【新聞記事で宅建】無謀な開発。成長神話崩壊…中国不動産バブル深刻化
今朝(令和5年12月2日・土曜)の読売新聞13面(経済)の記事です
無謀な開発 成長神話崩壊
中国不動産バブル深刻化
まさに『新聞記事でお勉強』。
こういっちゃなんだが、宅建試験の受験勉強にピッタリなネタだったので、2回にわけて賞味しましょう。
記事概要はこちら
『国民の多くは不動産の購入意欲を失っている』という最後のフレーズが“決まり手”ですね。
つまり買い手がいないということだから、価格もへったくれも、なので当然『右肩あがり』もない。
まずは土地所有権の確認。土地の私的所有とは
この記事を楽しむ補助線として、まずは権利関係です。
民法ですね。
ではみなさん、自分の建物を建てることにしましょう。
自己所有の建物です。
で、当たり前ですが、建物を建てるためには土地が必要です。
土地を使えるからこそ、そこに自分の建物を建てることができるわけですからね。
では自分が使える土地を探しましょう。
それを権利関係で考えるとこうなる。
パターン1
土地(自己所有):建物(自己所有)
パターン2
土地(他人所有):建物(自己所有)
土地と建物を両方とも所有しているというパターン1が、まぁみなさんが思うとおり法的にも安定していて、つまり、日々の暮らし(不動産の権利関係)に“他人”という邪魔が入らない。
一方、他人所有の土地を使って建物を建てるというパターン2、いわゆる借地権に基づく場合だと、借地権が消滅すれば土地は使えなくなる。
ちなみに借地権の定義はこちら
ちなみに宅建試験では【問11】で借地権が出題される。
詳細は大人女子宅建の借地借家法のところで。
「中国では土地を所有できない」ということをよく聞くと思います
そんでね。
土地の所有権という話に戻るが。
「中国では土地を所有できない」ということをよく聞くと思います。
これってなに?
なんで日本は土地を私的所有できるの?
このあたりの件は今日の新聞記事にもありまして
なるほですね。
土地は公有。
つまり私的所有(私有)という制度ではない。
なので土地を返さなければならない日がやってくる。
そうなれば建物は取り壊しだ。
で、さっきの『なんで日本は土地を私的所有できるの?』という話に戻りますが。
でもね、日本もその昔は『公有』だったんだよね。
・・・と、このあたりの話は、高校の『現代社会』か『日本史』の類でお勉強したことと存じます。
立派な成績で高校をご卒業なさった読者諸兄姉の皆々様には、いささか失礼かと思いますが、そのあたりのことをお忘れの方に、以下。
つまり、『なんで日本は土地を私的所有できるの?』の答えは、我が国ニッポンは土地の私的所有を認めているから。
端的に言えば、そういう制度だから。
逆にいうと中国の政治経済(体制というか思想というか)では、土地の私的所有権を認めていないから。
いらない土地の所有権を放棄できるか?
そんで、いつから“私的所有”が認められることになったのか。
江戸時代はちがいましたよね。
天領という言葉があって、天領とは、新明解国語辞典によると〈朝廷の直轄地。江戸時代では徳川将軍の直轄地〉で、ひらたくいえば将軍に支配権があり、それに基づき地方に藩主が誕生した。
だが世の中は栄枯盛衰で、大政奉還だ。
大政奉還を土地の権利関係で見てみると「江戸幕府(将軍)や藩主の土地の支配権を、天皇を中心とする国家に吸収させることにした」となる。
いったん『公地公民制』となるんだよね。
ここでちょっと脱線。
もしもこのままの制度だったら、いま世間で大騒ぎになっている『所有者不明土地問題』はなかった。
脱線ついでにもうちょい。
悲惨なほど増えた所有者不明土地をどうにかしなきゃいけないから、「相続土地国庫帰属制度」が令和5年4月27日にスタートしました。
「いらない土地を相続したら国家に土地所有権を押し付けることができる」というのが制度趣旨で、でもね、国家に所有権を押し付けるためにいろんな条件がある。
ぁこれはこれでおもしろい制度だから、また別の機会に。
ちなみにだが。読んでみてのとおりだが。
この制度はあくまでの“相続で”を前提としているので、相続ではなくて誰から買っちゃった“いらない土地”があったとしても、これを国家に押し付けることはできない。
うっかり“いらない土地”の所有者になっちゃうとたいへんだ。
建物だったら解体すれば所有者の呪縛から逃れることができるけど、なんせ土地だもんね。
ニッポンが“沈没”しない限り、そこに土地はある。
ありつづける。
なお、現時点では単純な「土地所有権の放棄制度」はないので、場合によっては一生、所有者。
トランプのババ抜きみたいなもんで、最後の最後に、誰かにジョーカーを引いてもらえれば勝てるけど。
そんでね。
いったんは『公地公民制』になったニッポン。
いつから私的所有制になったのか。
発端は、田畑永代売買解禁(1872年2月)から、らしい。
あれこれあったみたいだけど、どうやら1874年10月、あらゆる私人が土地を所有できるようなになった、らしい。
そのときは登記制度ではなく地券制度だった、らしい。
いまは固定資産税という制度があるが、当時も土地の所有と納税義務とセットで、その土地の地券を持っっている人=土地所有者が地租を上納するというしくみでした。
1874年を起点として考えれば、来年は2024年だからちょうど150年。
あーだこーだ、土地の所有をめぐるすったもんだは世の常で、土地に所有権がある限り、空に太陽がある限り、1これからも騒動は続いていくことでしょう。
以上、今回は土地の私的所有ということを切り口として、新聞記事を楽しんでみました。
悲喜こもごもの土地所有制度、来年めでたく150年、長いかな。
それともたかだが150年かと、短いかな。
冒頭でも記したとおり、この記事(事件ともいうか)は「宅建試験の受験勉強にピッタリなネタ」の宝庫で、続きはまた明日に。
明日の補助線は宅建業法にしてみようと思います。