好きブルワリー好きビール(6)ミッケラー
デンマークのミッケラー Mikkeller は、自前の醸造所を持たないファントム・ブルワリーだ。
そのビールの多くはベルギーのドゥ・プルーフ醸造所 De Proefbrouwerij で造られている。
非常に多産なブルワリーで、ひとつひとつの銘柄の醸造量は多くないが、既に世に送り出したビールは1000銘柄を超えるようだ。
他ブルワリーとのコラボレーションも活発で、エクスペリメントでエクストリームなビールを次々と産み出している。
私にとってミッケラーは、ブリュードッグと同じく、インペリアルスタウトとバレルエイジングのブルワリーである。
黑 Black
ミッケラーの真髄ともいうべきビール。
ローステッドモルトとシャンパン酵母で造った、すばらしいインペリアルスタウト。
ラベルには旧字体の漢字「黑」の一文字(初期のもの)。超カッコイイ。
ブランデーやラムレーズンめいた芳香、コーヒーやビターチョコレートのような香ばしい苦み、煮詰めたラムレーズンのような濃厚な甘み。
飲んだのは初期のABV17.5%のもの。
この「黑」をスコッチ、バーボン、テキーラ、カルヴァドス、コニャックなど、さまざまなハードリカーの樽でエイジングしたBAシリーズの他、バッファロートレースのバーボン樽でエイジングした「黑牛 Black Buffalo」、ハイアルコールを極めた「重黑 Heavy Black」(ABV31.1%)というスペシャル・エディションも存在した。(ノーマルの「黑」のほかは輸入されていない。)
さらに、蒸留してオロロソ・シェリー、バーボン、ラムなどの樽でフィニッシュしたスピリッツも造られた。
ブラックホール Black Hole
ミッケラーのもうひとつのインペリアルスタウト・シリーズ。
ABVは13%前後と「黑」に比べてやや控え目で、全体的に穏やかな印象。
こちらも、白ワイン、赤ワイン、ピーデッド・ウイスキー、テキーラ、ラム、コニャック、などさまざまな樽でエイジングされたものが存在する。
モンクス・エリクサー Monk's Elixir
ABV10.0%のベルジャン・クアッド。
ベルギーの伝統的な修道院ビールのスタイルで、ハイアルコールなダークエール。インペリアルスタウトとはまた趣向が異なる。
華やかなフルーティさと熟成感の入り交じる複雑な香り、スパイシーさを伴う濃い甘み、とろみのあるヘヴィボディ。
これを赤ワイン樽でフィニッシュしたもの、ブレタノマイセスを加えたもの、クランベリーとともにエイジングしたもの、などのスペシャル・エディションが存在する。
ソート・ガル Sort Gul
「黒」と「黄」を意味する名前がつけられたブラックIPA。
黒=ポーター/スタウトの特徴であるローストの香味と、黄=IPAのホッピーとモルティを併せ持つ。
スポンタン・シリーズ Spontan Series
ランビック・スタイルのサワー/ワイルドエールに、さまざまな果物やハーブを使ってバレルエイジングしたシリーズ。
ごく一部、フランボワーズとブルーベリー、クランベリーを飲んだと思う。
フランボワーズとクランベリーはけっこう酸っぱかったような、ブルーベリーはわりと甘かったような。
旨かったということは憶えているが、細部の記憶が曖昧だ。
19
シングルホップIPAが流行っていた頃(ミッケラーもやってた)、敢えて逆張りして19種ものホップを使ったIPA。
洪水めいた柑橘のアロマとフレーバ! 強烈なインパクトの柑橘感の後から、ジューシーな苦みと力強いモルティ。超旨い。
使われているホップは細かなデータが公開されている。
Simcoe 17,14%, Citra 15,72%, Amarillo 14,29%, Sorachi Ace 10,71%, Bravo 6,79%, Colombus 6,79%, Cluster 4,64%, Warrior 4,64%, Cascade 3,57%, Centennial 3,57%, Palisade 2,86%, Challenger 1,43%, Galena 1,43%, Magnum 1,43%, Mt Hood 1,43%, Tettnanger 1,43%, Nugget 0,71%, Super Galena 0,71%, Williamette 0,71%.
なお、シリーズ銘柄として、さらに1種を加えた 20 と、NEIPA スタイルの 19 Haze があるが、輸入されたかどうかはフォローしていない。
ドラフト・ベア Draft Bear
超ホッピーでハイアルコールなインペリアル・ピルスナー、ABV8.0%。
ピルスナーとは? ラガーとは? 既存のビアスタイルの定義を破壊する逸品。
冒頭にも書いたとおりミッケラーは非常に多産なファントム・ブルワリーで、定番ビールはもちろんあるものの、面白げなビールは見かけた都度飲んでおかないと二度と出会えない可能性があるので注意だ。
ミッケラーの看板とも言えるビアギーク・シリーズ Beer Geek Series は、実は飲んだことがないのだった。
ミッケラー見かけたら、後悔しないように飲んでおこう。