ネルの交換
昨年、うちの店ではドリップのフィルターをペーパーからネル(布)に変えた。
ネルはペーパーよりも目が粗く、珈琲のオイル分が漉し取られることなく抽出されることで、より濃厚でしっかりとした風味の珈琲が淹れられるので気に入っている。
またペーパーだと1回の抽出で使い捨てだが、ネルは洗って何度でも使えるところがよい。
何度も使えるといっても毎日使っていると3~4か月もするといい具合に珈琲色に染まってきて、ドリップのスピードが落ちてくる。
そうなったら替え時。
ネルにはドリップの際にフィルターを枠に入れ込んで使う「ネル取り外し可能タイプ」と、はじめから枠に縫い付けられている「ネル縫い付けタイプ」がある。
「縫い付けタイプ」はドリップの際にネルを着脱しなくてよいので便利だが、ネルの交換時にちょっとヨイショがいる。
縫い付けられた古いネルを枠からはずして、新しいネルを枠に縫いつけないといけないからだ。
年が明け、そろそろネルを交換したほうがいいかもと思い始めたのだが、なかなか腰が上がらない。というのも縫仕事なんてやったことないわけで(小学校の家庭科の時間にやったような)、はたしてうまくできるのか・・・・。
だって説明書には「まつりぬい」で枠に縫い付けていくと書かれているんですよ!
「まつりぬい」って?腰はさらに重くなるでしょ(笑)
しかし、ドリップのスピードがいよいよ落ち始め、意を決してネルを交換することに。
ますはYoutubeで「まつりぬい」を確認。
そして購入後ながらく眠っていた針と糸を取り出し、作業を開始。
が、いざ縫い始めてみると、これが案外楽しい。しかも、チクチクと一針一針、縫い進めていくことでネルに対する愛が深まっていく(笑)
昔、出兵する兵士に贈られていたという千人針ってこんな感じだったんだろうな。(込められた思いの重さが全然違うけど)
縫い終わったらすぐに使ってみたいところだが、その前にちょっと湯通ししてなじませる。(飲みかけの珈琲もいれてみました)
で、最初の一杯を新しいネルで淹れてみる。
うん。うまい!
自分で縫い付けたネルで淹れた珈琲はいつもの珈琲よりもちょっとおいしく感じられた(笑)
そして傍らには色濃く染まった古いネル。
カラカラにかわいてピンと立ったネル。
捨てるには忍びなく、なんとなく引き出しにしまった。