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【#03】ヒ・ミ・ツの民法★復刻コラム
こちらの続きです。
7.ついにできたニッポンの民法。だがしかし・・・。
さぁ行こう、ニッポンの夜明け。
ニッポンの民法。
でも時間がない。
とにかく急げ。
とはいえ、当時は西洋の法学の基本用語すらなく、翻訳したり法律用語を作りつつの急ピッチ作業だったようです。
獅子奮迅。
かくしてできあがったのが、フランス民法をベースにしたものにドイツ民法のよさそうなところを盛り込んだミックス型。
ふー。やれやれ。
でもねこの民法、母体となったフランスやドイツの民法と比べて、条文数が極端に少ない。
フランス民法の条文数は2488。
ドイツは2385。
で、ニッポンの民法はというと、これがなんと1146。
うーん、半分くらいじゃないか。
いいのかなこれで。
でもなんでこんなふうになっちゃったんだろうか。
どうもその理由は、民法をつくるときの方針にあった模様。
細かい規定をつくろうとしても、どのみち西洋の民法を見本にするしかなく、とはいえそのまま翻訳的に作ってもニッポンの社会や風土にあわないし。
なので「とにかく、細かい規定は省き、条文にはおおよその原則だけ書く」ということだった模様。
かくして、本来はあったほうが親切な定義的な規定や説明的な規定はカット。
ということで、たしかに西洋式の民法はできあがったものの、さてどうやって運用していこうか。
条文も抽象的だし、不明確だし。
これじゃ裁判もできやしない。
だからいまの民法は、条文だけ読んでもチンプンカンプン!!
8.チンプンカンプン民法。どうする?
でもこれでやっていくしかない。
となると、しょうがないから条文は条文として、その解釈。
そうだ、そうそう、解釈論で回していこうじゃないか。
よしそれでいっちゃおう。
で、ドイツの法律に詳しい学者先生らが解釈論を積み上げていく。
もともとはフランス系の民法なのに、解釈はドイツ系。
あぁー民法よ、あぁーなんてかわいそうな生い立ち。
解釈といいながら条文の解釈はしていないところもあったりで、うーん、混迷。
以来そのまま120年。
ええー、そうなの?
はい、そうなんです。
この120年の間、解釈論と、それをもとにした膨大な判例の積み重ねでいまに至ります。
だからね、試しに大きな書店で民法の本を立ち読みしてみてほしい。
分量的にたいしたことを書いてない条文についての「解説」がいっぱい載っているでしょ。
「そうか、この条文の意味はそんなに奥が深いのか。さすがだな民法って」と思ってしまう人もいるでしょうけど、うーん、どうかな。
たぶんちがうかも。
民法の条文が足りないっていうか、まったくもって不親切というか。
民法の条文をせっせと読んでみても、そこには書かれていないルールで運用されちゃってるっていうんだから、なんか民法ってむずかしいなーって思っちゃう人がいっぱいいるわけです。
9.わかりやすい民法。そして今どきの民法。
とにもかくにも、民法制定を急ぎに急いだという歴史的経緯があったもんだから、細かな規定や、ボワソナードさんが配慮して入れてくれた教育的・説明的な規定もカットに次ぐカット。
ことごとく省いた結果、原則のみのシンプルな条文。
俳句に近いかもね。
書いてない内容に思いを馳せ、そして解釈せよ!!
