2020年読書日記19
『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発 』by門田 隆将
今年に入ってから集中的に読んだ原発本。その中でやはり3.11そのものを避けることはできず、当事者への取材も最もすぐれていると評判の本書を手に取りました。公開中の映画『Fukushima50』の原作でもあります。
読んでみての所感としては、吉田所長を始めとした福島第一原発の人々による死と背中合わせの中での奮闘によって(たまたまもあったけど)日本の壊滅を防ぐことができたという紛れもない事実。だけれども、専門用語と文章による情景描写に限界もあることを感じ、いくぶん脚色されているとは聞いたけれども映像で知りたいと感じるようになり、映画『Fukushima50』も観てきました。ウイルス感染を考慮して飛び席になっている映画館で。結果的に観てよかったです。かなり理解が進みました。トラウマの復活でツライ描写もありましたが、観たことに、そして読んだことはプラスでした。もしかしたら吉田所長でなければメルトダウンによる史上最悪の原発事故が起きていたかもしれません。命令に逆らって海水冷却を続けることにしたくだりは必見です。あれが止まっていたら……。その一方で、批判されることになった政府の介入ーーその主人公である菅元総理もインタビューに応じていて逃げも隠れもせぬ姿勢は見直しましたけど。それぞれに言い分はある。
それから、多くの文字で語られているわけではないですが、あまり知られていない朝日新聞によるネガティブキャンペーンの悪劣さつも再認識することもできたのは収穫でした。こんな重大に事故さえも政治の道具にされかねないことに恐怖と憤りに震えます。
本書を読み終わった2020年の3.11。地震でも原発事故でもなく、新型ウイルスによって日本そして世界が揺らいでいます。リモートワークに移行することで通勤中の読書時間がなくなり、読書量が大幅に減ることになりそうな2020年です