蓮水恭美 「犯罪者」 を聴いて
2022年 4月16日 20:00 "蓮水恭美"名義では初めて、そして通算では3曲目となるこの曲が発表された。
蓮水恭美 - 犯罪者 [Official Audio]
今作もこれまで同様、作詞作曲歌唱と楽曲制作の全てを彼女自身が行っている。伸びやかで優しい声の多重録音とアコースティックギター1本のみのシンプルな構成で、彼女の剥き出しの魅力を味わえる。
"犯罪者"――その曲名が放つインパクトは強く、初めて見た時はどんなパンチの強い曲なのだろうかと想像させられた。しかし、実際に聴くとやはり優しい音色、包まれる声質は健在でホッと一息。
以下、この曲の歌詞を載せておく。
初めて聴いた時に抱いた感想はズバリ、「これ、僕のきょうみちゃんへの気持ちを歌った曲...?」である。
"綺麗だと感じるもの"を並べて、そしてなんと言っても"君"(=きょうみちゃん)が歌う姿が、色んな場所で色んな色に染まり活躍する姿が、綺麗だな...と歌った曲だ、と。
一緒にバンドをやりたいと願い続けているけれどそれは叶わない夢なんだろうな、嗚呼僕だけのものにならないかな、と夜空に向かって投げかけながら一人グラスを傾ける...というシチュエーションまで最短距離で想像できてしまった。
そもそも僕がきょうみちゃんの曲を聴く時は2つの聴き方をする。
1つは、彼女はこの曲にどんな想いを込めたのか、何を伝えたいのか、曲の隅から隅まで貪るように聴き想像力を働かせて聴く聴き方である。
そしてもう1つは、僕自身がカバーする時、どんな思いを込めて歌おうか、どう解釈し直そうか、という自分の中で噛み砕いて変換する聴き方である。
カバーすることを前提に聴いているのは訳があり、僕は光栄にもきょうみちゃんから
「てっちんは初めてきょうみの曲をカバーしてくれた人!」
とのお言葉を頂いているので、これからも可能な限り歌い続けるつもりだ。
話を戻すが僕は2通りの聴き方をする訳だが、この曲に関しては後者の―自分の中で噛み砕く過程がほぼ必要なくまるで自分の歌かのように聴くことができた。
ただそれだけに前者の―この曲に込められた彼女自身の意志―ひいては"犯罪者"という曲名に込められた意味を想像するのが難しいなと感じた。
そうして何度も繰り返し、この曲を聴いた。
曲が発表された翌日の夜22時過ぎ、僕はバイト先から家までの帰り道にこの"犯罪者"を聴こうと、SoundCloudを開いた。
歌い出しの「空っぽの心から 伝う聞き慣れた音」がまさしく今の自分を表していて、長時間の労働で気力と体力を削られ何も感じなくなったような空っぽの心に、とぷとぷ、ときょうみちゃんの声とギターの音が注がれる感覚があった。
春の透き通った夜の中で、歌詞を肌で感じられたような気がした。
きょうみちゃんの感じた"綺麗なもの"がきょうみちゃんの声で伝えられる。その瞬間、身体にブワッと波が通り過ぎたような感覚があった。
闇に揺れる木の葉が
カラカラと音を立て回る自転車の全後輪が
静まり返った春の夜が
そしてイヤホンから流れる君の歌が
綺麗だな。
なんでもない―むしろつまらない毎日のように通るその道を通ることが、何だか幸せに感じた。
これを独占したい、全部自分のものにしたい、という考えを抱いたことが"犯罪者"なのかな。
"君"に綺麗だ、と言いたいために、他の"綺麗なもの"を並べた、"君"ありきの歌
最初に抱いたそんな感覚から
あれも綺麗だ、これも綺麗だ、そして"君"が綺麗だ―
そんな感覚に変わった。
そしてまた痺れたのが、
「僕だけのものにしたいのにな」
の、"のにな"の部分。
たった3文字、上手く言葉に表せないような複雑な心理含めて沢山の気持ちが乗った最高の3文字だと感じた。
この3文字の余韻に浸りながら2番へと移って行く箇所こそが、この曲の1番好きなポイントだ。
そうして家に帰り着いてInstagramを開くと、きょうみちゃんがこの曲について投稿していた。
どうやら新たに抱いた感覚の方がよりきょうみちゃんの感覚に近そうだな。
犯罪者 / 蓮水恭美 covered by ねこてっちん