非公表裁決/顧客の利用したポイント相当額が課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるか?
ポイントプログラムの加盟店が顧客からポイントの利用を受けた場合に、利用されたポイント相当額が課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるかが争われた事案の裁決です。
ポイント制度の消費税法上の取扱いについては、税務弘報の2022年8月号でも特集が組まれていましたが、ポイントの法的性質が明確でないこともあって、悩ましい問題が多いですよね。
この裁決も、税務弘報の2022年8月号の特集記事で紹介されていましたので、御存知の方も少なくないかもしれません。
事案はシンプルで、第三者が運営するポイントプログラム(本件ポイントプログラム)に加盟している請求人が、本件ポイントプログラムの会員から利用を受けたポイント相当額(本件ポイント利用分)について、当初は課税資産の譲渡等の額に含めて消費税の申告をしていたのですが、後に課税資産の譲渡等の額に含まれないはずであるとして更正の請求をしたところ、原処分庁が更正すべき理由がない旨の通知処分をしたというものです。
国税庁が平成30年5月に公表した「収益認識基準による場合の取扱いの例」によると、自社が発行するポイント(自社発行ポイント)の場合、利用を受けたポイント相当額は、対価の返還等(値引き)に当たるものとされていますので、課税資産の譲渡等の対価の額に含めなくてよいことになる(厳密には、売上に係る対価の返還等を受けたものとして処理すべきものなのですが、消費税法基本通達10-1-15では、課税資産の譲渡等の金額から値引額を控除する処理をすることが認められています。)はずなのですが、この裁決の事案では、第三者が発行するポイント(共通ポイント)であったことから、同じような処理をすることができるのかが問題となったということだと思います。
請求人は、請求人と顧客との間で授受される対価の額には本件ポイント利用分は含まれていないのであるから、本件ポイント利用分は課税資産の譲渡等の対価の額に含まれないと主張したのですが、審判所は、以下のように本件ポイント利用分も課税資産の譲渡等の額に含まれると判断しました。
結論として、本件ポイント利用分も課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるというのはいいと思うのですが、レシートの記載を根拠として判断しているところはモヤッとしますね。
この判断からすると、レシートに本件ポイント利用分が値引きとして記載されていた場合には、課税資産の譲渡等の対価の額に含まれないという結論にもなりかねないのですが、それでいいの?ということです。
タックスアンサーの「No6480 事業者が商品購入時にポイントを使用した場合の消費税の仕入税額控除の考え方」において、ポイントを利用した場合に、レシートの記載によりポイント利用分を課税仕入れに係る対価の額に含めるべきか否かを判断してよいとされていることと整合的な判断をしたのかもしれませんが、上記のタックスアンサーは、「差し支えない」と記載していることからも、便宜的にレシートの記載によって判断することを認めたものに過ぎなくて、本来的にはレシートの記載によって課税資産の譲渡等の対価の額(課税仕入れに係る対価の額)に含まれるべきかどうかを判断すべきものではないような気がします。
では、どのように判断をすればよかったかというと、ポイントの法的性質が明確ではないので難しいところではあるのですが、ポイントの法的性質に関わらず、ポイントが利用されたことにより加盟店がポイント発行企業に対してポイント相当額の債権を取得することは間違いないことからすると、ポイントの利用によって、会員と加盟店との間で、利用されたポイント相当額の「権利その他の経済的な利益の額」(消費税法28条1項)が収受されているという判断をすることはできるように思います。
そして、そのような考え方によれば、自社発行ポイントの場合には、利用されたポイント相当額を課税資産の譲渡等の対価の額を含めなくてよいという取扱いとも整合するのではないかと。
ポイント制度の消費税上の取扱いについては、まだ色々と問題が出てきそうですが、金額的にも影響が少なくありませんので、本格的に整理をすることが必要になってくるのではないかと思います。