青果卸売会社である請求人が、仲卸業者等に対する委託販売において、実際の販売価格が委託者である農協等の希望価格を下回った場合に、その差額分を自ら負担して農協等に支払っていたところ、その差額分の支払いが寄附金に該当するかが争われた事案の裁決です。
事案の内容等から、少し前に報道された名古屋のセントライト青果に対する課税処分の事案だと思います。
委託販売ですので、請求人とすれば、法的には、農協等の希望価格に拘わらず、実際の販売価格から販売手数料を差し引いて農協等に支払えば足りるはずなのですが、農協等との力関係もあって、その差額を「集荷対策費」として負担していたということにようです。
請求人は、そのような「集荷対策費」を卸売業者が負担することは業界の慣行であり、請求人がそれを負担しなければ、農協等は他の卸売業者に販売を委託するようになり、請求人の販売委託数及び販売委託料は大幅に減少することになるから、「集荷対策費」の支出には、通常の経済的取引として是認できる合理的な理由があると主張したのですが、審判所は、以下のように、「集荷対策費」は寄附金に該当すると判断しました。
うーん、おかしな判断をしているとまでは思わないのですが、少し厳しすぎる気はしますね。
まず、取締役の善管注意義務違反が問題となった事案に関するものではあるのですが、過去の裁判例(名古屋地裁平成13年10月25日判決)において、請求人と同じ名古屋の果卸売会社が「集荷対策費」(出荷対策費と同義であると思われます)を支出したことについて、「青果卸売会社を経営するには必要不可欠であり、仮にこれを行わないとすると、補助参加人を経営し、収益を上げることは事実上不可能である」などと判断されていますので、一般的に農協からの委託販売を継続するために青果卸売会社が「集荷対策費」を支出することが必要であることは、おそらく間違いがないのだと思います。
そして、一般的に農協等からの委託販売を継続するために青果卸売会社が「集荷対策費」を支出することが必要であると認められるのであるとすれば、請求人が「集荷対策費」を支出したことについても、農協等からの委託販売を継続するために必要なことであったという推認が働くはずですので、反証がない限り、「通常の経済取引として是認することができる合理的な理由がある」と認めることもできたのではないかという気もします。
因みに、審判所は、寄附金に該当しないためには、「費用としての性質が明白であり明確に区別し得る」ことが必要であるという解釈を示した上で、「集荷対策費」の支出と委託販売の継続の「明確な因果の関係を裏付ける客観的かつ具体的な事情」が認められないから寄附金に該当するという判断をしているのですが、「費用としての性質が明白であり明確に区別し得る」ことが必要であるという解釈は、東京地裁平成29年1月19日判決で示されているくらいで、あまり一般的ではなく、どちらかというと、請求人が主張しているように「通常の経済取引として是認することができる合理的な理由がある」ことが必要であるという解釈の方が一般的なのではないかと思います。
「集荷対策費」というのは、厳密には違法な支出のようですので、そのような支出を損金として認めるべきではないという価値判断が働いてしまう可能性はありますし、同業者や農協等の協力を得ることも難しそうですので、訴訟でもなかなか厳しそうではあるのですが、争ってみる価値はあるように思いました。