが)
伝説によると、弘法大師が島を訪れた際、この山に住む龍に村人が苦しめられているのを聞き、山の石で壺を作り、龍を退治し、その壺に封じ込め、改心させたのちに八大龍王という神位を授けたそうだ。それ以来、その龍が西之瀧から里の人々を守っているという。
たしかに、この洞窟の中には今でも龍が住んでいるような神秘的な空気を感じる。
洞窟をぬけ外へ出ると、一段高いところにお堂がある。
ここは護摩堂。中には不動明王がまつられており、火を焚き、祈りをささげる場となっている。
おじゅっさん(住職さん)にお願いすれば、願い事を記した護摩木と呼ばれる木の札を護摩壇で燃やしてもらえ、御祈祷をしていただくこともできる。(基本、預かりで、別の日に祈祷されるが、前もって予約しておけばその場で護摩炊きをしてもらえることもある)
この護摩焚き、毎月28日(お不動さんの縁日)の早朝6時より行われている。
ちなみに誰でも参加は可能なのだが、けっこうな修行だ。
約1時間もの間、おじゅっさんが護摩壇で護摩木を焚くのに合わせ、「ナウマクサンマンダ バザラダン センダンマカロシヤダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン」という、仏様の中では一番長いお不動さんのご真言を一心不乱に唱え続けるというもの。
夏場、護摩壇の近くに座ろうものなら、炎の熱さと煙にいぶされ、途中から意識が朦朧としてくるほどだ。(冬場は逆に炎があがると火の温かさに感謝を感じる)
護摩が終わり、もうもうとした煙が充満した護摩堂から出ると、朝の新鮮な空気がいかにおいしいかがわかる(笑)
そして、目の前に広がる美しい瀬戸内海を眺めていると、まるで新しい自分に生まれ変わったような気がする。
子どもが産まれて以来、早朝護摩には行けていないが、もう少ししたら、また行こう。
(早朝護摩はどなたでも参加できるので、28日に島にいて、早起きできるという方はぜひ参加してみてください。煙でいぶされてもよい服でご参加くださいね(笑))
小豆島霊場第42番札所西之瀧、小豆島を訪れる機会があれば、ぜひお参りに訪ねてもらいたい。
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