で、今般の民法(債権法)の改正。
120年ぶりの改正。
その大きなポイントのひとつとして「国民一般にわかりやすいものとする」っていうのが掲げられたのでありました。
そうだよ、わかりやすい民法。
悲願といってもいいのかも\(^o^)/
まぁとにもかくにも現代化。
19世紀末から21世紀の民法へ。
「社会・経済の変化の対応を図る」というのも改正のポイントに掲げられています。
そして「国民一般にわかりやすいものとする」。
この120年間、そりゃもう膨大な裁判を通して練り上げられた判例を、ルールとしてきちんと民法の条文として取り込んでいく。
そして内容が不明確な条文の意味を明確にしていく。
いまの民法の条文には載っていないけど、当然の前提となっている話も盛り込む。
見えなかったルールの「見える化」を図るとでもいいましょうか。フツーの人がフツーに読めて、そして実際に裁判で運用されているルールもきちんと盛り込まれている。そんな民法。
うんうん、とってもいいじゃないですか。
10. 新しい民法。なんか、いい感じかも
このたび公表された中間試案(おーさわ注:2013年時点でのコラムです。2020年に新民法は施行されました)を見てみると、たとえばですね、「法律行為」という概念があるでしょ。
一般的には使わない言葉なんだけど、いわれてみれば、今の民法には「法律行為」の説明がない。これをね、
【法律行為の意義】
① 法律行為は、法令の規定に従い、意思表示に基いてその効力を生ずるものとする。
② 法律行為は、契約のほか、取消し、遺言その他の単独行為が含まれるものとする
としようじゃないかと。
うんうん、いい感じ。
おーさわ注:
結局、盛り込まれませんでした。
ザンネン。
それからね、意思能力。
【意思能力】
法律行為の当事者が、法律行為の時に、その法律行為をすることの意味を理解する能力を有していなかったときは、その法律行為は,無効とするものとする。
おぉー、ついに明文化。いままではね、当然の前提とされていたんだけどね。そうだよ、やっぱり明文化しておいてほしいところだよなー。それからね、債権。
おーさわ注:
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
となった。
【債権の請求力】
債権者は、債務者に対して、その債務の履行を請求することができるものとする。
あぁー、なんかとってもうれしい。
「債権者」と「債務者」の関係を、ついにここまで明確化してくれました。はじめて勉強する人だとさ、債権者・債務者っていわれてもピンと来なかったりするかもね。
おーさわ注:
結局、盛り込まれませんでした。
ザンネン。
とそんなこんなで、新しい民法、とってもいい感じになりそうです。
いまのところ(2013年11月時点)では、中間試案の公表という段階で、これから、改正要綱案の取りまとめに向けての審議となる模様。
がしかし、取りまとめの審議にどれくらいの時間をかけるのか、慎重な審議が必要というとこで、いまのところ未定とのこと。
ということで要綱案がいつまとまるのか、法務大臣への答申がいつになるのか、民法改正法案の国会提出がいつになるか、まったくもって未定。
まぁたしかに、民法ってやっぱり基本法だから、えーと、パソコンでいうとOSにあたるかな、それを大胆に変更しようっていうことだから、そりゃ関係各方面・関係各法令にも大きな影響があるだろうし。もしかしたら思いもよらぬバグがあるかもしれないし。
だから「慎重に、慎重に。
とにかく慎重に」ということらしいです。
そうそう、「新聞記事でお勉強」(おーさわ注:こういうコラムも多数掲載していた)でも触れてますけど、カンボジア民法。
2011年に施行。
この最新の民法は、じつはニッポンの若手の民法学者によって起草されたということだから、おぉー、これがこんどの新しい民法の姿なのかも。
いずれにせよ、楽しみですね。
新しい民法で、宅建受験講座を、オレはやりたいぜ\(^o^)/。
〜おしまい〜
以上、2013年ごろのコラムの復刻版でした。
当時、ワタクシは新しい民法にけっこう期待していたわけでした。
そして2020年に、ここでいうところの“新しい民法”になりました。
でもなー。
最後に記しましたが、〝カンボジア民法”のようにすっげーいいのができるのかなと思ったんですが。
結局なー。
前例踏襲というか、いままでの流れのなかでの、みたいな。
カンボジアに民法がなかったということもあったんでしょうけど、あんなにかっこいい民法を若手学者が作り上げたということですから、なんだよ、ほんとはみんなやればできるじゃんよー。
あぁいう“新鮮で画期的なもの”は従来の流れのなかでは出てこない。
なので思い切って、若い衆(粋な感じで「わけーし」と読んでね)には、どどーん一発景気よく、インパクトある“ダイナマイト”でやっちまってもらいたい。
ということで、粋でいなせな、かっこいい30代の諸君。
これからは君らに時代を委ねたい。
存分にやっちまってくれたまえ〜\(^o^)/
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