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#22 飛行機で夕食をデリバリー!?インドの「Zomato Intercity Legends」は何がすごいのか?

インドに住んでいる筆者は、時たまフードデリバリーサービスを使う。インドでデリバリーといえば、Swiggy(スイギー)とZomato(ゾマト)が二大巨頭だ。
インドに住み始めた時に最初に使ったのがSwiggyだったため、筆者はSwiggyばかりを使っている。

しかしある日ふとZomatoを見たら、「Zomato Intercity Legends」という「他都市のレストランの食事を飛行機でデリバリーする」という面白いサービスを見つけた。

「Legends」と書いてあるメニューがトップページにある


本記事では、このユニークなサービスを筆者が実際に使ってみた体験と、利用者へのインタビューから見えてきた利用シーンを解説する。

【弊社紹介】
弊社(株式会社hoppin)はUXコンサルティング事業、および中国・インドのUXリサーチ事業を行う企業である。参考:会社サイト
後者について、具体的には、中国・インドの優れたUXを提供するサービスを、現地ユーザやサービス提供企業の役職者へのインタビュー調査を通して分析し、日本企業への示唆を出している。
また筆者の滝沢は上海に2回居住したことがあり、2023年現在はインドのバンガロールに居住している。参考:筆者執筆のYahoo!ニュース


「Zomato Intercity Legends」とは


このサービスは、Zomatoの「Zomato Gold」という月額制の会員サービスに加入していると利用することができる。

Zomato Goldに加入していると、他にも配送料無料、時間通り配送されなかった場合の補償、各種割引の提供など、様々な特典を得られる。

出典:Zomato blog

2022年の8月にまずグルガオン(デリーに接する都市)と南デリーの一部で試験的に導入され(参考)、バンガロールでは2022年の9月から使えるようになったという(参考)。
それ以外の都市への拡張については、リリース等が出ていないため詳しいことは不明だが、筆者が調べた限りでは少なくともムンバイでも使えるようだ。


どのように他の都市から食べ物が運ばれるのだろうか。

出典:Business TodayのYouTubeチャンネル

注文を受けてデリバリーパートナーが集荷した食べ物は、まず現地の冷却倉庫に入る。その後に冷たいまま飛行機で配送され、配送先の都市の倉庫を経て届けられるというしくみだ。


価格は、現地のレストランで食べる時と比べると2倍くらいになる、と現地のニュースメディアでは報じられていた。

出典:Business TodayのYouTubeチャンネル




サービスを利用してみた&食べてみた


百聞は一見に如かず。早速自分で注文してみることにした。
「Zomato Intercity Legends」のページに入ると、各地域ごとに提携しているレストランが表示される。


筆者が2022年で10月に確認した時点では、バンガロールから注文できるものだと合計7都市、各都市3-15軒前後のレストランのメニューが掲載されていた。

私はコルカタの揚げ場パン+ジャガイモカレーのセットを注文することにした。


商品自体の料金は440ルピー(約790円)で配送料が100ルピー(約180円)その他税金などがかかるが、初回割引もあり結局448ルピー(約804円)になった。飛行機で運ばれることを考えると、とても安く感じる。

10/1の13時頃に注文し、到着時刻は10/2の16-19時と表示されていた(自分で設定することも可能)。実際の到着時刻は10/2の16時頃だった。

袋がかわいい

容器は密封されている。少し冷たいので冷蔵されていたようだ。

爪のような部分があり、それを外すと蓋を開けることができる
上が揚げパンで、下がジャガイモカレー

少しずつお皿にとって電子レンジをして食べたが美味しい。好みの味であった。(夕ごはんにて、この写真のお皿に載っているものセットをあと3回くらいおかわりした。)

映えないが、美味しい。




別タイミングではハイデラバードのビリヤニを注文してみた。「25分で届く」となっている。すでに受注を見込んでバンガロールにまで配達してあるのだろう。


届いた。今回はなぜか直接容器手渡しである。できたら袋が欲しいが、インドではたまにあることなので気にしてはいけない。
容器は外側は汚い…でも密封されているので気にしないこととする。


