非公表裁決/ドバイ法人である請求人が日唖租税条約の「一方の締結国の居住者」に該当するか?
UAE(アラブ首長国連邦)のドバイ首長国内を本店所在地とする請求人が、日唖租税条約4条1項に規定する「一方の締結国の居住者」に該当するかが争われた事案の裁決です。
日唖租税条約が適用される「一方の締結国の居住者」とは、「一方の締結国の法令の下において、住所、居所、事業の管理その他これらに類する基準により当該一方の締結国において租税を課されるべきものとされる者」をいうと定義されているのですが、ドバイ首長国では、法人に対して課税をする旨の法令(ドバイ所得税命令及びドバイ所得税勅令)は存在するものの、その法令は、石油・ガス会社等の特定の機関以外の者に対しては、現実に執行されていないため、請求人は、ドバイ法人であったとしても、「租税を課されるべきものとされる者」には該当しないことになるのではないかが問題となったということです。
請求人は、法令上は課税の対象となる法人であるから「租税をかされるべきものとされる者」に該当し、したがって「一方の締結国の居住者」に該当すると主張したのですが、審判所は、以下のように、請求人は「一方の締結国の居住者」には該当しないと判断しました。
法令は存在するのに「現実に執行されていない」という状況がイマイチよく分からないのですが、裁決でも指摘されているとおり、二重課税の回避というのが租税条約の1つの大きな目的であることからすると、法令が存在しないのと同じように一般的に課税されない状況にあるのであれば、「租税を課されるべきものとされる者」ではないという判断は、やむを得ないのかなと思います。
因みに、日本貿易振興機構(ジェトロ)の「UAE税務ガイド」によると、UAEでも、2023年6月1日から、法人税が課税されることになるようですので、法人に関していえば、「課税を受けるべきものとされる者」として日唖租税条約が適用されることになるのだと思いますが、個人に対して課税される所得税はないようですので、UAEに居住する個人に関しては、引き続き日唖租税条約の適用はないということになりそうです。
あまり汎用性のある事案ではないかもしれませんが、ドバイに進出する法人や移住する個人というのはそれなりにいるはずですので、こういう問題があるということくらいは知っておいてよいのかと思います。
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