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【ビートルズ『リボルバー』について語る③】

今回は、マニアの方なら当然
知っている『あの』話題についてです。

そう。

『Yesterday And Today』です。


一応、説明します。

ビートルズだけに限った話ではないんですが、
60年代の半ばくらいまでは

音楽【アルバム】自体が実はそんなに
重要視されていなかったのです。

「シングルの寄せ集めだろ」とか
「何となく曲を詰め込んだもん」とか

それぐらいの感覚でレコード会社もどこも
扱ってました。

逆に今もサブスクの時代になって
【アルバム】の価値が一昔前よりも
下がってしまった気がするのは残念なのですが。

いわゆる、《芸術》として、
ひとつの、一枚のレコード芸術作品としての
【アルバム】の認識がまだまだ薄かった時代。

ただ、その中にあってビートルズは
ファーストアルバム時点から、曲順にしても
何をどう収録するかにしても
アルバムジャケットにしても

どう考えても、むちゃくちゃ考えてました。
それはビートルズのアルバムを聴けば
すぐに分かる事です。

すべてのアーティストがそんな風だったんじゃ
ないの?、というと
どっこい、違うんです。

ビートルズはそういう所でも時代の先を
行ってました。

が、本家イギリスではそうやって
きちんとやってたんですが

アメリカでビートルズの販売を担当した
キャピトルという会社は
その認識を共有していませんでしたし
本家Verをそのまま出す気などさらさら
ありませんでした。

これは悲しい事ながら、すべては
お金儲けの為が理由です。

姑息に収録曲をバラバラにして
小分けにして、余計にアメリカ独自の
勝手なアルバムを沢山作り出して
売っていたのです。

日本も、アルバムはそこまでひどくありません
でしたが
シングルは日本独自で勝手に本家が
出してない曲をシングルにして出してました。

ご存知の通り、ビートルズは
なるべくシングル曲をアルバムに
収録しない体制を取っていました。

少しでも違う曲を聴いてもらって
楽しんでもらおうというサービス精神からです。


レコードは高いものでしたので
大人ならまだしも、
子どもではシングル、アルバムと
バンバン出されても
なかなか何枚も買えない状況でした。

それは自分たちが貧乏だった時に散々
味わった苦悩だったのでしょう。

そうやってなけなしのお金で買った
アルバムにシングルとか、もう持ってる
曲が入っているとガッカリするかも
知れないからという事からなんです。

まぁ、なんて志の高いバンドなのでしょう。

しかし、アメリカはその意向をガン無視。

シングルは平気でアルバムに入れるわ、
アルバムもズタズタにして
2枚に分けたりなどを平気でやり続けました。

『リボルバー』もその被害にあってます。

イギリスの『リボルバー』は
1966年8月5日に発売されますが

アメリカは一足先に『リボルバー』の中から
3曲を入手。
「I’m Only Sleeping」「Doctor Robert」
「And Your Bird Can Sing」


(『リボルバー』の録音は1966年の6月時点で
完了していました)

それを以前のアルバムで出し惜しみしていた
曲と無理やりくっつけて
水増しした新しいアルバムを作り上げて
1966年6月20日に
『Yesterday And Today』という
アメリカ独自のアルバムとして発売してます。

内容を観てみましょう。

『Yesterday And Today』(アメリカ)

side A

1.「Drive My Car」
2.「I’m Only Sleeping」
3.「Nowhere Man」
4.「Doctor Robert」
5.「Yesterday」
6.「Act Naturally」

side B

7.「And Your Bird Can Sing」
8.「If I Needed Someone」
9.「We Can Work It Out」
10.「What Goes On」
11.「Day Tripper」

なんじゃこりゃー、ですよ(笑)

アメリカは当時、12曲以上収録したら
税金が高くなるとかなんとからしく
ビートルズの初期のアルバムって大体14曲
なんですが、
2曲削って出して
その余った曲を次のアルバムに足して
入れてたりしました。