味は美味しい!総じてこのサービスには大満足である。

お米しかないように見えるが中にしっかりチキンが入っている。




ユーザは「本物」が食べたくて利用している


実際に利用しているユーザに聞いてみると、その地方の「本物の料理」を求めて注文しているようだった。
タイミングとしては、パーティーなどの特別な場合だけではなく、日常生活の中で「いつもと違うものが食べたくなった時」にも利用されていた。


おやつや夜食などの三食以外の食事を中心に毎日のようにZomatoを使っているという、デリーに住むAさん(28歳・男性)は以下のように語る。

Zomato Intercity Legendsは、興味を惹かれて5-6回くらい使ってみました。特にパーティーなどの特別な時ではなく、普段の食事や夜食として利用しています。
ジャイプール、コルカタ、アグラなど色々なところの食べ物を注文しました。
デリーでも色々な土地の料理を出すレストランがありますが、やはりその土地から取り寄せた食べ物の方が本物(Authentic)でおいしいと感じます。
特にアグラのスイーツは、アグラから取り寄せてこそ、と思っています。


週に1回ほどZomatoを利用している、デリーに住むBさん(33歳・女性)も同様だ。

新しいこのサービスに興味を持って、夫と一緒にバンガロールからビリヤニを注文しました。
(中略)
デリーのビリヤニとバンガロールのビリヤニは違います。もちろん「バンガロール風」のビリヤニを提供するお店はデリーにもありますが、スパイスの量など、違いは大きいと思っています。
Zomato Intercity Legendsを使えば、「本物(Authentic)」を食べられるのが良い点です。


ムンバイに住むCさん(33歳・男性)はジャイプールからカチョリ(インドの揚げパン)を頼んだことがあるという。
「ジャイプール出身で今はムンバイに住んでいるシェフもいるのではないか?だから同じようなカチョリはきっとムンバイにもあるのではないか?」と聞いたところ彼はこう答えた。

もちろんその可能性(ジャイプール出身のシェフが作ったカチョリがムンバイでも食べられる可能性)はあると思います。でも私はそのようなお店を知らないですし、仮にそう名乗るシェフがいたとして、そのシェフがジャイプール出身だという証明もできません。
ジャイプールから買った方が確実に「本物」が食べられると思うのです。


筆者はかつて東京に住んでいた。東京(の特に中心部)にはありがたいことに多くのレストランがあるため、望めばどんな地方・ジャンルのものでも食べられるような錯覚に陥る。
そのため、やや「その土地の本物のものが食べたい」という発言は、当初ピンときづらかった。

ただ東京であっても、例えば「山梨県のほうとう」「愛知県の鬼まんじゅう」のような郷土料理は(なくはないが)やや見つけるのが難しいようにも思う。
ドンピシャな例えを見つけることは難しいが(また人によってピンとくる例えが異なりそうだが)、「その土地の本物を食べたい」というのはそのような感覚に近いように思われる。




データ活用で進む需給予測?30分程度で配達される「Express Delivery」開始


元々1-2日程度配達までに時間がかかっていたZomato Intercity Legendsだが、執筆時点の2023年11月では30分程度で商品が届く「Express Delivery」サービスも提供している。
※ここ最近はこのExpress Deliveryしか表示されないので、この方法に一本化した可能性もある。

注文が入る前に各都市の拠点まで料理を運んできておき、注文が入り次第その拠点から届けるというしくみのようだ。


30分程度で届くのであれば、通常のデリバリーサービスと同じ感覚で注文をすることができる。非常に利便性が高く、筆者も数回利用した。

ただ、ユーザ側の利便性は高まる一方で、Zomato側としては多くの廃棄の発生により利益率が下がるリスクもある。

それでもこのようなサービスを実施できるということは、Zomato側にある程度の販売データが貯まり、需給の予測ができるようになってきたからだと考えられる。

調理済み食品販売およびそのデリバリは、一般に商品単価が低いこともあり、利ざやを大きくしづらいビジネスだ。さらに、消費期限が短いことから、遠方からのデリバリとなると尚更難しい点は多いだろう。
そのような分野で、データ活用による需給予測を精度高く行うことで利益を出せているのだとしたら素晴らしいと感じる。(公開データはないため実態は不明)

今のところ、1年以上サービスは続いているが、今後も継続・拡大していくことはできるのだろうか。今後もアップデートがあれば記事にしたい。




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たきさん(滝沢頼子)@株式会社hoppin CEO
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