【N/S高 政治部】野党3党の代表と考える『野党の役割』
読者の皆様初めまして、こんにちは。政治部Aチームのタキグチです。
N/S高 政治部 3期では、9月から11月まで『「野党の役割」について考える』というテーマの下、各チームで調査研究を行ってきました。10/12には野党3代表にご登壇いただく機会にも恵まれました。
今回はその中でも私が個人的に考えていることを書いてみました。
I 「野党」言葉の定義
はじめに、「野党」とは何でしょうか。
野党という言葉は、行政を担当していない政党、*「政府から離れた在野の政党」であることに由来します。「与党」の政策に反対、対案を立てることが多く「反対党」と呼ばれることもあり、明治時代の帝国議会発足当初は「民党」と呼ばれていました。帝国議会開設時、藩閥政府を支持した「吏党」に反し、民意側の意見を反映する政党としての意味をもちます。
*出所:デジタル大辞泉
II 講義の振り返り
10/12の講義では立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の3代表にご登壇いただき、野党の役割はどのように定義されるのか、という視点のもとで質問を考えました。登壇されたゲストには政治部員からの質問に真摯にお答えいただき、野党の役割について理解を深めることができました。
また、今回の講義ではチームでの質問に加え、私は以下の質問をさせていただきました。
「7月の衆議院選挙では国民民主党、立憲民主党は改選前の議席を下回り、一方で日本維新の会は議席が増加する結果となりました。 今後の野党の未来の形について、野党がこれから果たすべき政治的役割、また野党再編の余地などについて考えをお聞かせください」
この質問に対し、3代表による回答は以下のとおりでした。
立憲民主党は旧民主党からの合流で、人材と経験に基づいた強気な姿勢が読み取れます。政権交代への意欲も見せている一方で、同じ野党の維新の会と協力をするなど、野党として与党に立ち向かっていく姿も見られました。
日本維新の会は国民民主党と同様に是々非々の立場をとる中で、自公政権に緊張感を与える役割が必要であると述べていました。これは以前の野党の姿に似るところがあり、世間一般の野党のイメージといったところではないでしょうか。
国民民主党は発足時から「政策本位」を掲げ、与野党を超えて協力するという新しい形の野党の姿勢を継続するということが読み取れます。また、小さい政党だからこそ持てる独自の視点やフットワークの軽さに重きを置きたいという発言もありました。
講義を通して、上記のように同じ野党においてもそれぞれ目指している姿や抱えている人材などに差があることが伺えました。
III アリーナ型(追求型)とコンセンサス型(提案型)
議会は主に「アリーナ型」と「コンセンサス型」の2つのタイプに分けることができます。
「アリーナ型」とはイギリスに代表される、与野党が激しく対立し野党は徹底して与党に批判的な立場をとる議会タイプのことです。「コンセンサス型」はドイツのように与野党が協調し、納得のある合意形成を目指す形のことです。また、アリーナ型は「追及型」、コンセンサス型は「提案型」と捉えることができます。
以上の視点で日本の野党を分析してみると、アリーナ型とコンセンサス型が混在していることがわかります。例えば本講義においては立憲民主党と日本維新の会は「アリーナ型」、一方で国民民主党は「コンセンサス型」と分類できると考えられます。
私はこのように野党の間でもアリーナ型とコンセンサス型が混在していることが野党の停滞感を生む原因になっていると考えます。野党は民主主義を成り立たせるには必要不可欠な役割を担っていますが、こうした野党間のねじれは「一党優位政党制」を助長することにつながっていると考えられます。
IV 問題点
イギリスのような「アリーナ型」の議会とドイツのような「コンセンサス型」の議会の成り立ちの違いを調べると、選挙制度の違いが関係しているかもしれないことがわかってきました。
イギリスは単純な小選挙区制です。この制度では基本的に、二大政党制が促されるものとされています(デュヴェルジェの法則)。小選挙区制度では一位以下の得票はすべて死票になるため、選挙区ごとの有力候補が少数になる傾向があります。そのため、小さな政党は生まれにくく結果的に大きな政党同士の対決に収束していきます。
一方でドイツなどの比例代表制をメインに採用している国では、多党制になりやすいとされています。なぜなら、比例代表制では選挙区ごとの得票数に応じて各政党の議席数が決まるからです。小選挙区制と違いすべての得票が有効になるため、少しの票数でも議席を獲得することができます。結果として、多党制になりがちです。
小選挙区制度では二大政党制になるため、野党は追求型になりつつ、一方で、比例代表制では多党制になるため提案型の立場をとる野党が多くなります。
日本の選挙制度は比例代表並立制です。比例代表制と小選挙区制の並立は、上記の視点から見ると非常に曖昧な構造であることがわかるのではないでしょうか。つまり、現在の選挙制度は多党制が目的でもなければ二大政党制を目的としているわけでもない、あやふやな状態なのです。これによって野党の役割もバラバラになり、ねじれが発生しています。
私はこの問題を解決するために、どちらか一方の選挙制度に舵を切る、といった選挙制度の見直しが必要であると考えます。
V まとめ
上記の内容を通して以下の三点を整理することができました。
・政党ごとに目指す姿に違いがある
・野党間でもねじれが発生している
・ねじれの原因は選挙制度にある
野党は一党優位政党制を助長しないためにも国会の中で大きな役割を果たしています。多様な意見を国会に届けるために必要不可欠な存在です。
しかし、現状として多党であることに起因し、それぞれの政策の実現性が薄くなっているのではないでしょうか。国会が多様であるべきなのは間違いありません。しかし、政策の実現性を高めるために、ある程度の意見を切り捨てるなどといった思い切った行動が必要です。実現性を高めるためには強い野党が求められます。
私は、選挙制度改革を実行し、制度から野党の役割を定義づけすることが、強い野党を実現するための一つの有効手段だと考えています。
VI 最後に
7月の参議院議員選挙も終わり、次の国政選挙はしばらく見込まれていません。しかし、ウクライナ侵攻や台湾有事の懸念など、世界の趨勢は著しく変化している状況です。私たちはどこを目指し、どこに進んでいくのか、誰にも予測しがたいことであります。そのような渦中でも私たち有権者の一票は、たったの一票かもしれません。ただ、国政に自分の意見を届けられる強力な一手とも考えられます。私たち有権者に求められることは与野党や政党ごとといった先入観を捨て、選挙に望むことです。
福沢諭吉が「良民の上には良き政府あるの理なり」と言うように、最終的に国を作り上げているのは私たち国民なのです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。