「We Can Work It Out/Day Tripper」の
両A面シングルも普通に入ってます。
本家はアルバムには入れてません。

そしてなぜか「Yesterday」。
アメリカ版では『Help!』に「Yesterday」が
収録されてませんから
ここにベチャッ、と入れてます。

じゃあ、アメリカではこのアルバムが
「Yesterday」の初出しなのか?
と言うと全然そんな事はなく

1965年の9月13日に
勝手にシングルを発売してます。

そもそも、本家イギリスでは
「Yesterday」はシングルではないのです。

コンセプトもイマイチよく分かりませんし
ホントにこれこそ
「何となく曲を詰め込んだもん」です。

ジョンの曲がやたら多いし、
リンゴのボーカル曲が2曲あるし。

アメリカはどっちかというと保守的な国で
奇抜で実験的なロックなんかよりは
フォークロックとかカントリーとか
そういう素朴なのがウケがち。

そういう背景もあって、
アメリカ版『ラバーソウル』は
「Drive My Car」を削って代わりに
「I’ve Just Seen A Face」を入れたりして

何となくソリッド味を抜いて
フォークロック調マシマシのアルバムに
改造して出してます。

勝手に変える事自体、嫌ですが
それでも何となくコンセプトはあるのかなぁ
みたいな感じだったのが

この『Yesterday And Today』はどうした事か。
何の意味も無さそうだぞ、コレ。

アルバムジャケットもアメリカ版オリジナル
なのですが。。。。。

ファンの皆様は多分、ご存知のコレ↓

まさに『曲をバラバラにしました』
がコンセプトなのかな(笑)ホラー。

メンバーは半ば無理矢理このジャケットを
撮られたらしく
後悔していたとさ。

このジャケットは『気持ち悪い』と
避難殺到し、すぐ回収され
新しいおとなしいジャケットに変わります。


そして、アメリカ版の『リボルバー』も
ちゃっかり1966年8月8日に発売されますが
内容はというと…

『リボルバー』(アメリカ版)

side A

1.「Taxman」
2.「Eleanor Rigby」
3.「Love You To」
4.「Here,There And Everywhere」
5.「Yellow Submarine」
6.「She Said She Said」

side B

7.「Good Day Sunshine」
8.「For No One」
9.「I Want To Tell You」
10.「Got To Get You Into My Life」
11.「Tomorrow Never Knows」


うむむ。やはり、ジョンの曲を3曲も
削ると鋭さがガクッ、っと無くなりますね。。

ジョンの曲が各面の最後の1曲だけって(笑)

こういう事言うのもなんですが

どうせなら「Paperback Writer」とか
入れたら良かったのに。
そういう事はしないっていう。
これでは、ただ、パワーダウンしただけ。
(曲数の問題か…)


で。


流石にこの辺でビートルズ側もキレまして。

『Sgtペパー』からは

「俺たちのアルバムをそのまま出さない国は発売禁止じゃい!」


という事になりました。

『Sgtペパー』は本人達もコンセプト的に
作った事もあって
曲をバラバラにされるというのは
流石に納得がいかなかったのでしょう。

ローリング・ストーンズは

「なんだよ、勝手にいっぱい増やして
売ってくれるんなら
儲けもんだよな、ハハハハ!」と

大歓迎の姿勢だったらしいです(笑)


ハイ。ちょっと不愉快なお話も
あったかも知れませんが…


ビートルズがこの仕打ちの流れで
『Sgtペパー』の売り方を強制した事で

アルバムの総合芸術性が広く認知されるに至り、

「アルバムってちゃんと綺麗に作ったら
芸術やん!いいやんー!」


となった事から『Sgtペパー』は、

その多大なる芸術的貢献が評価され

その後、何十年も【ロックアルバムと言えば】、の
第一位に君臨し続ける事になります。


ハイ。今回はここまでです。
ありがとうございます!











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