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非公表裁決/医師等が行う執筆、洋画の制作又は貴金属商品の製作等の「副業」が事業所得を生ずべき事業に該当するか?

医師又は歯科医師として事業所得又は給与所得を得ている者が、執筆、洋画の制作又は貴金属商品の製作等の「副業」を行っている場合に、それらの「副業」が事業所得を生ずべき事業に該当するのか、雑所得を生ずべき業務に該当するのかが問題となった3件の裁決例です。

事業所得と雑所得には色々と違いがありますが、最も大きな違いのは損益通算をすることができるかどうかですかね。「副業」が事業所得を生ずべき事業に該当する場合には「副業」から生じた損失を本業から生じた所得から控除すること(損益通算をすること)ができるのに対して、「副業」が雑所得を生ずべき業務に該当する場合には、損益通算をすることができないということになります。

3つの裁決例の事案は、東京、名古屋、関信越と地域は違うのですが、ほぼ同時期に処分がなされた事案であることからすると、全国的に同種の事案をターゲットにした調査が行われたのかもしれません。

3つの裁決例は、言い回し等の微妙な違いはあるものの、いずれも、以下のような法令解釈を示した上で、「副業」に一定程度の有償性や反復継続性があることなどを認めつつ、「副業」から継続的に多額の損失が生じていて相当程度の期間安定した収益を得られる可能性が低いことなどを指摘して、「副業」から生じた所得は雑所得に該当すると判断しました。

事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、特定の経済活動により生じた所得をいうと解されるところ、ある活動により生じた所得がこの事業所得に該当するといえるか否かは、当該活動の営利性及び有償性の有無、継続性及び反復性の有無、自己の危険と計画による企画遂行性の有無、当該活動に費やした精神的及び肉体的労力の程度、人的及び物的設備の有無、当該活動における資金の調達方法、その者の職業、経歴及び社会的地位、生活状況及び当該活動により相当程度の期間安定した収益を得られる可能性の存否等の諸般の事情を総合的に検討して、社会通念に照らして判断すべきである

本業からは高い所得を得つつ、副業では継続的に多額の損失を生じさせているという状況では、雑所得と判断されてもやむを得ないかもしれませんね。特に、洋画の制作とか貴金属商品の製作というのは、趣味の延長なのではないかとも思えてしまいます。

ただ、継続的に多額の損失を生じさせているというのは、後から分かることだったりするので、納税者が「副業」を始めた当初は、それを事業所得とすべきなのか、雑所得とすべきなのか判断が難しいこともあるのではないかと思います。

「副業」で経営していた旅館で継続的に損失を生じさせていた個人が、税務調査でその「副業」は事業所得を生ずべき事業とは認められないという指摘をされたという話を聞いたこともあるのですが、申告時にその判断をするのは難しそうです。

裁決では、損失が生じている状況を改善するための実効性のある手段を講じていないことや、事業計画を策定していないことなどが指摘されていますので、微妙な事案では、少なくとも、そのような利益を獲得するための努力をした上で、その証跡をきちんと残しておくということが必要になるのではないかと思います。

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