非公表裁決/古い変圧器の搬出が完了しないと変圧器の取得等に係る役務提供は完了しないか?
消費税の課税仕入れの時期との関係で、変圧器の取得等に係る役務提供が完了したのがいつであったのかが問題となった事案の裁決例です。
役務提供がいつ完了したのかというのは、消費税だけでなくて法人税との関係でもよく問題となりますので、実務的には重要ですよね。
請求人は、平成29年3月期末までに新しい変圧器の備付けと検収が終わっていたことから、同事業年度中に変圧器の取得等に係る役務提供が完了したものとして、当該変圧器の取得等に係る対価の額を同事業年度の課税仕入れに係る支払対価の額に含めて消費税等の申告をしていたのですが、原処分庁は、同事業年度末までに取り外した古い変圧器の搬出が終わっていなかったことから、同事業年度中に変圧器の取得等に係る役務提供は完了しておらず、したがって、当該変圧器の取得等に係る対価の額を同事業年度の課税仕入れに係る支払対価の額に含めることはできないとして、更正処分を行いました。
つまり、新しい変圧器の備付けに伴って取り外した古い変圧器の搬出が完了しなければ、変圧器の取得等に係る対価の額を課税仕入れに係る支払対価の額に含めることができないのかが問題となったということです。
この点について、審判所は、契約書の別添の仕様書に「作業に伴い生じる発生品」については、契約の相手方が無償で引き取る旨の記載があり、取り外した古い変圧器は「作業に伴い生じる発生品」に含まれることから、その搬出の履行は無償で行われる役務の提供であって対価性がなく、それが完了していなかったとしても、対価を得て行われる役務の提供は完了していたと判断して、更正処分の全部を取り消しました。
結論には違和感はないのですが、論理構成には少し不満がありますね。
というのも、上記のような判断からすると、契約書の別添の仕様書に「作業に伴い生じる発生品」を相手方が無償で引き取る旨の記載がなかったとしたら結論が変わることになるようにも思われるからです。
意見が分かれるところかもしれませんが、契約書の別添の仕様書に「作業に伴い生じる発生品」を相手方が無償で引き取る旨の記載がなかったとしても、取り外した古い変圧器の搬出というのは、付随的な義務に過ぎず、そのような付随的な義務の履行されていなかったとしても、請求人は対価の支払を拒むことができた訳ではなかったはずなので、古い変圧器の搬出が完了していたかどうかというのは、課税仕入れの時期には影響を及ぼさないのではないかと思いました。
因みに、この事案で、原処分庁は重加算税の賦課までしていたのですが、これはいくらなんでも酷いですね。
原処分庁は、古い変圧器の搬出が完了していないのに、新しい変圧器が検査に合格した時点で「納品書」を提出させたことが事実の「仮装」に該当すると主張していたようですが、古い変圧器の搬出が完了しなくても、新しい変圧器の検査をすることは可能なはずですし、そもそも新しい変圧器の納品がなされていることは間違いないのですから、「納品書」を提出させたことが事実の「仮装」に該当するはずがなかったのではないかと思います。
まぁ、この件にかぎらず、重加算税の賦課については、結構いい加減なものが少なくないので注意が必要ですね。
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