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#21 インドの新興配車サービス「BluSmart」はドライバーの体験も重視

以前、高品質を売りにしたインドの新興配車サービス「BluSmart」について筆者の体験も踏まえた上で記事を書いた。


今回、書面での回答ではあるが、BluSmartの共同創業者へのインタビューをさせていただくことができた。
インタビュー内容を踏まえてビジネス視点からの発見点を書いていきたい。

【弊社紹介】
弊社(株式会社hoppin)はUXコンサルティング事業、および中国・インドのUXリサーチ事業を行う企業である。参考:会社サイト
後者について、具体的には、中国・インドの優れたUXを提供するサービスを、現地ユーザやサービス提供企業の役職者へのインタビュー調査を通して分析し、日本企業への示唆を出している。
また筆者の滝沢は上海に2回居住したことがあり、2023年現在はインドのバンガロールに居住している。参考:筆者執筆のYahoo!ニュース




高品質なサービスを提供するBluSmart


BluSmartは2019年1月に創業した、配車サービスを行うスタートアップである。最初はデリーエリアでサービスを開始し、2022年9月26日からはバンガロールの一部エリアでサービスを提供している。

インドの配車サービス市場では、グローバルサービスの「Uber」とインド国産サービスの「Ola Cabs」が二大巨頭だが、最近は第三極として注目されている。

BluSmartの車両(BluSmart提供写真)


大きく以下の4つがセールスポイントのサービスだ。

  1. ドライバーからのキャンセルがゼロ

  2. 混雑時の割増料金(Surge Price)なし

  3. 清潔な車内、丁寧なサービス

  4. 排気ガスゼロで、汚染物質のないクリーンな環境に貢献

筆者もこのサービスの大ファンであり、頻繁に利用している。具体的な体験は、こちらの記事を参考にされたい。




ドライバーの体験の向上に配慮したビジネスモデル・運営

今回、書面でのインタビューに回答していただいたのは、BluSmartの共同創業者かつCBOのTushar Garg氏である。

Tushar Garg氏(BluSmart提供写真)

筆者からの質問への回答の中で繰り返し触れられていたのが、ドライバーの待遇・労働環境への配慮に関する内容である。


こちらからのドライバーに関する質問以外でも、ドライバーへの配慮が様々に垣間見えたことが印象的だった。
以下に整理して記載する。


ドライバーの十分な収入確保のための、車の個人所有が不要なモデルに

BluSmartの大きな特徴の一つが「ドライバーの収益向上」のために、車を個人所有させていないという点だ。
共同創業者かつCBO(Chief Business Officer)のTushar Garg氏は以下のように語る。

" 従来の配車サービスのドライバーは、資産(車)所有することによって、経済的負担や燃料費の高騰による収益の減少という問題に直面しています。
一方、このアセット・フリー・ドライビング・モデル(ドライバーの自己所有車に頼らないモデル)を採用することで、BluSmartのドライバーは、資産(車)所有のストレスも、燃料費のストレスも、労働時間の超過もなく、運転というコア・スキルに専念することができます。当社のドライバー中心のアプローチは、BluSmartのサービスを前進させることでより高い収入を得る機会を提供し、何千人ものドライバー・パートナーを幸せにしてきました。これが、私たちがこのモデルを選んだ根本的な理由です。"

Tushar Garg氏は「ドライバーのために」車の個人所有が不要なモデルを選択したという。

もちろんこの回答が100%事実かはわからない(ある程度建前もあるかもしれない)。ただ実際のところ、BluSmartの運転手の平均給与は市場平均よりも高いという。(参考



休憩の義務とファシリティの提供

また、休憩等のルールが定められた、ホワイトな労働環境が用意されていることも述べられていた。
共同創業者かつCBOのTushar Garg氏は以下のように語る。

" BluSmartのドライバーパートナーには、シフトとシフトの間に1.5~2時間の休憩時間が義務付けられています。この時間は、休憩、昼食、リラックス、お手洗い(男女別のお手洗い)などに使用され、体力を消耗することなく、身体的・精神的な健康を損なうことなく安全に運転することができます。"

これはUberやOla Cabsのような「個人事業主」という形ではなく、ドライバーがBluSmartに雇用されているというモデルだからこそ実現できる労働環境だと言える。

ユーザからしても、「休憩が十分に取られている」ということは安全面への安心感がある。

BluSmartの車両の充電・駐車場所(BluSmart提供写真)


筆者の個人的な経験だが、UberやOla Cabsにはたまに眠そうなドライバーさんもいるため、余計にそのように感じる。(もちろん「眠いドライバー」へのリスクはBluSmartならゼロというわけではないが)

※余談だが、Ola Cabsを利用した時、ライド確定後にドライバーから「眠いから行かない」とチャットで言われキャンセル依頼されたことがある。正直に眠いことを教えていただけただけ良いのだが…。

Ola Cabsのドライバーと筆者とのチャット画面



性別に関係なく公平に収入を得る機会の提供

BluSmartは女性ドライバーを積極的に採用しており、女性比率を全ドライバーの50%にすることを目指しているという(参考)。
BluSmartのYouTubeでも女性ドライバーが紹介されている。

確かに、インドの二大巨頭であるUberやOla Cabsには女性ドライバーはかなり少ないと思われる。筆者は一年以上インドで暮らし、毎日のようにUberかOla Cabsを利用しているが、今までに女性ドライバーに出会ったことはない。

配車サービスに限らず、インドにおいては、女性の活躍の場がまだまだ少ない。このような取り組みは先進的で素晴らしいと感じる。



良い運転をしたらインセンティブ付与

詳しくは回答が得られなかったが、運転データを活用し、良い運転をすることでインセンティブがもらえるしくみがあることが示唆された。
共同創業者かつCBOのTushar Garg氏はこう語る。

" 安全性はBluSmartの最優先事項であり、ドライバー・パートナーは、車両の安全性の観点からだけでなく、運転行為や運転中の怒り(road rage)に関連するアクシデントに対応するトレーニングなど、あらゆる安全面についてのトレーニングを定期的な受けています。
彼らはまた、安全なドライバーであるよう奨励され、総合的なパフォーマンスに基づいて、その貢献が認められます。"


運転データを元にしたインセンティブ付与は、中国の配車サービス「DiDi」ではかなり工夫を凝らし行われていることが有名である。

現在の BluSmartにおいて、どの程度厳密な計測やインセンティブ付与が行われているかは不明だが、運転が荒い人が多いインドにおいて、良い運転へのインセンティブがあることはユーザとしてはとてもありがたい。
人の行動(この場合は運転)を良い方向へと向かわせる、良いテクノロジーの使い方だと言えるだろう。




BluSmartの次の一手に注目


ドライバーの体験に配慮することは、安全な運転の提供や、良いおもてなしなどのサービスの高品質化にもつながり得ると言える。
ユーザとドライバー双方への良い体験を提供する大きな鍵となっているのが、BluSmart側が車を保有するモデルだろう。

現在はまだニッチサービスだが、拡大に向けて今後どのように変化していくのだろうか。BluSmartの次の一手に注目だ。



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