医師である請求人が、取引先等の接待のために支出した飲食費や従業員の慰労・親睦を図るために支出した飲食費が必要経費に該当するかが争われた事案の裁決です。
いずれも感覚的には必要経費として認められてもおかしくないような費用だと思うのですが、審判所は、以下のように必要経費には該当しないと判断しました。
うーん、厳しいですね。
この事案では、上記の判断の対象となった「本件費用B」や「本件費用C」とは別に、医療法人を設立しなければ分院を開設できないはずであるのに、分院長をスカウトするための接待交際費として3年間で1000万円以上を必要経費に算入していて、そのことが「本件費用B」や「本件費用C」の判断にも影響を及ぼしているようなのですが、それにしても取引先の接待や従業員との忘年会・新年会でもダメというのは厳しい判断ですね。
ただ、この裁決に限らず、審査請求や訴訟では、個人事業主の接待交際費等の必要経費該当性について、かなり厳しい判断がされる傾向にはあるように思います。
例えば、弁護士会の役員活動費用について必要経費に該当することを認めた東京高裁平成24年9月19日判決も、日弁連事務次長の父親の逝去に伴う香典や弁護士会事務員会の活動費への寄付については必要経費に該当しないと判断していますし、やや特殊な事案に関するものではあるのですが、東京地裁平成17年12月22日判決は、「警察署の外郭団体等や県庁職員OB会等との懇親会費、警視庁警察学校職員との暑気払い、事件紹介者・依頼者との飲食及び弁護士会等の懇親会の2次会、3次会費用としての飲食代、国会議員や市議会議員等の後援会や大学、大学院等のOB会費等の会費、国会議員や市議会議員、警察署外郭団体等に対するお祝いや、事件依頼者及び紹介者等とする者への香典・お祝い等の慶弔費、贈答品費」を含む接待交際費について、以下のように、その全てについて必要経費に該当しないという判断をしています。
そのような裁判例の判断を踏まえると、上記のような裁決の判断もあり得るのかもしれませんが、接待交際費というのは、事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図るために支出されるもの(東京高裁平成15年9月9日判決)であって、そもそも事業に係る業務との関連性を具体的に明らかにすることが難しい性格の支出のはずですので、事業に係る業務との関連性を「具体的な立証」することが必要だとすると、個人事業主の接待交際費が必要経費としてみとめられる余地は、殆どなくなってしまいそうです。
そして、そのような帰結が妥当なのかというと、事業を行う上で接待交際費がある程度は必要と考えられることからすると疑問があります。
確かに、線引きが難しいところだとは思うのですが、取引先や従業員との飲食費については、その金額や回数が合理的なものである限り、一般的には事業に係る業務との関連性があるものと思われますので、納税者が事業に係る業務との具体的な関連性を明らかにできなかったとしても、必要経費として認めて良いのではないかという気はします。
とはいえ、裁決や判決でそういう判断をしてもらえるかというと、残念ながら、あまり期待できないような気はしますので、個人事業主の接待交際費等の必要経費の該当性については、余程のことがない限り、税務調査で決着をさせた方がよいのではないかと思います。