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鉄の脳みそが生み出す”美”とは?

アラン・チューリングの半生を描いた「イミテーション・ゲーム」という映画では、こんなセリフがあります。

脳はそれぞれ違い、違うように考えるんだ。ならば、同じことが言えるのではないだろうか?ワイヤーや鉄でできた脳にもね

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2015) より

アラン・チューリングは現代にも続く”チューリング・テスト”を考案した科学者です。
人工知能の研究を1950年頃から行なっており、その成果がAIの礎となっています。

映画のセリフなので史実ではないかもしれませんが、近い考えをしていただろうとは思われます

ChatGPTが世に出ておおよそ1年が経とうとしていますが、AIにより世の中は大きく変化してきています。
単にそれは働き方や教育といった点だけでなく、芸術や感性の範囲にも及んでいます。

AIが曲を作り、AIが絵を描く。
そのこと自体は不思議ではないですが、その成果に対しどの様に人間が捉えるべきなのか。
上記の事例ではその点が課題となっています。

これらは単純に「人間の生んだ芸術のみが評価されるべき」「AIの作品も優れているなら正当に評価を下すべき」といった二元論で考えることはできないでしょう。

さらに言えば、すでに過去においても類似したジレンマやトラブルというのは発生しています。
あくまで結論や感じ方は視点によって異なるとは思いますが、過去の事例を通して自分なりに考えることが重要なのではないかと思います。


四色定理を機械が証明

参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/四色定理

これは「平面状のどの様な地図でも、4色あれば必ず色が隣り合わない様に塗り分けられる」という定理です。
1976年にコンピュータを用いて解析が行われ、証明が成されました。

しかし当時、複雑な問題であっても数学は短い証明を良しとする風潮があったため、コンピュータを用いた証明は賛否が分かれました。
いまだに”美しくない証明”の例として挙げられることがあるあたり、根底には根深い価値観の違いが存在しています。


「ディープ・ブルー」が当時のチェス世界王者、ガルリ・カスパロフ氏を破る

参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/ディープ・ブルー(コンピュータ)

IBMの開発した「ディープ・ブルー」が当時のチェス世界チャンピオンに勝利した事例です。
今は囲碁・将棋など大半のボードゲームでコンピュータが人間に勝る時代ですが、それらの口火を切る一件となりました。

こちらも賛否が分かれ、特に”知性”として言及したものとして「コンピュータが勝ったことは知性の証明ではなく、単に膨大な計算を行っただけにすぎない」という意見があった様です。
なお人工知能やAIについてアルゴリズムを理解した際、「知性や知能ではない」と認識する現象は”AI効果”と呼ばれています。


「中国人は採用しない」はAIの過学習によるもの

参考:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1912/02/news075.html

2019年、東大特任准教授が「中国人は採用しません」とTwitterで発言したことに端を発した問題です。

この発言について「限られたデータにAIが適合し過ぎた結果である『過学習』によるもの」と釈明しました。
この発言に対しては「AIのせいにするな」といった批判が挙がっていました。

同様の例として、Amazonも採用に関してAIを用いた際に女性に対して低いスコアを提示したことからAI採用を取りやめたという事例もありました。


これらの事例のうち、今ではほとんど違和感や疑問・問題点を感じない例や、逆に今でも考えるべき点がある例があったかと思います。
少なくとも四色問題やディープ・ブルーの例においては、当時賛否が大きく分かれた一面がありました。

人工知能やAIは自立して回答を提示したり絵や文章を生成しますが、その背景には人間が考えたアルゴリズムがあり、人間が判断するべき倫理の問題が潜んでいます。
その一端が音楽や絵として現れ始めたのではないでしょうか。

そう考えればAIにおける問題の根幹は、AI / 人工知能がどうあるべきかやどう評価されるべきかということよりも、人間の倫理や哲学がこれからどうあるべきかという点に本当の問いが隠れているように思います。

“問いを持った部族は生き残ったが、答えを持った部族は滅びた”というのはネイティブ・アメリカンのことわざ、示唆に富んでますね

冒頭の言葉の通り、人間の脳はそれぞれ違い、違うように考えるため、簡単な答えは出てきません。
ジレンマに対しては、たとえ答えが出なかったとしても考え続けること・学び続けることが、あるべき態度なのだと思います。

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