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読後メモ「誰も断らない」(篠原匡著) 

 日経BPの元記者が座間市の生活困窮者の支援窓口の先進的な取り組みを紹介した現場ルポ。意欲のある行政の担当者と地域のNPOの連携による地道な取り組みが、「誰も断らない」生活困窮者の支援につながっているとする。   取り上げられる内容はあくまで事例紹介の範疇だが、これから日本でも問題になっていくと思われる、生活困窮者に対する支援の今後のあるべき政策論までつながるような内容を期待していたため、やや肩透かしを受けた。現場ルポとしては、雑誌の特集記事のような構成と文体は生硬すぎる印象

    • 読後メモ「豪商の金融史」(高槻恭朗著) 

       大同生命を創業した、江戸時代の豪商・廣岡家の江戸から明治期までの隆盛と没落の変遷を、新たに発見された資料をもとに研究者が分かりやすくまとめた啓蒙書。  廣岡家の隆盛だけではなく、その背景となった大阪の先物市場の発達と大名貸事業、明治維新期の事業環境の変化と銀行業の没落の契機となった昭和恐慌まで記載されており、タイトル通り、廣岡家を通じて江戸から明治期までの日本の金融史の変遷の概要が理解できる内容となっている。  ポイントを絞った内容のため、個別のトピックスに関する記述はやや

      • 読後メモ「世界インフレの謎」渡辺努著

         世界の市場関係者が物価動向に注目した2022年を締めくくるのにふさわしい、新書。元日銀マンで物価研究の第一人者である著者が、2021年以降の世界的なインフレの原因とメカニズムを分かりやすく解説している。  アメリカのインフレは、需要よりも供給サイドの要因が強く(労働者の大量退職によるフィリップス曲線の上昇)、新型コロナを原因とする需要の変化が世界全体で同期的に発生したため、他の国で生産を代替することができなかった点に特徴があると指摘する。  日本の物価がなぜこれまで上がらな

        • 読後メモ『シリア 震える橋を渡って』 (ウェンディ・パールマン)

           米大学教授による近現代シリアのオーラルヒストリー。ロシアによるウクライナ侵攻がきっかけで中東情勢に関心が高まり、入手した。シリアに関する予備知識がなくても、年代別に構成された様々な立場の人々のインタビューから当時のシリアでどのような出来事が起こり、その出来事を人々がどのように感じていたを記述することで、民主化運動(=革命)の高まり前後にシリアで起こった出来事の歴史的な意味合いを浮かび上がらせる良本。  体制派=悪、民主派=正義という二項対立の構図による説明でなく、シリアの