へなちょこインラインスケーターはアスファルトを怖れた
既に廃棄してしまったが、使っていたのはいわゆるアグレッシブ・スタイルのインラインスケートだ。(ヘッダ画像のものではない。)
アグレッシブなインラインスケートは、エクササイズやレース用のものに比べ、ウィールが小さく硬く、とにかく頑丈で、レール(手すり)やカーブ(コンクリートの角)をグラインド(滑る)しやすい形状をしている。
インラインスケートが先だったか、スキーボードが先だったか、どっちを先に始めたのか、もはや思い出せない。同じくらいに始めたような、数年の開きがあるような、曖昧な記憶が曖昧だ。
インラインスケートは(関東では)一年中、自宅周辺でもできるが、スキーボードは雪の降る時期、スキー場でしかできない。
フィールドやシーズンこそ大きく異なるが、インラインスケートもスキーボードも、とにかく自由度の高そうな遊びであることに惹かれて始めたことだけはよく憶えている。
実際自由に遊ぶには、そこそこの身体能力と、それなりの練習と、何より恐怖に打ち勝つ強い心が必要である。
アスファルトが怖い
インラインスケートでかっこいいグラインドに憧れていたが、まともにできた試しはない。なぜならアスファルトが怖ろしいからだ。
スキーボードでコケるのは怖くない。
コケた先が雪だからだ。ガッチガッチのアイスバーンでもない限り、雪がクッションになってくれる。
もちろん痛いことは痛いのだが、雪山でコケても滅多なことでは外傷など負わない。肩関節の脱臼とか脛の骨折とか膝靱帯の断裂とかムチウチ症とか脳内出血とかの大怪我のリスクはあり、最悪死ぬまであるが、大抵はたんに痛いだけで、しばらく雪の上で呻きながら藻搔いていれば、いずれ痛みは雲散霧消し、特に支障なくスキーボードを再開できる。
一方、インラインスケートでコケるのは怖い。
コケた先がアスファルトだからだ。アスファルトは硬く、鋭い。
コケるとほぼ確実に怪我をする。たいてい血が出る。ごく簡単に血が出る。アスファルトに向かって勢いよくダイブした場合、擦りむくなんて生易しいものでは済まない。削れる、あるいは、裂ける。
たんに倒れただけでも、打撲ダメージは雪面の比ではなく、頭を打った場合の死ぬ確率は桁が違うことだろう。
アグレッシブなスタイルのインラインスケートの死傷リスクは、とても大きい。
恐怖を克服
怖さの原因は死傷リスク故だ。
死傷リスクはプロテクタで低減できる。
では、プロテクタを着ければ怖くなくなるか?
そうでもない。なかった。
コケたりレールから落ちたりしたときに備えて、体の全ての部位をプロテクタで防護するのは無理がある。
とすると、一般的なヘルメット・脊椎パッド・肘・膝・手首だけ着けることになろう。
しかし心許ない。それでは剥き出しの部位が……とグルグルしはじめ、いっこうに解決に向かわない。
せっかくアグレッシブなインラインスケートを履いているのに、ふつうに滑るだけという残念さ。
臆病者にはできない遊びなのだろうか……。
未来へ
アスファルトの恐怖は克服できないが、かといってインラインスケートが楽しくないわけではない。むしろ楽しい。
なのでやめたくはないのだ。
大して上手くならなかったし、相変わらすアスファルトは怖いままだが、またインラインスケートを始めたいと思う。
新しいスキーボードを買ったら、その後に。何年後になるかはわからないが。きっと。いつか。必ず。